2019年01月14日 08:52 弁護士ドットコム
著作権の保護期間延長について考えるシンポジウム「著作権延長後の世界で、我々は何をすべきか」が1月10日、東京都内で開かれた。(青空文庫、デジタル・アーカイブ学会、インターネットユーザー協会、thinkCなどの共催)。シンポのテーマの1つとなったのは、著作権者に連絡がとれなくなった作品「オーファンワークス」(孤児著作物)だ。
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TPP11の発効に合わせて、2018年12月30日、著作権の保護期間が著作者の死後50年から70年に延長された。これによって、権利処理がさらに複雑になり、オーファンワークスが増えて、古い作品が利用されなくなるなど、新たなビジネスや二次創作への弊害が懸念されている。
シンポでは、「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」(thinkC)の世話人をつとめる福井健策弁護士が、作品を死蔵から救うためにできることとして、(1)アーカイブの振興、絶版など市場で流通していない作品の活用策、(2)さらなるオーファン作品対策、・戦時加算の撤廃努力、(3)パブリックライセンス「権利表明」の普及――をあげた。
慶應義塾大学の田中辰雄教授(経済学)はシンポで、漫画家の赤松健さんが提案・実証実験している、絶版本を流通させるプロジェクトを評価したうえで、「著作権のあり方について、柔軟に、複合的に考えて、一番良いアイデアを出すという発想を持つ必要がある」と述べた。
田中教授はさらに「オーファンワークスを活かす(流通させる)ということが、国民全体にとってハッピーになる、文化政策にとっていいんだということを議論として盛り上げていく必要がある」と主張をつづけた。
田中教授によると、議論を盛り上げるためには、国民的な理解が必要だが、一般の人たちの間では、オーファンワークスの存在が知られていない。しかもインターネット上では、著作権のあり方について、厳しい見解を持つ人たちによって、どうあるべきかという建設的な議論が封殺された状況があるという。
田中教授は「議論を盛り上げていくうえで一番問題となるのは、『現行の著作権が絶対だ』と考える人たちだ。つまり、『著作権厨』だ。彼らをなんとかしたい。その方法は、『著作権厨』という言葉を広めることだ。それによって、(著作権厨の評価が下がり)影響力も下がる」と話していた。
(弁護士ドットコムニュース)