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バーのマスター、客同士の不倫をバラしても問題ない? 妻に密告して騒動に

2019年01月06日 10:12  弁護士ドットコム

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様々な人間模様が垣間見えるバー。単なる恋人同士だけではなく、時には不倫カップルもいる。そんな場面を常時ウォッチできるのが、バーのマスターだ。


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女子SPA!の記事「妊娠中の夫の不倫…知ったきっかけは不審者から」(https://joshi-spa.jp/891277)では、ある男性が、妻の妊娠中、バーで知り合った女子大生と不倫関係になってしまったことを、マスターが男性の妻(以前はバーに通っていたので知り合い関係)に密告する様子が描かれている。


マスターが密告することをためらってしまい、男性の妻に対して、不審者のような行動をとってしまった、というのが記事の主旨なのだが、結局は、妻に対して、店で起きた不倫をバラしてしまっている。


妻は今後、離婚も視野に入れているようだが、男性の立場からすると、バーのマスターが、客の極めてプライベートな話をバラしてしまったことに法的な責任はないのだろうか。尾崎博彦弁護士に聞いた。


●不法行為は成立しないと考えられる

「まず、バーのマスターが客の秘密をばらしたことで刑罰を受けることはありません。刑法には業務上取り扱った人の秘密を漏らした場合に罪に問う『秘密漏泄罪』が規定されていますが、その主体は医師や薬剤師、あるいは弁護士などに限定されており、バーのマスターがこれに該当しないことは明らかです。また、男性の妻への密告は『公然と事実を摘示した』ことにもなりませんので、名誉毀損罪も成立しません」


刑事では問題なし、ということだが、損害賠償など、民事上の問題はどうなるのか。 


「まず、マスターの行為が『不法行為』に該当するかどうかですが、そのためには男性の『権利を侵害した』ことや、マスターに『一般的な義務違反があった』ことが必要です。


今回の場合では、秘密をばらされた男性には何か『権利(法的に保護されるべき利益)』があったのでしょうか。


もう少し踏み込むと、男性の『名誉権』や『プライバシー権』侵害があったのか、ということです。『名誉』とは人の社会的な評価を意味しますが、不倫の事実は私的領域の問題であり、男性の妻に対する関係では社会的評価は問題になりません。プライバシーについても不倫が違法である以上、その事実を秘匿することが法的に保護されるとも考えられません。


一方、マスターはたまたま人の秘密を聞くことはあっても『秘密を聞く』ことが職務の内容ではありません。したがって『秘密をばらしてはいけない』という一般的な義務が課せられることもありません。よって、マスターが男性の妻へ密告したことが、男性に対する『権利侵害(あるいは義務違反)』とはいえず、不法行為は成立しないと考えられます」


●「秘密にしておいてほしい」と頼まれていた場合

もし、「2人の関係を秘密にしておいてほしい」と男性がマスターに伝えていた場合でも問題ないということになるのか。


「そういった依頼があり、これをマスターが承諾した場合は、マスターに『約束違反(債務不履行)』があったと考えることができるかもしれません。


しかし、このような約束が法的な拘束力を持つと考えるのは疑問です。何が秘密なのか、どこまでは大丈夫なのかといった点も曖昧ですし、そもそもそんな約束がなされていたかも不明確です。


もちろん、客の秘密を軽々にばらす店に行きたいとは私も思いません。ですが、そのことと、およそマスターに客の秘密をばらしてはならないという義務が発生するかとは別であって、通常そのような義務は生じないと考えます」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
尾崎 博彦(おざき・ひろひこ)弁護士
大阪弁護士会消費者保護委員会 委員、同高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員、同民法改正問題特別委員会 委員
事務所名:尾崎法律事務所
事務所URL:http://ozaki-lawoffice.jp/