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AAA、岡崎体育、Aimer、ミセス、眉村ちあき……J-POP最前線に迫るアーティストたちの新作

2019年01月08日 10:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 いまや日本のエンタメを代表する存在となったAAAのニューシングル、6月に念願のさいたまスーパーアリーナ公演を開催する岡崎体育の3rdアルバムなど、ポップミュージックの最前線に(いろんな角度から)迫っているアーティストの新作を紹介。尖ったクリエイティビティとわかりやすいポップ感覚を備えた作品をじっくりと味わってほしい。


(関連:AAAの“強さ”の秘密は? 全方位に向けて破竹の勢い見せた2018年の活動を振り返る


 2017年、2018年と2年連続で4大ドームツアーを成功させ、名実ともに日本のトップアーティストの座を手に入れたAAA。2019年最初のシングルの表題曲「笑顔のループ」は、『NHK みんなのうた』(2018年12月~2019年1月放送)のために制作された、ほっこりと温かいメッセージソング。心地よく響くビートと流麗なストリングスを軸にしたトラックとともに描かれるのは、“日常のなかにある素敵なことを見つけ、笑顔のループをつなげていこう”という思いを込めたリリック。素朴な手触りのサウンドメイク、ひとつひとつの言葉を手渡すようなボーカル/ハーモニーなど、幅広い層のリスナーに訴求できる楽曲に仕上がっている。どこか懐かしい雰囲気のこの曲をきっかけにして、AAAの認知度はさらに高まることになりそうだ。


 2019年6月9日のさいたまスーパーアリーナ公演へのキックオフとなる、3rdアルバム『SAITAMA』。「MUSIC VIDEOO」に代表される“ネタ曲”でブレイクした岡崎体育だが、『XXL』以来、約1年半ぶりのオリジナルアルバムとなる本作には、得意の“ネタ曲”“おもしろ曲”は一切なく、オリジナリティ溢れるサウンドメイク、メロディと言葉の独創的なグルーヴをさらに追求した、“音楽家・岡崎体育”の才能と魅力がたっぷりと体感できる作品として成立している。京都の大学生を主人公にした「弱者」、思うように曲が書けなかった時期の心境を綴った「なにをやってもあかんわ」、中学時代の思い出を叙情的に描いた「私生活」など、彼自身の体験をモチーフにした楽曲も本作の魅力だ。


 ジャンルを超越したアーティストとのコラボレーション、アンビバレンツな感情を同時に描き出すボーカルによって高い評価を得ているAimerのニューシングル『I beg you / 花びらたちのマーチ / Sailing』は、色彩豊かな楽曲を揃えたトリプルA面。特に注目してほしいのは、劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』(1月12日公開)の主題歌としても話題を集めている「I beg you」だ。同作品の劇伴を担当する梶浦由記が楽曲提供・プロデュースを担当したこの曲は、エキゾチックなメロディと緻密なアレンジが融合したナンバ—。愛情と憎しみ、デリケートな情感と力強い意志など、相反する思いをバランスよく表現した歌は、彼女の真骨頂と言っていい。春の旅立ちを主題にした「花びらたちのマーチ」、ピアノを軸にした繊細なバラード「Sailing」を含め、佳曲ぞろいの作品である。


 3rdアルバム『ENSEMBLE』のヒット、幕張メッセ2days公演の成功によって、バンドシーンのなかで頭ひとつ抜けた感のあるMrs. GREEN APPLE。“ロック”“バンドサウンド”では括れない彼らの音楽性は、8thシングル表題曲「僕のこと」でもしっかりと貫かれている。常に何かに怯えながらも、この先にあるはずの奇跡のような瞬間を信じ、今日という日を必死に生きるーー第97回全国高校サッカー選手権大会の応援歌として書き下ろされたこの曲は、大森元貴自身の生き方、そして、リスナーひとり一人の人生と強くリンクしている。壮大なオーケストラを取り入れたサウンドがまったく大げさになっていないのも、この曲のスケール感、普遍的なパワーを証明していると思う。


 “弾き語りトラックメイカーアイドル”にして株式会社じゃないもん代表取締役社長。地上波の音楽番組にも次々と出演し、急激に注目度を集めている眉村ちあきの初の全国流通アルバム『ぎっしり歯ぐき』は、これまでに発表された作品(『ハタチの女 オブ アメリカ』『海苔汁』『Germanium』『目尻から水滴3個、戻る』『スーパーサイア「ち」』『Hipar Saiyan Chi』)の再レコーディング曲を含む全30曲を収録。フォーク、R&B、演歌、テクノ、エレクトロなどを自由奔放に行き来するサウンド、ナンセンスと切実な感情が混然一体となった歌詞、(実は)めちゃくちゃ豊かな表現力を備えたボーカルなど、圧倒的なオリジナリティと誰もが楽しめるポップネスを共存させた楽曲が並んでいる。2019年音楽シーンの台風の目だと思う、ホントに。


■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。