映画『アカデミー賞』が表舞台の華やかな表彰なら、もうひとつの『ゴールデン・ラズベリー賞』はマニアックに裏ステージに注目した(?)年間表彰だ。シーズンオフの今、2018年シーズンをF1ジャーナリストの今宮純が振り返り、各10部門に分けてノミネートしていく。
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☆ドライバー部門 セバスチャン・ベッテル
つめが甘かった。2017年5勝、2018年も5勝、317ポイントと320ポイントもほぼ同じ。開幕から首位に立ち前半の第10戦まではルイス・ハミルトンと攻防を続け、2018年シーズンで5回も“首位交代劇”をやってみせた。どのグランプリでも観客が増えたのは、ベッテルが見せ場をつくったから。ときにはスピン、接触、クラッシュ……、スリリングなシーンで沸かせたのが授賞の理由。
☆マシン部門 ウイリアムズFW41
F1マシンを操るのがいかに難しいか。それを毎戦ランス・ストロールとセルゲイ・シロトキンが知らしめた。コーナー入口も出口も、直線でさえも安定しない絶叫マシン状態。久々に見る不審挙動、FW41は失礼ながら駄作車だろう(ウイリアムズの最高技術責任者のパディ・ロウも認めた)。
2018年の開幕前テスト時点から最下位タイム、改善の“特効薬”も効かずに落ちるところまで堕ちた古豪。御大フランクさんの体調が心配になります……。
☆チーム部門 ハース
ワークス・ルノーに29点差の5位、“Bリーグ”での下剋上はならず。2018年の開幕戦からホイール脱落で全滅、ダブル入賞5&6位<18点>チャンスは幻に。後半イタリアGPではロマン・グロージャン6位が失格事件<8点>で消え、ルノーのサインツが8位<4点>繰り上がり。アメリカGPではマグヌッセンが9位失格となり<2点>を失った。コンストラクターズランク4位と5位の分配金の差額は推定数億円……。
■ブラジルGPで大きな話題となったオコンとフェルスタッペンの騒動
☆アクション部門 マックス・フェルスタッペン
「そう怒んないで」とエステバン・オコンが下手に出ていたら、マックス・フェルスタッペンもMAX100%怒り度にはならなかったかも(いやなったか)。ブラジルGPゴール後、体重測定エリアであのシーン、傍でじっと見ていたバルテリ・ボッタスはどんな気持ちだったのだろう……。
☆カラーリング部門 フェラーリ(日本GP以降)
なんでタイトル決戦前にここから塗り替えを。鈴鹿で公開された『MISSION WINNOW』のロゴ入りカラー。これを描き込んだ3戦後にコンストラクターズランキングでメルセデスに敗北した。
今回のロゴはフィリップモリス社のキャンペーンだが2007年以降、タバコのロゴ広告は禁止されている。フェラーリの大スポンサーである同社は、ドライバーフィーなど数十億円(推定)を受け持っており、2017年9月から新規の複数年契約を継続中だ。
☆レース部門 第4戦アゼルバイジャンGP
大荒れのバクー市街戦、3コーナーでうずくまったボッタスの悲劇。コース上のデブリのせいでタイヤがパンクしDNF(完走扱い14位)。あのまま勝てていたら、第4戦時点で1位ボッタス65点、2位ベッテル64点、3位ハミルトン63点。チャンピオンシップの流れも少なからず変わっていたはず……。
☆レギュレーション部門 混迷の未来規定
導入されたコクピット保護システム『ハロ』によって、第13戦ベルギーGP多重事故の被害者シャルル・ルクレールは助かったと報告したFIA。ハロの安全対策装置としての正当性をアピール、今後さらに見た目のデザインは再検討すると言う。
それはともあれ未来レギュレーション、2019年空力規制や2021年パワーユニット新規定・問題に関しては賛否両論がある。すっきり、はっきり、もっと分かりやすくできないのだろうか……。
■グダグダな戦略で自ら後退したフェラーリ
☆ピットワーク部門 フェラーリ
第17戦日本GP、予選Q3で起きた不可解な出来事。確かに一部でパラパラ雨がおちてはいたけれど、2台ともインターミディエイトタイヤの装着は“大穴”狙いのギャンブル(?)。タイムを出すことができず、すぐにふたりはピットに戻りスーパーソフトタイヤへ。しかし、ベッテルの左フロント交換作業は遅れ、予選9位に後退。崖っぷちだったフェラーリは自ら底へと……。
☆タイヤ部門 スーパーハードタイヤ
ハードタイヤが供給されたのはイギリスGP一度だけ、とうとうスーパーハードはまったく出番なし。7つのコンパウンドをカラフルに取り揃えたのはなんだったのか。2020年から23年までピレリが新たなF1公式タイヤとして4年契約することが11月25日に決定。2019年は硬いC1から柔らかいC5まで“5スペック”になるとのこと。
☆ファミリー部門 アロンソ家
めったにグランプリ観戦に来られないフェルナンド・アロンソのご両親がアブダビGPにいらっしゃった。父ホセ・ルイス・アロンソさんの前でフェルナンドの表情はレーサーではない『素顔』に。親と子はスタート前に、こみ上げる感情を抑えがまんしているようだった。家族愛に敬意を表し<ベスト・ファミリー賞>とします。