トップへ

旅行で「車中泊」、運転席でエンジンかけて酒を飲んだら「飲酒運転」になる?

2018年12月30日 10:22  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

近年、車中泊をしながら自動車で旅するスタイルが人気を集めています。年末年始にも帰省や旅行で、車中泊をする人が多いのではないでしょうか。


【関連記事:ビジホでデリヘル利用 「捕まるのかな…」募る不安】


一般社団法人日本RV協会が11月に公表した調査によると、回答した196人のユーザーのうち、93.4%が自動車の旅で車中泊を経験したことがありました。186人のユーザーのうち、5割が1年に10回以上という高い頻度で車中泊を行っていました。


車中泊の旅を楽しむ人たちは、道の駅やSA、PAなどを利用する場合が多いようです。そこでついついご当地の食べ物やお酒も買ってしまいますが、車中泊をしながら車の中で酒盛りすることは許されるのでしょうか。道交法で禁じられている飲酒運転との線引きはどこにあるのでしょうか。中川龍也弁護士に聞きました。


●最高裁の判例が示す飲酒「運転」の線引きとは?

お酒を飲んで運転席に座っても、飲酒運転になりますか?


「運転席に座っただけであれば、道路交通法上の『運転』行為とならないため、飲酒運転として処罰されることになりません」


では、どのような行動から「飲酒運転」になるのでしょうか?


「最高裁昭和48年4月10日判決は、自動車の『運転』の定義について、『単にエンジンを始動させただけでは足りず、いわゆる発進操作を完了することを要する』ものとしており、実務上は、エンジンを始動させ、車を発進させてはじめて、『運転』したものと取り扱っております。


この判断枠組みを前提とすると、エンジンを始動させない状態で、ハンドルを握ったり、ライトを点灯させたり、あるいは、窓を開けたりしただけでは、飲酒『運転』行為とはなりません。


ただし、エンジンを始動させていなくても、下り坂でサイドブレーキを操作し、惰力で下る場合には、飲酒『運転』と判断される場合もあるため注意が必要です。


他方で、エンジンを発動させた場合であっても、アクセルを踏んで発進をさせていなければ、飲酒『運転』行為とはなりません。


しかし、先程述べました最高裁の事案は、道路上に駐車させてあった軽四輪貨物自動車に乗車し、エンジンを始動させて発進させようとしていた事案で、酒酔い運転か否かが最高裁まで争われた例になりますので、運転行為か否かが紛らわしい行動は避けるべきかと思います」


●飲酒運転は年々、厳罰化…十分注意して車中泊を

では、お酒を飲んでから何時間後であれば、運転は可能でしょうか?


「純アルコール20グラム程度(ビール約500ミリリットル)を分解処理するのに、約4時間要するという調査結果があります(政府広報オンライン参照)。


ただし、性別、体質(極端にアルコールに弱い方)、その日の体調等によって処理能力も変動しますので、一概に4時間空ければよいということでもありません。


また、寝ている場合の方が、起きている場合と比べて、アルコールの分解速度が遅くなるため(政府広報オンライン参照)、4時間寝ていれば、運転してもよいということにはなりません」


車中泊のリスクや注意点はありますか?


「飲酒運転は年々、厳罰化の傾向にあり、飲酒運転に伴うリスクは、刑事、民事両面において、高いものになっています。飲酒をした場合、時間の長短は関係なく、自動車に乗らず、公共交通機関を利用するよう心がけるべきです。


また、照明の少ない箇所で停車し、睡眠をとっていた場合、走行車両が停車車両に気づかず、追突等してしまう事故も発生する可能性がありますので、車中泊が許されたパーキングエリア等、安全な場所で眠るようにして頂きたいです」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
中川 龍也(なかがわ・たつや)弁護士
立命館大学卒。平成22年弁護士登録(京都弁護士会所属)平成28年11月に中川龍也法律事務所を設立。主な取り扱い分野は交通事故(主に被害者側)事件。
事務所名:中川龍也法律事務所
事務所URL:http://nakagawa-lawyer.com/