2015年のF1復帰から苦戦を強いられてきたホンダF1。マクラーレンと袂を分かち、トロロッソと手を組んだ2018年シーズンでは、ホンダに明るい兆しが見えてきた。そんなホンダがいかに進化していったか、F1iのテクニカルエキスパート、ニコラス・カーペンティアーズがその軌跡をたどる。
■重心低下と吸気系の改善
ホンダPU(パワーユニット/エンジン)RA615HとRA618Hを比較する一番上の2枚の写真を見るだけでも、2015年から2018年にかけていかに重心位置が低くなっているか一目瞭然である。もはやVバンク上にはMGU-H(熱エネルギー回生システム)しかなく、ホンダの技術者たちはその空いたスペースを活かして、可変吸気バルブの改良に取り組んだ。
さらに真ん中の写真では、青色矢印で示されているようにコンプレッサーで圧縮された空気を燃焼室に送る巨大なダクト3本のうちの右バンク側の2本が視認できる。2017年以来ホンダは吸気系を改善し、メルセデス同様にプレナムチャンバーを左右バンクに分割する方式を取っている。
■オイルタンクの大改良
コンプレッサーの搭載位置を下げたことは、マシンパッケージ全体に好影響を与えた。しかし一方で、オイルタンクの信頼性に大きなしわ寄せが行くことになった。2017年シーズン序盤に起きたオイル漏れトラブルは、まさにそれが原因だった(第3戦バーレーンGPではMGU-Hのベアリングが焼き付くなどして、実に5基のパワーユニットを交換した)。
だが2018年にはオイルタンクの設計を大きく見直し、根本的な解決にたどり着いた。2017年には正面右側がほとんど断ち切られた三日月型の形状だったオイルタンクが、2018年のRA618Hではほぼ直方体に近い形になったのだ。
オイルタンクのど真ん中には依然として、コンプレッサーに繋がるダクトが貫通している。しかし2018年型ではインタークーラーからのチューブで占められていた右側のスペースを回復。左右に分かれたインタークーラーと繋がる2本のチューブは、(2ページ目の写真で示されているように)タンク脇にコンパクトに取り回されている。
その3に続く