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DISH//が7年かけて育て上げた音楽のカタチ 2019年へと思いを繋いだ年末ワンマン振り返る

2019年01月07日 22:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 4人組ダンスロックバンド・DISH//が、2018年12月27日に行ったワンマンライブ『忘年会だよ!全員集合!!!2018』。エンディングでメンバー全員がステージを下りたあと、この1年の彼らの道のりを振り返るかのように流れた「Starting Over」に合わせ、会場を埋め尽くすスラッシャー(DISH//ファンの愛称)が大合唱を始めた。


参考:DISH//、快進撃予感させる新シングル『Starting Over』 新進気鋭の作家陣迎えて歌う“再スタート”


〈あの日 僕らは泣いて泣きじゃくって それでも諦められない夢を語り ほんのわずかでも希望を探して 闇雲にもう一度歩き出した〉


 サポートミュージシャン2名を加えたライブは先述の「Starting Over」の演奏で幕を開けたが、柔らかな笑みを浮かべた匠海、その歌を丁寧にハモりでサポートしていく矢部昌暉(Cho/Gt)をはじめ、メンバーの佇まいにはこれまでにない落ち着きを感じさせるものがあった。序盤はステージ上と客席が一体となってヘドバンする「Newフェイス」、スラッシャーのコール&ペンライト芸(?)が炸裂する初期ナンバー「FLAME」など、アッパーな曲を連投。会場を瞬時にヒートアップさせていった。


 そんな中で7曲目に演奏されたのが「ただ抱きしめる」。橘柊生(Fling Dish/RAP/DJ/Key)のリリカルなピアノの音色や、落ちサビでの匠海のエモーショナルな歌声にぐっと引き込まれるようなバラードだ。スラッシャーへの感謝の気持ちを伝えるかのように“自分にとって大切な存在”について歌ったこの曲では、スラッシャーもペンライトを消し、じっくり演奏に聴き入っていた。


 続く「HIGH-VOLTAGE DANCER」からはヘッドセットを着け、彼らの顔の1つであるダンスロックバンド形式でパフォーマンスを展開していく。プレイ面の屋台骨である泉大智(Dr)を含む全員が歌って踊り、時折演奏してはコントばりの小芝居まで披露する「JK//」での盛り上がりは圧巻だった。特にパラパラ風の振りをスラッシャーと一緒に踊り、曲中のセリフを「みんなと忘年会できてうれしいよーーー!!!」と替えて会場を盛り上げていた柊生は、この日もステージと客席の熱気を橋渡しする宴会部長(?)的な役割を果たしていた。


 先日、結成7周年を迎えたDISH//。MCでは匠海がグループのこれまでをこう振り返った。


「DISH//は7周年、やっと小学生です。僕らは武道館を夢見て結成して、夢を叶えるっていうのはすごいことなんだなと、武道館のステージに立ったときに思いました。今は横浜スタジアムという大きなステージを目指して、日々頑張っています。今日このステージに立てているのはここにいるみなさんのおかげでもありますし、次に歌う曲はみなさんのために書いたといっても過言ではないくらい、スラッシャーのことを思って書いた曲。この先のスラッシャーを含むチームDISH//が夢に進んでいくための力になるように、歌いたいと思います」


 ここで演奏されたのが、メンバーが作詞を手がけた「サクラボシ」。サクラ色のライトに照らされながら〈見上げた夜空には きっと 桜色の星輝く 躓いた時も涙は流さない あの星が滲んでしまうから〉と、匠海が一言一言を丁寧に歌い上げていった。続けて披露された「birds」(1stアルバム『MAIN DISH』収録曲)も、〈世界で一番愛しい人に出会ったよ〉というワードがスラッシャーを表現すると同時に、彼らにとって初心に帰れるような選曲だったのだろうと感じた。


 2018年の活動を振り返るMCでは「2018年は個々でもいろいろ活動したじゃないですか。昌暉は『暁のヨナ』の舞台に出て、匠海は『OVER DRIVE』や『春待つ僕ら』とか映画に出て。そして大智は……金髪でやってますけども」と勝手にオチをつけた柊生に、大智本人もスラッシャーも爆笑。この1年、DISH//の活動に集中してきた大智は「去年はバンドに入ったばかりで凄く長く感じたけど、今年はあっという間。2019年はいっぱいライブをしたいね。自分たちからいろいろ発信していく1年にしたい」と抱負を語った。柊生自身も「今年はゲーム実況チャンネルを立ち上げたり、DJとしてMIX TAPEを出したり、好きなことを仕事にできた1年だった。2019年はその好きなものの幅を広げていくことに挑戦したい。(個人として)ラジオもやっているけど、4人でもやりたいよね」と語るなど、今後の展開を期待させるような予告も飛び出した。


 笑顔の絶えないMCのあと、ライブ終盤に演奏されたのが「勝手にMY SOUL」、そしてラストの「愛の導火線」。激しいパフォーマンスを繰り広げる4人とペンライトを振り上げるスラッシャーがまるで火花を散らすかのように、チームDISH//らしい熱さでステージを締めくくった。そしてこの日のさまざまな曲で感じたことでもあるが、4人のテクニック的な上達に伴って演奏のバランスにも変化が見られ、音源ではギターの音をフィーチャーしている「愛の導火線」で柊生のピアノの存在感が増していたりと、“DISH//の音楽”が育っている様子も興味深かった。


 去り際に「この1年をこんなふうに笑顔で終われるとは思ってなかった。今日のライブを経て、改めていい1年だったなと思いました」と匠海が挨拶。4人がステージを降りたあと、冒頭で書いた大合唱が自然に起こったのだった。


 この日ほとんど触れられなかったが、現在のメンバー4人体制で走り出し、ギタリストでもある匠海が骨折するなど、さまざまなできごとを経験した2018年。個々の活動が多忙な中、ツアーのほかにもイベント『全国47都道府県を巡る旅』など地道な活動を展開していたが、そこでも改めてスラッシャーとの絆を再確認できたのだろう。2019年はきっと彼らにとって充実した年になるに違いない。4人と詰め掛けたスラッシャーの笑顔に、シンプルにそう感じさせられたステージだった。(古知屋ジュン)