この1月3日に、ミハエル・シューマッハーは50歳の誕生日を迎えた。1994年にベネトンで最初のタイトルを獲ってからでも、すでに24年以上の歳月が過ぎ去った。われわれはこの機会に、ひとつの興味深いビデオを紹介しようと思う。1993年末に、当時マクラーレンのメインスポンサーだったヒューゴ・ボスが開催したイベントでの、マクラーレンの総帥ロン・デニスとシューマッハーとの生々しいやり取りである。
シューマッハーを見出した伝説のマネジャー、ウィリー・ウェバーが注意深く見守る中、デニスがシューマッハーに話しかけた。当時の彼はまだ、1992年のスパ・フランコルシャン、そして93年のエストリルと、まだ2勝を挙げたに過ぎない新人ドライバーだった。にもかかわらずデニスはシューマッハーの才能を賞賛し、近い将来のマクラーレンへの移籍を持ちかけたのだった。
デニス「こんな騒がしいところではなく、私のところに来て一度じっくり話し合わないか。われわれの仕事の仕方も、見てもらえたらうれしいね」
それに対してシューマッハーは即答こそ避けたものの、興味のあるそぶりを示した。
シューマッハー「今後の状況次第では、私がどんな立場に立たされるのかわかりません。うまく前に進めばいいんですが」
そしてベネトン残留が決して最上の選択肢とは限らないことを、示唆したのだった。
シューマッハー「ベネトンとの契約がまとまれば何よりですが、万一そうならなかった場合は、出て行くしかないでしょうね」
会話が一段落すると、デニスはシューマッハーの才能に対し忌憚のない意見を述べた。
デニス「とにかく気をつけてくれ。きみが素晴しいドライバーであることは間違いないが、はたから見ていると時に限界すれすれの走りをしているようだからね」
その言葉に少し驚いた顔をしたシューマッハーは、こう切り返した。
「僕の走りには、問題があると?」
デニス「問題があるとは言ってない。ただ気をつけろと言っているんだ。コクピットに座った瞬間から、きみの運命を左右するのはきみ自身なんだからね。そして限界の内側にとどまれるかどうかも、きみ次第なのだ」
結果的にシューマッハーは、ベネトンとフラビオ・ブリアトーレへの信頼をもう少し延長する決断を下した。その後ふたつのタイトルを手にしてからは、フェラーリへと向かった。シューマッハーとロン・デニスの未来は、ついに交錯することはなかったのだった。
■ロン・デニスがミハエル・シューマッハーをスカウト(1993年)