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ChouChoと佐咲紗花が『Still a long way to go』に込めた『ガールズ&パンツァー』への想い

2018年12月28日 12:02  リアルサウンド

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 アニソンシンガーとして、アニメ『ガールズ&パンツァー』の楽曲を数多く歌ってきたChouChoと佐咲紗花が再タッグを組んで、シングル『Still a long way to go』をリリース。同作には、映像作品『ガールズ&パンツァー TV&OVA 5.1ch Blu-ray Disc BOX』テーマソングで、二人がデュエットで歌う壮大なスケールの「Still a long way to go」の他、ハウスサウンドのような浮遊感と広がりを持ったChouChoのソロ曲「フロンティア」と、心地よいリズムと温かいバンドサウンドを奏でる佐咲紗花のソロ曲「春色スカイ」を収録。全曲アニメ『ガールズ&パンツァー』をテーマに制作され、同作のファンならば、胸を熱くした名シーンの数々がよみがえるだろう。(榑林史章)


(関連:ChouChoと佐咲紗花が『Still a long way to go』に込めた『ガールズ&パンツァー』への想い【写真】


■『ガルパン』ファンみんなで歌えるアンセムソング
ーーお二人のコラボは、2016年にリリースされたアニメ『ガールズ&パンツァー』(以下、ガルパン)のボーカルミニアルバム『音楽道、はじめました!』に収録の「希望の絆」以来とのこと。アニメ『ガルパン』のTVシリーズ以降、長く作品に携わっているお二人ですが、『ガルパン』は、それぞれにとってどんな作品ですか?


ChouCho:これだけの長い間、熱の冷めない作品は稀だと思います。その作品に、OPテーマ「DreamRiser」を始め、多くの楽曲で携わらせていただけているのは、本当にありがたいことです。スタッフさんの熱意も高くて、そのチームの中に居させていただけていることに喜びを感じます。


佐咲紗花:応援してくださっているみなさんはもちろん、スタッフさん、キャストのみなさんともファミリーみたいなお付き合いをさせていただけていて、「ただいま」「おかえり」と言える場所です。私は、挿入歌の「あんこう音頭」を歌わせていただいたご縁で、作品の舞台になっている茨城でラジオのレギュラー番組を持たせていただくようになり、それも4年半続いています。私の日常の中に、『ガルパン』と茨城、大洗は、深く紐付いていて、てふ(ChouChoの愛称)とは以前から仲が良かったけど、『ガルパン』を通じて一緒に乗り越えてきたことも多いので、二人の絆もより深まりました。


ChouCho:もはや大洗町は、第二の故郷みたいな感じですね。“あんこう祭り”にゲストで呼んでいただくとき以外でも、二人のプライベート旅行で、大洗にも遊びに行きました。


ーー作品が始まった当初は、これほど長い間続く作品になると?


ChouCho:TVシリーズの第1話を試写会で観たときに、「これはすごい作品だ」とすぐ気づきましたけど、OPテーマをレコーディングしているときは、まだどんな作品になるかはっきり分かっていなくて。まさか、こんなに大きな作品に成長するとは思っていなかったですね。


ーー何が魅力で、こうなったと思いますか?


ChouCho:映画館で試写を観たのですが、冒頭のシーンから音と映像のクオリティがすごく高くて、それが細部にまで行き届いていたのが印象的で、そのときに「この作品はただ者じゃないぞ」と実感しました。しかも1話の最後で、映像がどんどん引いていったら、街全体が“学園艦”という船の上だったということが分かったときは、鳥肌が立ちました。


佐咲紗花:あれは、本当に鳥肌ものだったね。あとで知れば知るほど驚くことばかりで、お店はもちろん、看板や道、それぞれの地理的なものが、すべて再現されていて「これ、本当にある場所やん!」って(笑)。作品を好きになればなるほど、その街が好きになるんです。だから何度も観返したくなるし、ストーリーを表面的になぞるだけじゃなく、細かいところまで確認したくなります。こんなに何回も観たくなる作品はなかなかないです。


ChouCho:それだけ、アニメ制作サイドのこだわりがすごいんです。


ーー当時レコーディングしたときは、どの程度まで聞いていたんですか?


佐咲紗花:てふの「DreamRiser」はOPテーマだったから、最初から細かく聞いていたんじゃない?


