ブラック企業は人使いが荒い。その証拠が残業に対する意識の薄さだ。「過労死ライン」である残業時間、月80時間を上回って働かせるケースは多い。あろうことか、経営層が長時間の残業を助長することもある。
キャリコネニュースのアンケートには、80時間を超える残業で心身の限界を感じた人からの悲痛な叫びが寄せられている。
居酒屋のキッチン担当として働く20代女性は、月間の残業時間が100時間を超えるシフトを組まれている。閉店時間が午前0時のため月の半分は終電に間に合わず、「終電に乗れない場合は自腹でタクシーか始発」という生活だった。疲労は限界に達し、
「深夜帰宅時、身体が痺れて動かなくなり救急車で運ばれた」
という。
長距離ドライバー「月平均残業時間は330時間ってところでしょうか。笑うしかないです」
長距離ドライバーをしていた40代男性は、「平均すると1日20時間労働してましたね(休憩なしで)」と、当時の激務ぶりを振り返る。長時間労働になった大きな理由は、移動に時間がかかる下道を走っていたこと。高速道路の利用料金が、会社から支給されなかったのだ。
もし高速を利用してもドライバーの勝手な判断だと見なされるのか、料金は給料から天引きされる。手取り額が6万円未満だったこともあるという。月間の残業時間について男性は、「月平均残業時間は330時間ってところでしょうか。笑うしかないです」と自嘲気味。これだと、1日のほとんどをトラックの中で過ごしていることになる。この環境では満足に休めず、安全面でも心配が残る。
今年4月からは順次、時間外労働に関する罰則付き残業上限規制が始まる。しかし、運輸業は5年間の猶予が認められているため、規制が適用されるのは2024年からの予定だ。状況の改善には時間がかかりそうだ。
社長が安く仕事を受注、現場にしわ寄せ「残業100時間超えを半年継続する人もいた」
現場の状況を理解しない経営層も問題だ。技術職に従事する50代男性の勤務先では、新しい社長の方針で安い仕事を大量受注したため、現場が疲弊する事態に陥った。
「結果、人数は増えないのに仕事だけが増えて現場はやっつけ仕事になり客先からの信用ダウン。各事業所レベルでは、この仕事を断ったら、実際は◯%の経常利益が出るとのデータは取れてるけど社長は無視するので現状変わらず。実際100時間超えを半年以上なんて人もちらほら見かけます」
同じく技術職として働く40代男性は、上層部が2割引きの価格で仕事を受注し、そのしわ寄せに苦しんでいる。ひどい時には、午前8時50分から午後11時30分頃まで勤務、食事は毎日、深夜も開いている牛丼チェーン店ですませた。
「休日出勤せずに済んで、土日両方休めたが、土日どちらか寝続けないと体が持たなかった。不思議と精神的には問題無かった。直の上司と別チームの上司の計二人が鬱で離脱した」
政府は働き方改革を進め、残業時間の抑制に力をいれているが、現実はここに書いた通りだ。健康に働ける環境整備が急務になっている。