小林可夢偉とフェルナンド・アロンソを助っ人に迎え、2年ぶりのデイトナ24時間総合優勝を目指すウェイン・テイラー・レーシング(WTR)。チームは1月4~6日、アメリカ・デイトナで行われたIMSAの公式テストで10号車キャデラックDPi-V.Rを走らせ、1月末の本戦に向けた準備を進めた。
コニカミノルタ・キャデラックDPi-V.Rというエントラント名で2019年のIMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップにフル参戦するWTRは18年11月、シーズン開幕戦ロレックス・デイトナ24時間に、可夢偉とアロンソという豪華コンビを助っ人ドライバーとして起用すると発表した。
18年のデイトナ24時間でIMSAデビューを飾ったアロンソと、北米シリーズ初参戦となる可夢偉は、ともにTOYOTA GAZOO RacingのドライバーとしてWEC世界耐久選手権に参戦中だ。しかし、WTRが走らせるDPiカーは、ふたりにとっては初めてドライブするマシンであり、今回の公式テストではデイトナ24時間以外では走ることのないオーバルコースの習熟を含めたクルマへの対応に焦点が当てられたという。
そんなWTRはテスト初日からタイムシートの上位に顔をのぞかせると、4日午後には可夢偉がセッション最速タイムを記録。“ル・マン最速男”の適応力の高さをアメリカで示してみせた。
「予想どおり、WTRはとてもよく連携がとれている」とチームの印象を語った可夢偉。
「僕らは(レースに向けて)しなくてはならないことを理解しています。この種のレースの経験は充分なほどあると思うので、お互いに協力しながらスピードを高めていくだけです」
「目標はもちろんレースに勝つこと。いくつかの部分ではとてもうまくいきましたが、まだやるべきこともあります。しかし、24時間レースまでは、まだ余裕があるので宿題をこなして、さらに強くなって戻ってきたいと思います」
そんな可夢偉はテスト中、最大30度の傾斜がついたオーバルを持つデイトナのコースを楽しんだようだ。
「(SNSでも見受けられるように)僕らはうまくコミュニケーションをとり、お互いに楽しみながらテストをこなせたと思います」
「デイトナのトラックはとても印象的で、特にバンクは最高でしたね! 僕はいつもモータースポーツのなかにエキサイティングな物を探していますが、デイトナはその内のひとつになりました」
「また、ヨーロッパに比べて観客とドライバーの距離が近いのもいいですね」
■アロンソ「チーム全体で最善をつくすことが大切」
2018年大会はマクラーレンF1のザック・ブラウンが共同オーナーを務めるスポーツカーチーム、ユナイテッド・オートスポーツからデイトナ24時間に挑んだアロンソは、過去の走行経験が今回のテストで役に立ったと語った。
「すべてがうまくいった、非常にスムーズな週末だったよ」
「素晴らしいチーム、素晴らしい人たち、そしてクルマも最初から良いバランスで、とても満足できた」
「僕は昨年、このトラックを経験している。だから、チームがどのように機能し、テストを通じて何を見つけだそうとしているのかを理解するのに集中することができたんだ。僕たちはそれをみながらクルマにいくつかの改良を加えている」
昨年はマシントラブルに泣いたアロンソだが、今季は17年のチャンピオンで同年のデイトナ優勝チームからの参戦ということもあり、18年のル・マン24時間制覇に続く“世界三大耐久レース”の2勝目が期待されている。
それについてアロンソは「(デイトナ24時間は)長いレースであり、誰が勝つかはさまざまな要因に左右される」と冷静にコメント。
「僕たち側でできる(勝利への)最大の近道は、ひとりひとりが高い次元で集中力を保ち、チーム全体で最善をつくすこと。そして、(ドライバーは)24時間にわたってクルマに関するフィードバックを怠らずにチームを支援し続けることだ」
可夢偉、アロンソ、ランガー・バン・デル・ザンデ、ジョーダン・テイラーの4名がドライブした10号車キャデラックDPiは、3日間で計165周、距離にして587マイル(約945km)を走破した。
テストではマツダチーム・ヨースト勢が一貫して速さをみせたが、マツダは過去2年間、デイトナ24時間で完走を果たしておらず、信頼性の部分では不安が残るも事実だ。一方、キャデラックDPiは大会2連覇中と相性の良さを示している。
また、名門ペンスキーが走らせるアキュラDPiや18年シーズン2勝を挙げたニッサンDPiも順調にテストを進めており、2019年のデイトナ24時間は前回大会以上に白熱した優勝争いが繰り広げられることが予想される。
そんな19年デイトナ24時間は1月24~27日、アメリカ・フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで開催される。