トップへ

「ゲーム定額サービス」戦国時代の到来か? Amazonがゲームストリーミングサービス構築中

2019年01月14日 12:42  リアルサウンド

リアルサウンド

 無料もしくは有料でコンテンツを無制限で楽しめるストリーミングサービスは、音楽から始まり動画にも波及した。そして、今後はゲームもストリーミングの対象になると見られている。こうした成長が見込まれるゲームストリーミングサービスに、あの大手ネット通販企業が参入するようだ。


(参考:2019年も豊作間違いなし! 『キングダム ハーツIII』『どうぶつの森』など期待のゲーム6選


・2020年の提供を計画


 ビジネスインサイダーは11日、Amazonがゲームストリーミングサービスを構築中であることを報じた。サービス構築の進捗はまだ初期段階のようで、最短で2020年からの提供開始となると予想されている。


 テック系メディアThe Vergeも10日、同様の内容の記事を公開している。この記事では、Amazonがゲームストリーミングサービスを構築中である証拠として、同社が出している求人を伝えている。その求人では「クラウドゲーム開発のエンジニア」を求めていると書かれていることから、PCやスマホにダウンロードしてプレイするゲームではなく、クラウドベースで動作するものを開発しようとしていることが分かる。


 ゲームストリーミングサービスに参入しようとしているのは、Amazonだけではない。Googleは「Project Stream」と名付けたゲームストリーミングサービスを試験運用中であり、その試験には人気作『アサシン クリード オデッセイ』が使われている。また、MicrosoftもXBox Oneのゲームをプレイできる「Project xCloud」を構築中であり、今年にはパブリックトライアルを開始する予定だ。


・布石を打ってきたAmazon


 一般にはゲーム業界の主要企業とは見られていないAmazonは、実のところ、かなり以前からゲーム事業に投資してきた。海外では有名なゲーム動画サイトTwitchは、2014年にAmazonに買収されている。同じく2014年にはゲーム開発部門「アマゾンゲームスタジオ」を設立し、同年にはクラウドゲーム「The Unmaking 」のトレーラー動画を公開している(下の動画参照)。同スタジオから正式リリースされたゲームはまだないものも、現在でも活動を続けている。


 2017年には、クラウドゲーム開発を専門にしていたイギリスのゲームスタジオGameSparksを買収した。この買収によって、オンラインゲーム用のサーバサービスを構築した。このサービスは、DeNAやGREEに採用されている。


 以上のようなゲーム事業への投資を行った結果、Amazonはゲームストリーミングサービスの環境およびコンテンツを開発・運用するポテンシャルを有するに至っているのだ。


・大きな消費が見込まれるゲームコンテンツ


 ところで、すでにストリーミングサービスが始まっている音楽や動画に比べて、ゲームコンテンツはどの程度の市場的ポテンシャルを秘めているのだろうか。この疑問に答えるには、株式会社博報堂DYメディアパートナーズと博報堂が発表した「コンテンツファン消費行動調査2018」が役に立つ。


 同調査は、2018年において影響力のあったコンテンツを「リーチ力」と「支出喚起力」という2つの観点からランキングしている。リーチ力とはコンテンツの知名度を意味しており、CMにコンテンツを利用した時の影響力を推測する指標となる。支出喚起力とはコアファンがコンテンツ消費に費やす支出をあらわす指標であり、この数値が高いコンテンツは大きな市場を形成することが予想される。


 同調査によると、リーチ力では1位の映画『君の名は。』をはじめとしてアニメや音楽のコンテンツが並び、ゲーム関連では7位にポケットモンスターがランクインする。対して、支出喚起力では1位こそアイドルグループの嵐であるものも、2位のアイドルマスターシリーズのほか刀剣乱舞やドラクエといったゲームコンテンツが上位に並ぶ。こうした調査結果から、ゲームコンテンツは音楽やマンガと比べて知名度は劣るが市場形成力では他のカテゴリーのコンテンツに劣らない、ということがわかる。


 以上のように音楽や動画に劣らない市場を形成すると予想されるゲームストリーミングサービスをめぐっては、今後さらに有名企業が参入に名乗りをあげて多数のサービスが覇を競う「ゲーム定額サービス」戦国時代が到来するのではないだろうか。(吉本幸記)