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電車内で刺殺事件 14歳息子の目の前で父親死亡(英)

2019年01月10日 10:22  Techinsight Japan

Techinsight Japan

電車内で刺され死亡した男性(画像は『BBC News 2019年1月5日付「Surrey train stabbing: Lee Pomeroy ‘was honourable man’」(FAMILY HANDOUT)』のスクリーンショット)
ナイフ犯罪が多発するイギリスで、52歳の誕生日目前だった男性が些細な口論がもとで刺殺される悲劇が起こった。電車内で父親が刺されるまで時間にしてわずか3~4分とされているが、いったい何が起こったのか。容疑者は逮捕されたが、現在も警察による捜査が続けられている。『BBC News』『The Sun』などが伝えた。

サリー州ギルフォードに住むリー・ポメロイさん(51歳)は1月4日、1人息子(14歳)と一緒にロンドン市内に日帰りで出かけようと、午後12時58分に最寄りのロンドン・ロード駅からロンドン・ウォータールー駅行きのサウスウェスト・トレインズに乗り込んだ。

この時、ダレン・シェイン・ペンシル(35歳)と偶然にもぶつかってしまったようだ。目撃者によると、リーさんとダレンは口論になり、2人は別の車両に移動した。その間わずか3~4分だったという。しかし口論はエスカレート。ダレンは持っていたナイフでリーさんの喉や腹部を全9か所刺し、午後13時7分にクランドン駅に到着すると、ダレンは電車を降りて逃走した。

刺されたリーさんを見た乗客らは騒然となり、事件を知った鉄道職員は次の停車駅だったホースレイ駅で電車を停めた。ホースレイ駅のホームに運び込まれた血まみれのリーさんのそばには、呆然とした様子で警察の到着を待っている息子の姿があったという。やがて鉄道警察や救急隊員らが到着しリーさんにCPR(心肺蘇生法)を試みたが、死亡が確認された。

サリー州警察ショーン・オーカラハン副本部長は、メディアの取材で「行き過ぎた暴力を正当化する理由などどこにもない」とナイフ犯罪を糾弾。この殺人事件に40人以上の鉄道警察職員やサリー州警察が合同で捜査を開始した。そして複数の目撃者や監視カメラの映像によりダレンの居場所が特定され、翌5日の午前6時頃にファーンハムのアパートにいたダレンを殺人と凶器所持の容疑で逮捕、また逃走を車で助けたダレンのパートナーで1児の母チェルシー・ミッチェル(27歳)も幇助行為容疑で逮捕した。

事件の翌5日は、リーさんの52歳の誕生日だった。リーさんの身内はメディアでこのように声明文を発表した。

「リーは家族に尽くす献身的な父親でした。尊敬すべき人物で、いつも困っている人を助ける心を持っていました。今日は52歳の誕生日を迎えるはずでしたが、プレゼントを開けることもなく逝ってしまいました。彼は歴史や芸術にも詳しく、音楽を愛し、正直で、数学で学士を取得していたほど賢明な人でした。」

IT企業を経営し自らもITコンサルタントだったリーさんはロシア人のスヴェトラナさん(50歳)と2001年に結婚し、家族で2012年からサリー州ギルフォードで生活していた。ロシアからイギリスに移住したスヴェトラナさんは、2006年にソーシャルメディアで友人らに「イギリスの人は笑顔で、自然を愛し、丁重さがある。女性を支援する法律もあるし、文化的で品がある国だ」と英国での生活に満足した様子を綴っていた。大切な夫を失った妻のショックは大きいだろうが、何より父親の死を目の前で見た息子は生涯消えることのない大きな傷を抱えてしまったといっても過言ではない。現在は特殊訓練された警察が遺族の対応にあたっているそうだ。

7日の午前にステーンズ治安裁判所に出廷したダレンは、法廷で「有罪が証明されるまで私は無実だ」などと叫んだという。また同裁判所に出廷したチェルシーも、無罪を申し立てた。今後2人は、刑事法院での裁判に出廷することになっている。

些細な口論がナイフ犯罪という結果を招いた悲劇に、英国民は動揺を隠せないようだ。ナイフ犯罪はこの国で増加の一途を辿っており、英国家統計局の調査では2017年7月1日から2018年6月30日までのロンドン地区でのナイフ犯罪の比率は過去10年で最も高くなっており、2016年7月1日から2017年6月30日の1年間と比べても15%増、約15,000件のナイフ犯罪が発生している。

画像は『BBC News 2019年1月5日付「Surrey train stabbing: Lee Pomeroy ‘was honourable man’」(FAMILY HANDOUT)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)