2019年01月01日 10:22 弁護士ドットコム
都市部から地方の実家に帰ると、どうしても車移動が増えます。正月休みは、アルコールを摂取する機会が多いだけに注意が必要と言えます。
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しかし、一般家庭には事業所のようなアルコールチェッカーはありません。中には判断がつきにくい場合もあると思います。
たとえば、初詣に行くことを考えてみましょう。元日の朝、おせち料理の前に、少量の「お屠蘇(とそ)」を飲んでいたとしたら、車で出かけるのはマズいのでしょうか。
あるいは、初詣に出かけて、寺社で振る舞われていた「甘酒」を飲んでしまったとしたら、帰りは運転できないのでしょうか。和氣良浩弁護士に聞きました。
――甘酒やお屠蘇でも飲酒運転になるのでしょうか?
「飲酒運転は、法律上、『酒気帯び運転』(道交法65条1項)や『酒酔い運転』(道交法117条の2第1号)として規制されています。
『酒気』とはアルコール分を指しますので、アルコールが含まれるお屠蘇や甘酒は『酒気』に該当しますが、甘酒のうちアルコールを一切含まないものは『酒気』には該当しません。
そして、『酒気帯び』とは、外観上(顔色、呼気等)酒気を帯びていると認知できる状態を指し、お屠蘇などを飲んで『酒気帯び』と評価される状態で自動車を運転すれば、法律上の飲酒運転となり得ます」
――お屠蘇などでも、飲んだあと運転してはいけないのですね。
「『酒気帯び運転』のうち、程度が重いもの、すなわち、血液1mlにつき0.3mg以上、または呼気1Lにつき0.15mg以上のアルコールを保有する状態で運転をした場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられることがあります(道交法117条の2の2第3号、同施行令44条の3)。
また、運転者が『酒気帯び』であることを知りながら、その運転者に対して自己の運送を依頼して同乗した者も同様に罪に問われることがあります(道交法65条4項、117条の2の2第5号)。
さらに、酒に酔った状態で運転した場合には、『酒酔い運転』として、より重い5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられることがあります(道交法117条の2)。
『酒酔い運転』とは、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態での運転を指し、『酒酔い運転』かどうかは血中や呼気中のアルコール濃度だけでなく、言語態度に表れた特徴や運動能力の状況なども考慮して判断されます。
つまり、アルコール濃度が上記基準を下回っていても、『酒酔い運転』として処罰される可能性があります」
――お屠蘇や甘酒を多量に飲むことは少ないと思います。アルコール処理時間はどのくらいを目安にしたら良いのでしょうか?
「たとえば、体重60㎏の男性であれば、アルコール度数が15度のお屠蘇を15ml摂取した場合、アルコールの処理には20分程度かかるといわれています。
他方、甘酒はアルコール度数が1度未満のものが一般的であるため、お屠蘇と比べるとアルコール処理時間はより短くなると考えられます。
もっとも、摂取したアルコールの体内の処理スピードは、性別・年齢・体重などにより異なり個人差があります。さらにはその日の体調などによっても変化しますので、時間の経過だけで体内のアルコールが消失したと判断するのは危険といえます」
――こうした数字を目安にしつつ、体調なども勘案しながら、十分な余裕をみるべきだと言えそうですね。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
和氣 良浩(わけ・よしひろ)弁護士
平成18年弁護士登録 大阪弁護士会所属 近畿地区を中心に、交通・労災事故などの損害賠償請求事案を被害者側代理人として数多く取り扱う。
事務所名:弁護士法人和氣綜合
事務所URL:http://www.wk-gl.com/