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年末企画:久保田和馬の「2018年 年間ベスト女優TOP10」 贅沢な女優アンサンブルが確立

2018年12月30日 12:02  リアルサウンド

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 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。今回は、2018年に日本で劇場公開された邦画の作品と、放送されたドラマの中から執筆者が独自の観点で10人の女優をセレクト。第16回の選者は、単館系からアニメまで幅広く論じ、若手女優ウォッチャーとしても多くのレビュー・コラムを執筆した映画ライターの久保田和馬。(編集部)


・新木優子『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)
・石原さとみ『アンナチュラル』(TBS系)
・今田美桜『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS系)『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)
・唐田えりか『寝ても覚めても』
・北川景子『スマホを落としただけなのに』
・桜井日奈子『ういらぶ。』
・清野菜名『半分、青い』(NHK)
・永野芽郁『半分、青い』(NHK)
・浜辺美波『センセイ君主』
・南美櫻『聖なるもの』
(50音順)


 実力派として名を馳せている女優から、期待されてきた女優の開花、はたまた彗星のごとく現れた新星など、例年にも増して様々なタイプの女優が伯仲した一年となった2018年。ひとつ一貫した共通点を挙げるとするならば、主人公たるメインヒロインのみならず、サブヒロインといわれる役回りにある女優たちも引き立て役に留まらない抜群の存在感を示し、1作品の中で贅沢な女優アンサンブルが確立される作品が多く見られたということだろう。


参考:<a href=”https://www.realsound.jp/movie/2018/12/post-290665.html”>年末企画:折田侑駿の「2018年 年間ベスト俳優TOP10」 今後も追い続けたい若手俳優の誕生</a>


 一覧に挙げた作品の中では『SUITS/スーツ』や『寝ても覚めても』、『ういらぶ。』、『半分、青い』『聖なるもの』がまさにその女優アンサンブルの類であり、それぞれの作品から選出した1人、ないしは2人はその中でも特筆すべき存在であったということ(とりわけ今田美桜は『花のち晴れ』で完全にメインヒロインを凌駕する働きを見せるなど、大躍進を遂げた1年であった)。他にもこの一覧に入らなかった作品では『虹色デイズ』や『SUNNY強い気持ち・強い愛』や『今日から俺は!!』(日本テレビ系)などもそうだ。


 そんな大豊作な一年の中で、群を抜いた異様さを携えていた女優は『寝ても覚めても』の唐田えりかを置いて他にいない。東出昌大が一人二役で演じた“同じ顔をした男”の間で心揺れ動くヒロイン・朝子を演じた彼女は、特別巧い芝居をしているわけでもなければ、観客の心に寄り添うような古典的で明瞭なヒロイン像を演じているわけでもなく、むしろその真逆を突き進んでいく不思議な存在であった。それなのに、彼女がスクリーンに映るだけで目が離せなくなり、一挙手一投足に心が掻き乱されていく。むしろ、何だかわからない恐ろしさと危なっかしさに息を呑んで見入ってしまうといったところだ。まさに唯一無二。唐田の雰囲気があってこそ成立する役柄だったと言ってもいい。


 同じタイプとして括っていいものかは悩むところではあるが、受け手側の想像を超える突拍子もない行動を繰り出す“危なっかしさ”という点においては、半年間にわたって「楡野鈴愛」として生きた永野芽郁も負けてはいない。もちろん『ういらぶ。』の桜井日奈子や、『スマホを落としただけなのに』で鬼気迫る表情を炸裂させた北川景子や、昨年の『君の膵臓をたべたい』から一気に頭のネジが抜けたかのようなハジけた演技を披露した『センセイ君主』の浜辺美波(もちろん『賭ケグルイ』も含む)も忘れてはならない。あらゆる方面からハラハラさせてくれる女優たちの存在によって、今年の映画・ドラマの楽しさが増していたのだ。


 そして、ここまで挙げた面々とはまったく違うベクトルで、作品の出来栄えとキャラクターの放つ空気感の両面において『アンナチュラル』の石原さとみがひたすら輝いていた。女優デビューから15年、キャリア最高の演技で確固たる代表作を得たと考えて間違いないだろう。また『SUITS/スーツ』の新木優子も、大女優と勢いのある新星の間に挟まれながらパラリーガルのヒロイン格を好演。次期月9でもヒロインを演じるだけに、来年さらに爆発的なブレイクを迎えることは間違いないだろう。  (文=久保田和馬)