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乃木坂46が『紅白歌合戦』で生んできた数々のドラマ 西野七瀬ラストの2018年出場に向けて

2018年12月30日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 乃木坂46が、12月31日放送の『第69回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)に出演する。グループが『紅白』に出演するのは、2015年から数えて4年連続。『紅白』出演が期待されていたものの、残念ながら涙を飲んだ2014年。その翌年に悲願の初出場を果たした乃木坂46にとって、『紅白』のステージは特別な思いが宿る場所だ。本稿では、2015年から2017年までの『紅白』出演を振り返りつつ、今年のステージの注目ポイントを解説していきたい。


参考:乃木坂46 西野七瀬、卒業シングル曲での『紅白』出場に感謝 「華やかな感じで終われたら」


■2015年「君の名は希望」


 2015年は3月に11thシングル『命は美しい』、7月に12thシングル『太陽ノック』、10月に13thシングル『今、話したい誰かがいる』の3枚がリリースされたが、初出場ということもあり、2年分の思いが詰まった5thシングル曲「君の名は希望」が選曲された。センターを飾る生駒里奈は「一つのグループとして誕生した私たちがこのステージに立てる」とアンダーメンバーを含めた37名全員で立つ意味を噛みしめる。グループカラーの紫を衣装やスクリーン全面に使用し、初めて乃木坂46を見る視聴者にグループのイメージを印象付けた。紅白ウラトークを担当する公式お兄ちゃんことバナナマンが見守る姿は、緊張した面持ちのメンバーにとって心強い存在であっただろう。


■2016年「サヨナラの意味」


 白石麻衣、松村沙友理と並び“御三家”と呼ばれ、グループのフロントを張ってきた橋本奈々未が、同年に卒業を発表。乃木坂46にとって初のミリオンヒット曲であり、橋本の卒業シングル曲「サヨナラの意味」が披露された。キャプテン・桜井玲香がリハーサルにはなかった手紙をサプライズで読み上げ、芸能界を引退する橋本とグループとの絆は消えることはないと誓った。橋本は翌年2月20日のコンサートで卒業を迎えることとなる。しかし、様々な層が視聴したこの『紅白』のステージが、橋本の姿を見る最後の機会だった人も多くいたことだろう。パフォーマンスのアウトロで清々しい笑顔を見せた橋本。バナナマン・設楽統が叫んだ「いい顔だ!」の一言は、ファンの気持ちを代弁したコメントだった。後日談として『AKB48 SHOW!』(BSプレミアム)にて齋藤飛鳥から語られた「『いい顔だ!』という声が聞こえて、それが聞こえた瞬間にちょっとだけ泣きそうになりました」というエピソードはファンの間でも語り草になっている。


■2017年「インフルエンサー」


 2017年3月にリリースされた17thシングル曲「インフルエンサー」は、同年の『真夏の全国ツアー』でもコンサートの見せ場にて披露され、メンバーを成長させた。夏を越え、年末の『第59回日本レコード大賞』(TBS系)ではグループ悲願の大賞を受賞。センターの一人である白石を筆頭に、様々なインタビューでメンバーが、この日のパフォーマンスはメンバーの気持ちが一つになっていたと語っており、その翌日が3度目の『紅白』の舞台であった。“過去最高の超高速ダンス”と謳われる「インフルエンサー」は、メンバーのパフォーマンスをより高めていったが、この楽曲はバナナマン・日村勇紀扮するヒム子の貢献なくしては語ることができない。『テレ東音楽祭2017』(テレビ東京系)、『真夏の全国ツアー』明治神宮野球場公演でのサプライズ出演、そして『紅白』の舞台でもヒム子との共演は実現した。ウラトークの席で踊るヒム子がカメラに抜かれ、その姿がデカデカとメンバーのバックモニターに映し出されるという大胆な演出。メンバーも大サビ前にはお得意の“ヒム子ポーズ”をバッチリ決め、3年目の紅白出演として余裕を見せたパフォーマンスとなった。


■2018年「帰り道は遠回りしたくなる」


 2018年、ドーム&スタジアムツアーを成功させ、メンバー個々としても様々なフィールドで活躍を見せた乃木坂46。一方で、西野七瀬を含む多くの卒業メンバーがグループを旅立っていった激動の年でもあった。『紅白』出場4年目の乃木坂46が披露するのは、西野の卒業シングル曲「帰り道は遠回りしたくなる」。西野はこの『紅白』のステージをもってグループを卒業し、2月に故郷の大阪・京セラドームにて卒業コンサートを開催する。


 「帰り道は遠回りしたくなる」は、MVや振り付けの至るところに西野の7年間が詰まっている。その一つが、Dメロにて、西野がメンバーとポジションを入れ替える振り付けの演出。本来は、西野の後を追うように卒業を発表した若月がそのポジションを担当していたが、先にグループを後にしたため、現在は秋元真夏や高山一実など、西野と特に縁深いメンバーがその役目を担っている。昨日より『紅白』のリハーサルがスタートしており、筆者が取材をした際、ステージでは秋元が該当ポジションを担当していた。(参考:乃木坂46 西野七瀬、卒業シングル曲での『紅白』出場に感謝 「華やかな感じで終われたら」)共に笑いあう姿は、2人の関係性を知っているファンには感極まる瞬間となるだろう。ステージには4期生を除く、アンダーメンバーを含めた1期生から3期生全員が集合し、西野の最後の舞台に華を添える。


 リハーサルを観ていて印象的だったのが、一人何度も、何度もサビの振り付けを確認する西野の姿。真剣なその表情からは、最後の『紅白』に向けた気迫、覚悟が伝わってきた。また、例年通り客席にはウラトークの席が設けられているが、今年、その席にバナナマンはいない。乃木坂46の『紅白』出場はバナナマンの姿と共にあった。ある種、乃木坂46だけで“一歩目を踏み出す”初の『紅白』とも言える。歌い出しの〈好きだった… この場所…〉は、西野にとっての乃木坂46を一つ示している歌詞であるが、リハーサルを通じ、思い出が詰まったNHKホールも意味しているのではないかと気付かされた。(渡辺彰浩)