ChouCho:そんなにちゃんとではなくて、「女子高生と戦車のアニメです」くらいの感じだったと思う。だから試写で観たときに「こうなるのか!」とすごく驚いたし。


佐咲紗花:私が「あんこう音頭」をレコーディングしたときも、女子高生が戦車に乗ります、それくらいしか情報がない感じで。それで私は、〈アアアン アン アアアン アン〉と歌ったわけです(笑)。それに第4話の挿入歌と決定していたわけでもなくて、だいたいそのあたりで流れるということだったので、毎週「いつ流れるのか」とドキドキして観ていたんです。


ーー佐咲さんは、「あんこう音頭」の印象で、演歌歌手と思われたそうですね。


佐咲紗花:今も思われています(笑)。てふはアニソンシンガーの人、私は挿入歌を歌った演歌か民謡歌手の人、と。だから、あんこう祭りなどで『最終章』前半の主題歌「Grand Symphony」を歌うと、「アニソン歌手の方だったんだ~!」って、改めて驚かれます。でもやっぱり思うのは、『ガルパン』のファンのみなさんは、“音”を好いて大事にしてくれているということです。だからこそ、挿入歌やイメージソングの数がすごく多いし、ハイレゾスマホとコラボした商品や、『最終章』仕様のコラボヘッドフォンも出ている。こうしてまた、新たにてふと曲を作らせていただけたのも、ファンのみなさんのおかげです!!


ーーお二人がデュエットしている表題曲「Still a long way to go」は、『ガールズ&パンツァー TV&OVA 5.1ch Blu-ray Disc BOX』のテーマソングで、ChouChoさんが作曲を担当しています。ワールドカップかオリンピックでも始まりそうな、スケールの大きな曲になりましたが、どんなイメージを持って作られましたか?


ChouCho:今回のシングルを出すと決まったときに、これまで歌ってきた『ガルパン』ナンバーの、どれとも違う雰囲気の楽曲を作りたいねと話したんです。それで、みんなで歌えるアンセムソングにしよう、と。今までそういう曲は、なかったので。


佐咲紗花:それに最初からてふが、作曲をすると決まっていたわけではないんです。てふが、自分から手を挙げたんだよね。


ChouCho:そうそう。最初はコンペで決める予定だったんですけど、最近は私も作曲をやっているのでチャレンジしてみたいと思って。それで作って提出したら、「コンペをやる必要はない。この曲でいきましょう」と、決めていただきました。


佐咲紗花:デモのままリリースしてもいいんじゃないかと思ったくらい、すごく完成度が高くて。「こんなにすてきな曲を生んでくれてありがとう!」って思いました!


ChouCho:ありがとう(笑)。デュエット曲を作るのは初めての経験だから、やってみるまでは未知だったんですけど……。でも、さやっぺ(佐咲紗花の愛称)の歌声はよく知っているし、私たちは得意な音域が違っていて、さやっぺは高音域で私は中音域なので、普段自分が歌う用に作る曲では使えない、高音域まで使えるのがすごく楽しくかったです! なおかつ、どちらの声も生きるメロディにしたかったから、サビでは実際にはハモっていますけど、どっちが主メロでどっちがハモリという考えを捨てて、2本の声が同時に鳴って1本になっているイメージで作りました。実際に歌ったら想定していた以上に二人の声が溶け合っていて、これは自分でも驚きました。


■『ガルパン』尽くしで、すごく濃ゆい1枚
ーーレコーディングはどんな様子でしたか?


ChouCho:私が最初に録ったんですけど別々だったから、完成したものを聴くまでは、どうなるかワクワクしていました。


佐咲紗花:今回伸ばすところの長さや語尾を合わせるために、てふが歌ったものを聴きながら歌ったら、歌い方がてふになってしまって(笑)。ディレクターさんからトークバックで、「はい。また“てふっぺ”さんになっています」って、何度も注意されるということがありました。


ーー歌詞とタイトルは、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FOUNDの松井洋平さんです。


ChouCho:歌詞は、BOXに入るストーリーの全体を踏襲したものになっています。その後に劇場版や最終章があることも含めて、タイトルの「Still a long way to go」には、“まだまだ物語は続いていく”という意味も込められています。それにサビの頭は、英語の歌詞なんですけど、私自身もそういうイメージで作曲していたんです。松井さんとは何か事前に打ち合わせをしたわけではないのですが、曲を聴いて汲み取ってくれたんだなと思います。


佐咲紗花:歌詞が上がってくるまでの間に私は、TVシリーズとOVAを何度も繰り返し観て、大洗女子のみんなと気持ちを一つにしてから、レコーディングに臨みました。単純に担当シンガーということだけでなく、大洗女子の1人、もしくは『ガルパン』の世界に存在する1人の女子みたいな気持ちで歌わせていただきました。


ーー「Still a long way to go」は、『ガールズ&パンツァー TV&OVA 5.1ch Blu-ray Disc BOX』にも収録されていますが、5.1チャンネルで聴いてもらうことも想定して作曲を?


