2019年01月06日 11:22 弁護士ドットコム
夫から不妊を理由に離婚を切り出されていますーー。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。夫婦ともに40代。数年間、不妊治療を続けてきたところ、「どうしても後継ぎがあきらめきれない」夫からの申し出でした。不妊の原因は、不明です。
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女性は、夫の事情を受け入れ、離婚には応じる考えでいます。現在は夫の会社で働いているそうです。
離婚後の生活のことを心配しており「離婚後、私の生活保障のためのお金は継続的にもらえますか」「夫に浮気相手がいることがわかった場合、離婚後でも慰謝料は請求できるのでしょうか」と聞いています。
事情があるにせよ、夫の意向は身勝手にも思えます。とはいえ、離婚後に「生活保障のためのお金」はもらえるのでしょうか。柳原桑子弁護士に聞きました。
ーー今の時代でも、「後継が欲しい」という理由での離婚があることに驚きます。夫への愛情ゆえなのか、相談者は離婚を受け入れようとしています。
「協議離婚は、両者の合意でもって離婚できるので、夫から離婚を切り出され、妻が受け入れる方向ということであれば、理由はどうであれ、離婚はできます。
そして離婚後は、互いに扶養義務がなくなり、離婚後の生活保障をし合うことはないのが原則です」
ーー相談者は「生活の保障を」と求めています。やはり無理なのでしょうか
「事情によっては、離婚後の生活保障が必要とされる場合もあるでしょうし、それが、両者の離婚協議を進める上で妥当とみなされる場合もあります。
財産分与は、一切の事情を考慮して定めるとされており、第一義的には清算的な意味合いですが、それだけでなく慰謝料的や扶養的な意味合いを含めて考慮することができます。
今回のケースでは、妻が夫の会社で働いているという事情と、夫の一方的な理由による離婚請求であるとすると、夫の会社を退職するのであれば、離婚後の当面の生活費を含めた財産分与を考慮するよう協議しても良いと思います」
ーー相談者は、実は夫には恋人がいるのではないか、という点も気になっているようです
「離婚請求の背景に、夫に女性ができていたことがわかったという場合、離婚成立後であっても、離婚成立から3年間の時効成立前であれば、慰謝料請求することができます。
ただ、離婚前にわかったという場合には、離婚時に解決しておくべきでしょう。なぜなら、離婚時にわかっていたにもかかわらず、合意をした場合、請求しない意思で合意したものと解釈される余地があるからです」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
柳原 桑子(やなぎはら・くわこ)弁護士
1998年弁護士登録 第二東京弁護士会所属
離婚事件・遺産相続事件などの家事事件、破産事件、不動産関係事件等を中心に、民事事件を扱っている。「離婚手続きがよくわかる本」、「よくわかる離婚相談」、「相続・贈与・遺言」、「離婚の準備・手続・ライフプラン」監修(いずれも池田書店)。
事務所名:柳原法律事務所
事務所URL:http://www.yanagihara-law.com/