年金の支給開始年齢を現在の65歳から70歳に引き上げる年金制度改革も着々と進み、まさに人生100年時代に突入しつつある昨今。社会人の「学び直し」にも注目が集まっている。
しかし、第二、第三の仕事人生といえば聞こえはいいが、将来の不安が高まっているのも実状だ。特に非正規で働いている期間が長く、退職金などもない現役フリーターやフリーランスの不安は計り知れない。
今回は過去の業界や経験を一切問わず、30~40代でも「稼ぎ直し」しやすい仕事を、業界歴10年の人材コンサルタント松村太一氏(仮名・33歳)に聞いた。
歩合制の営業は学歴も経験も関係なし! タフな精神があればOK
「一般的な話ですが、正社員にこだわる必要はそこまでありません。稼ぐためにはとにかく、手に職をつけることが重要です。昨今は能力主義を謳う職場も多く、『今からでも頑張って稼ぎたい!』という人におすすめの仕事は色々あります」
例えばバンドマンやお笑い芸人、役者など、夢追い人だった人がゼロから新しいキャリアをスタートさせる時、実際にどのような仕事でつくことが多いのか。
「鉄板は営業ですね。一口に営業と言っても色んな営業がありますが、いわゆる新規開拓の"ゴリゴリ営業"は、学歴関係なく成功を手にすることができます。わかりやすい例が保険の営業です。知人・友人が多い人なら1年で年収1000万ということも珍しくありません。また、ウォーターサーバーやUSEN・ケーブルテレビの加入促進の個宅訪問系も、歩合制がほとんどなので学歴や経験は一切関係ありません。知人がいなくても稼げます。もちろん、精神的なタフさは求められますが」
他にも電気屋のキャンペーン系、リゾートホテル会員権の販売員、太陽光発電のショッピングモールでのイベント販売、クレジットカードの勧誘なども稼げるという。
ノルマや精神的なプレッシャーを受けやすい反面、インセンティブ報酬を得やすいこうした仕事は、新しいキャリアを考える上で有力な選択肢のひとつとなるようだ。
「インバウンドの問い合わせ対応ではなく、保険や電話回線の勧誘など、こちらから営業コールをかけるタイプのコールセンターは歩合がついて稼ぎやすい。加えて、マッタリと働きたくなったら売り上げや勤務を管理するスーパーバイザーという道もあります。こちらは主婦や学生のアルバイトの愚痴を適当に聞くスキルが必要ですね」
次に、営業系・販売系よりは精神的なプレッシャーやストレスに晒されず、人脈や営業力がなくても稼ぎやすい仕事として、松村氏が挙げたのがITエンジニアだ。
「『実務未経験者歓迎!』というふうに、プログラミングなどをちょっとかじっておくだけで応募できる求人は意外とあります。まずはハローワークの職業訓練やWEB上のeラーニングといったサービスで基礎を学びましょう。卒業証書や学んだ内容を提示するだけで、採用に至ることも十分期待できます。特に日々勉強することが苦でない、オタク気質の方にはおすすめです」
しかも、エンジニアの仕事は業務委託などで副業をしながら年収アップさせていくことが可能なのも魅力。最新の業界のシーンを知っているかが重要になるという意味では、過去の職歴などで余計なハンデを背負わずにすむ職種と言えそうだ。
東京五輪に向けて需要が高まっている警備員業界
続いて、最低限生活していくだけ稼げればいいと考える人でも、正社員として安定的に働き続けられるような仕事を聞いた。
「真っ先に思い浮かぶのは、2020年東京オリンピックなどに向けて需要の高まっている警備業ですね。正社員としての福利厚生や労働環境が整っているところも多いことに加え、特別なスキルも必要ありません。さらに人員がすぐ辞めていきやすい業界なので、じっと我慢して警備の簡単な資格さえ取れば、管理職として人員管理業務にジョブチェンジすることも比較的しやすいです」
警備業務は警備業法によっていくつかの種類に分けられ、イベントなどでの雑踏警備など屋外の仕事はそれなりに体力を要するだろうが、施設警備などより身体的な負担が少ない警備業務もある。
また、社員の待遇やコンプライアンス意識がしっかりしている傾向が強い業界がもうひとつある。
「タクシー運転手も正社員待遇が良く、ミドル新人でも居心地のいい職場も多いようです。地理試験は気休めなので道を覚えて、独特の勤務リズムに慣れるまでは大変でしょうが、客とのコミュニケーションは最低限で済み、長く続けていれば個人タクシーという道も。個人タクシー事業主は75歳まで現役で働くことが可能です」
どの業界の特徴もあくまで相対的な傾向である点は留意してもらう必要はあるが、健康な心身とそれなりの意欲があれば、何歳からでも稼ぎ直しはできると信じたい。