ChouCho:はい。バンドでしっかり演奏した上に打ち込みを重ねて、色々な楽器の音が入っているんですけど、細かいところまで聴いていただけることがわかっていたので、すごく丁寧に作りました。


佐咲紗花:トラックダウンのときも、本当に細かくこだわっていたよね。0.1デシベル以下くらいのところで、ストリングスを前に出すかギターを前に出すか、〈Oh…〉と歌っているコーラスの音量をどうするかって。


ChouCho:どの音量がいちばん気持ちいいのか、一個ずつ探りながら丁寧に調整していきました。本当にちょっとの差で、聴き心地がまったく変わってしまうんです。


佐咲紗花:私のチームも、てふのチームも、ハイレゾ音源を出しているので、こういうものは得意なほうだったと思います。


ChouCho:それに『ガルパン』と言えば音響へのこだわりが挙げられるので、テーマソングもそれに負けないものにしたいと思いました。


佐咲紗花:ギリギリですけど、2018年のうちにこの音源を残せて本当に良かったです。それくらい満足感がある制作でした。


ーー11月18日に茨城県大洗町で開催された“あんこう祭り”で、初披露されたそうですけど、そのときはいかがでしたか?


佐咲紗花:てふの歌を聴きながら引っ張られずに歌えるように、レコーディングのときに対策を講じていたので大丈夫でした(笑)。


ChouCho:レコーディングは別々だったので、初めて生で合わせたときは、やっぱり自分たちにすごく合っていて、歌っていて気持ちいいなって感じました。


佐咲紗花:前にコラボした「希望の絆」のときも、そういう話をしたよね。ソロパートは全然違うのに、サビを一緒にユニゾンで歌うと、なぜか声が溶け合うねって。


ChouCho:不思議ですけどね。今回は、その上で音域もばっちり合わせて作ったので、溶け合っている部分がより強調されていると思います。歌っている側も気持ちいいんですけど、聴いてくださった方もきっと気持ち良かったんじゃないかと思います。


ーーアンセム感も出ましたか?


佐咲紗花:お客さんも初めて聴く曲だったから、みんな聴き漏らすまいとしていて、真剣に聴き入ってくれて。


ChouCho:終わった後の握手会で、「次回は絶対一緒に歌います」とみなさんおっしゃっていました(笑)。1月5日と6日のエクストリーム爆音上映会では、きっとみなさん歌ってくださるはずです!


佐咲紗花:“『ガルパン』ファンは一つ”みたいな感じで、みんなで肩を組んで揺れながら歌ってほしいです。


ChouCho:まさに、そういう気持ちを込めました!


ーーカップリングには、それぞれのソロ曲「フロンティア」と「春色スカイ」を収録しています。1枚を通して、アンセム感とか、友情・絆というテーマが統一されていることが感じられました。


ChouCho:1枚を通したテーマが『ガルパン』なので、自然とそうなりましたね。カップリングの曲調も「Still a long way to go」同様で、どちらもこれまでとは違うイメージの曲になっています。


佐咲紗花:てふはいつも爽やかな曲が多いのですが、「フロンティア」は強めです。逆に私は、いつも強めの曲が多いので、「春色スカイ」は柔らかめに。ソロ曲もお互いに、攻めたものになっています。それも私たちの関係性があるからこそで、このシングルの中でいろいろな表情を見せようということになたんです。ソロ曲はそれぞれで作詞作曲をしているし、1枚を通してすごく濃ゆいです。


ChouCho:本当にそうだね。


ーーまずChouChoさんの「フロンティア」は、EDMでレイヴ感のあるものに。


ChouCho:私はストリングスやピアノが主軸になっている曲が圧倒的に多いので、それとはまったく違った表情を見せたいと、アレンジャーさんとも相談しながら、ライブで聴いてもらったときに、アガってもらえる曲にしたいと思いました。それにこの曲は、ゲーム『ガールズ&パンツァー ドリームタンクマッチDX』の主題歌になることも分かっていたので、“戦車道”のバトルシーンを想像してもらえることも意識しました。


■終わってほしくないけど早く観たい。『最終章』は心が葛藤
ーーそして佐咲さんの「春色スカイ」は、ChouChoさんの「フロンティア」が打ち込みなのに対して、こちらはオルガンとかアコギがサウンドの肝になっています。どこか、90年代のネオアコのような。


ChouCho:そういうちょっと懐かしさを感じるような、ノスタルジックな曲にしたいと話していたんだよね。


佐咲紗花:ただこういう曲調は、今まで作ったことがなかったので、なかなか大変でした。ただ、アレンジを菊池達也さんにお願いすることが事前に決まっていたので、そこはけっこう達也さんに寄せに行った感はありますね(笑)。


ChouCho:確かに達也さんっぽい!(笑)。
佐咲紗花:歌詞は、西住みほが大洗町にきてからの、日常のみほをイメージしました。表題曲では、試合も含めて全体を通した絆を歌っていますが、こちらは、特に“あんこうチーム”内での日常の絆に絞り込んでほしいとの要望の元に書きました。


ChouCho:本当にすごくかわいい曲で、歌い方としても、今までさやっぺが『ガルパン』で歌ってきた、「あんこう音頭」「Grand Symphony」「High-Flying Future!!」のどれとも違っていて。新しいさやっぺの歌声が聴けて、とても多彩であり、多才でもあるなと思いました。


ーータイトルを「春色スカイ」にしたのは?


