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求められるのは常套設定を超越する何か? 菅田将暉×永野芽郁『3年A組』は推測しにくいドラマに

2019年01月07日 12:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 担任教師がクラス全員を人質にとって教室に立てこもり、“最後の授業”をするというとんでもないプロットを携え、日本テレビ系列日曜ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』が1月6日、スタートした。立てこもり10日目となる3月10日から一気に時間が3月1日まで遡り、そこから1話ごとに1日の経過を映し出していくという作りは連続ドラマというフォーマットを巧みに使った(とくに昨今の連ドラ=10話という切りのよさもあり)方法論ではあるが、はたしてこの先どのように物語が運ばれていくのか。新年早々、ちょっと推測するのが難しいタイプのドラマが始まったという印象である。


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 卒業式を間近に控えた3年A組の教室に入ってきた担任教師・柊一颯(菅田将暉)は、29人の生徒たちに人質になるよう告げる。教室の扉に特殊な鍵をかけ、窓には強化ガラスが施され、外から様子が見えないようにされている。さらに監視カメラとそこら中に仕掛けられているという爆弾。その1つが爆破され、完全に孤立状態に追い込まれた3年A組の生徒たちは、数カ月前に景山澪奈(上白石萌歌)という女子生徒が自殺した理由について考えることを余儀なくされる。


 この物語の根底にあるのは、「いじめ問題」や「スクールカースト」といった学園ミステリーの常套として用いられる題材であることは序盤から明白である。そこにSNSを織り交ぜるという現代的要素も、最近ではすっかり常套手段といえよう。物語のヒロイン格でもある永野芽郁演じる茅野さくらは周囲の目を気にしてビクビクするタイプではあるがクラス委員長という役回り。おそらく断りきれずに押し切られたといったところだろうか。


 そして教室の後方には片寄涼太演じる甲斐隼人や、今田美桜演じる諏訪唯月といった“目立つ”タイプの生徒が集まり、前方の方にはドキュメンタリー映画を撮ろうとカメラを回し続ける萩原利久演じる逢沢博己であったり、アニメの時間を気にする森七菜演じる堀部瑠奈といった控えめな生徒が並ぶ。その人物のキャラクターが席順によってある程度表されているというのは、『3年B組金八先生』(TBS系)に代表されるように学園モノの定番というわけだ。


 いずれにしても、「学校に閉じ込められる」というシチュエーションや「死んだ生徒/いなくなった生徒の動機を探る」という設定自体は、『悪の教典』であったり欅坂46の『残酷な観客達』(日本テレビ)などなど、似ている作品を羅列していけばきりがない。そんな中でおそらく本作のマインドにもっとも近い位置にあるのは、Netflixで配信されている海外ドラマの『13の理由』であり、また「問題を抱えた集合体に再生の機会を与える」というラインでは、本作の脚本を担当している武藤将吾が手がけたドラマ版『家族ゲーム』(フジテレビ系)にも似たニュアンスを感じる(「悪意にまみれたナイフで~」の台詞はよく似たものがあったはずだ)。


 そういった作品が比較対象として置かれる中でどのようにして、現在2019年の日本の、それも学園ドラマとして展開していくか。もっとも、この第1話のような1人の生徒と澪奈との関係を深掘りして→理由を見出すが不正解→誰か1人が死ぬというようなパターン化だけは避けるべきであり、常套設定を超越する何かが求められることは言うまでもない。若手キャストひとりひとりにフォーカスが当てられるのか、それとも満遍なくアンサンブルとして作り上げられていくのかという点も含め、期待を込めて見守っていきたいところだ。(久保田和馬)