2018年12月29日 09:42 弁護士ドットコム
刑務所に入っている受刑者たちは、クリスマスと年末年始にどのようなものを食べているのか、知っていますか。弁護士ドットコムニュースでは2011年以降に出所した元受刑者の男性7人への取材に成功。1度だけ「鯛」が出てきたなど、意外なエピソードを入手しました。
【関連記事:「ぼったくりバー」どう逃れる? はじまりは「1杯もらっていいですか」】
7人は、匿名を条件に取材に応じてくれました(元受刑者の名前はいずれも仮名)。出所した刑務所は7人が同じというわけではなく、話を聞いているとメニューは刑務所によって違うようです。
「フライドチキンという名の唐揚げが出てきました。たしかにチキンではありましたけど」と話すのは、N刑務所にいたという小川さん(30代)。
M刑務所に15年いたという水野さん(30代)は毎年、レトルトのチキンソテーが出ていたそうです。また、コーンとベーコンのいためものやアスパラも出たそうで「アスパラはわりとおいしかった」と水野さんはいいます。
風岡さん(50代)はS刑務所をはじめ、複数の刑務所にいましたが、ケーキが毎年小さくなっていきました。予算の問題ではないかといいます。「最初はよくある5号ケーキの小さい版のような丸いケーキが出ました。でも年々小さくなって、形も三角になりました」
刑務所では、ふだんは麦をまぜたご飯が提供されます。しかし、お正月には白いご飯やおもち、おせちなども出たと7人は振り返ります。
風岡さんは「S刑務所では1度だけ鯛が出てきて、驚きました」。お正月に出てくる焼き鯛の小さめのものだったといいます。水野さんは「おもちはつきたてで粉がついていました。あんこやきなこ、雑煮、ずんだもちなどいろんな種類を食べました」と記憶をさかのぼってくれました。
一方、悲しいエピソードも。N刑務所にいた高橋さん(40代)は「冷凍のお刺身が出ました。ただ、凍ったままのカチンコチン状態。おもちも冷えていて、とても固かったです」。
「おもちは焼いてしばらくたっていたのか、冷たかったですね。ただ、ふだんと比べればおいしい部類でした」(小川さん)
また、複数の刑務所を転々とした佐藤さん(40代)は「どの刑務所でもおもちは出ましたが、年々小さくなっていきました」。こちらも予算の問題なのかもしれません。
年末年始には、いつもは出ないお菓子も食べられたそうです。
高橋さんがいたN刑務所では、大手菓子メーカーの「チョコパイ」が出たといいます。ただ、「食べたら、ほわーんとなってしまいました」。成分表には「酒精」(エチルアルコール)の表示。ふだんアルコールが禁止されており、敏感に反応しすぎたのかもしれません。
またお菓子の量が多すぎて困ったという話も。T刑務所で炊事場係をしていた宮原さん(30代)は「とにかく食べきれないほど大量にあるんです。お腹がすくことがなくなり、ごはんも美味しくなくなりました」と振り返ります。
大量にある理由は、7人とも「不明」とのこと。年末年始だから特別に出してくれている、ということなのかもしれません。
A刑務所にいた菊池さん(40代)は申し訳なさそうに、次のように語りました。
「お菓子が出ても、決められた時間に食べきらなければならず、取っておくことはできませんでした。年末年始は刑務作業も休みでお腹もすかないので、食べきれずに残してしまいました。残飯の量もすごかった…」(菊池さん)
7人のうち6人は出所後、体重が増えたといいます。「中では食事の制限があり、ふだんは味のないものを食べていました。甘いものも滅多に出ませんでした」という小川さんは、出所後の食事が美味しくて、13キロも増えてしまったそうです。
クリスマスや年末年始の食事について、法務省にも聞いてみました。矯正局総務課は「パーティーなどの華やかな行事はありませんが、施設によってはクリスマスにチキンや甘いものが出たり、お正月におせち料理が出たりすることもあります。予算の範囲内で献立を考えています」と答えました。
(弁護士ドットコムニュース)