佐咲紗花:西住みほが、大洗町に転校してきたのが春で、ちょっと桜がちらつく中で、まだ誰も友だちがいないところから始まったストーリーです。あのときの空の色が、みんなとの絆でどんどん変わっていったよということも伝えたくて。


ーー聴き応えがある1枚。これを聴いて、またTVシリーズやOVAを観たくなりますね。


ChouCho:はい。まったく違う3曲が収録されていますし、それをイメージして作っていますから、ぜひ観返してほしいです。


佐咲紗花:私、通常盤のTVシリーズと5.1チャンBD BOX版のTVシリーズで聴き比べをしたんです。1話ずつ入れ替えて音だけを聴き比べたら、「全然違う~!すごい!」って思いました。奥行きとか立体感が、まったく違うんです。本当にみなさんが大満足する音響になっていて。モードもいろいろあって、オーディオコメンタリーが本当に面白いし、謎のミリタリーコメントもあるし。


ChouCho:初めての方もマニアックな方も、繰り返し観ている方でも楽しめます。


ーー『ガルパン』は現在『最終章』のストーリーが進行中で、2019年6月には『最終章』の第2話が公開されます。『最終章』という部分で思うことはありますか?


ChouCho:さやっぺは、『最終章』第1話~第3話の主題歌「Grand Symphony」を作詞したときに、この先にストーリーを知らされているらしんですけど、私は知らないので、いちファンとして早く観たいです。1話は新キャラがたくさん出てきて、この先どうなるんだろう? というワクワク感のところで終わるんですよね。『ガルパン』には終わってほしくはないけど、早く次が観たくて、そこがもどかしいです。


佐咲紗花:私はストーリーを知っているからこそ、この先に待ち受けている、“あれ”とか“これ”は、映像でどう表現されるんだろうか? と楽しみです。それに「Grand Symphony」は、1話から3話の主題歌ではあるけど、6話まで観たあとに聴いても納得してもらえるようなものにしました。その上で、てふが歌うことになる4話~6話主題歌も、どんな曲になるか早く聴きたいんだけど……、それは終わりに近づくことでもあるんですよね。


ChouCho:心の葛藤がすごいです。


佐咲紗花:でも繰り返し楽しめるのが『ガルパン』だから、何度でも繰り返し観て、新しい発見をしながら次を待とうと思います。『最終章 第1話』で、さらに魅力的なキャラが増えちゃったから(笑)。


ChouCho:サメさんチームとか、みんなインパクトが強いから、この先がすごく楽しみです。


ーーでは最後に、それぞれの2019年の展望をお聞かせください。


ChouCho:私は今年、自分が作曲した楽曲を世にたくさん出すことができて、自信に繋がりました。これまで作ったことのないような曲を、もっとたくさん作りたいし、楽曲提供もしてみたいです。今回自分が作った曲を誰かに歌ってもらうことをやって、自分の中にあるものと誰かの要素が合わさった相乗効果で、自分がイメージした以上のものができ上がって、感動したし作り手としてすごく面白い経験だと思いました。もっとそういうことがやっていけたらと思います。それに2月に『ChouCho Acoustic Live“naked garden”vol.5』があるので、まずはそれを良いライブにしたいですね。


佐咲紗花:ここ2~3年、主題歌を歌った作品のキャラソンの作詞を少しやらせていただいているので、もっとたくさん作詞提供ができたらいいなと思いますね。あと、こういうコラボをしたときの化学反応の面白さを改めて知ることができました。人と制作することは、こんなに発見があって世界が広がるんだと思いました。自分の世界を突き詰めるのもそうだけど、もっといろんな人の世界を取り入れて広げていけるように頑張りたいです。それをやりつつ、2020年の10周年に向けての助走と言うか、ジャンプするまでのタメと言うか、経験値の貯金をする1年にしたいです。あとは、1月5日と6日に『エクストリーム爆音上映会』がありますし、『ガルパン』がもっともっと楽しいことをやってくれることを楽しみにしています。(榑林史章)