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キーパーソンはクラスの中心格である片寄涼太? 『3年A組』ドラマの核が徐々に形成

2019年01月14日 06:02  リアルサウンド

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 “なぜ景山澪奈は自殺したのか?”その問いへの答えが出されないまま幕を閉じた1日目から一夜明け、2日目の朝に柊一颯(菅田将暉)から3年A組の生徒たちに告げられたのは、澪奈(上白石萌歌)から直接聞いたという自殺の理由。それは、彼女が水泳の全国大会でドーピングをしたという疑惑がSNSに投稿され、フェイク映像まで流されたことだというのだ。


参考:菅田将暉の狂気が暴走 『3年A組』は“10代の抱える闇”にメスを入れる


 その投稿をした人物がクラスの中にいて、その人物が自ら名乗り出さえすれば「今日は誰も死なない」と語る柊。1月13日放送の日本テレビ系列日曜ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』第2話で最も興味深い点は、その課題を仕向けられた3年A組の生徒たちのその後の行動にある。大方このような“犯人探し”、ましてやそれによって自身が生死の狭間におかれるという状況下においては、大人数のコミュニティなら尚更に、互いに疑心暗鬼に陥り調和が崩壊する様が描写されがちだ。


 しかしながら、彼らの行動はタイムリミット直前までそのような方向に動くことはなく、あくまでも、いかにして共通の敵である柊との形勢を逆転させるかに撤せられていく。柊の“基地”である美術準備室へ様子を伺いにいく生徒。その中の状況から、前夜に教室でナイフを突き立てられた中尾(三船海斗)が生きていると推論を立て、柊に殺意はないと見抜いて攻撃を仕掛ける生徒。崩壊とは真逆の、結託が形成されていくのだ。


 その根底にあるのはクラスの中心格である甲斐(片寄涼太)の持つ牽引力なのかとも考えられる。現にタイムリミットギリギリで、おそらく生命の危難を感じて、周囲に疑いの目をようやく向け始めるのは甲斐だけであり、それを発端にして水越(福原遥)が茅野(永野芽郁)に(別の理由が介在した一種のとばっちりではあるが)疑念を向け、教室の空気が切迫していく。


 もうひとつ考えられるとすれば、過激な投稿をしたことが明るみに出る他者の不利益を取っても自己の利益を優先するということよりも、それによって自身に何らかの不利益が及ぶことを全員が危惧しているようにも思える。軟禁状態という特殊な状況下にあっても、クラスという狭いようで彼らに取ってあまりにも大きなコミュニティでの立ち位置に綻びが生じることを恐れている。“個”が尊重されすぎて、かえって埋没してしまったかのような、典型的な現代病的な空間といってもいいのではないだろうか。


 それはそうと、先週の第1話の際で危惧した展開のパターン化に関しては“生徒の誰かが死ぬ”という結果こそ免れたものの、柊があたかも真っ当な教師という立場で生徒を教え諭す場面をエピソードの頂点とした流れは第2話でも見受けられた。それでも、生徒キャラクターに動きが出てきたことでドラマの核が徐々に形成されつつある。一点だけ触れておかねばならないことがあるとするならば、終盤で柊が郡司(椎名桔平)たち警察へ依頼したおにぎりの数は30個。澪奈がいない3年A組は29名が在籍しており、柊を含めて30人。つまり甲斐たちの見立て通り、中尾が生きているという可能性が高いということだろう。(久保田和馬)