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11月で最も売れたiPhoneは「iPhoneXR」 しかし、iPhoneの未来には一抹の不安が……

2018年12月28日 08:41  リアルサウンド

リアルサウンド

 iPhone新機種の販売不調の噂が絶えないなか、ついにこの噂の真偽にけりをつける調査結果が公表された。とは言うものも、この噂に決着がついたとしても、iPhoneの未来を不透明なものとする暗雲が広がっているのも確かなようだ。


(参考:Google、2018年のハードウェア部門の売上は88億ドル けん引役はPixelとGoogle Home


Androidユーザの流入も増加
 Apple製品専門メディア『MacRumors』は、26日、調査会社CIRP(Consumer Intelligence Research Partnersの頭文字をとった略称)が発表したアメリカにおける11月のiPhone売上全体に対する機種別シェアを報じた。その発表によると、先月いちばん売れたのはiPhoneXRの32%であり、iPhoneXS Max、iPhoneXSと続く。先月報じられたApple幹部のiPhoneXRに関する発言は本当だったのだ。


 CIRPの共同設立者にして同社のパートナーでもあるJosh Lowitz氏は、昨年はフラッグシップモデルのiPhoneXより先に低価格モデルのiPhone8/8 Plusをリリースしたことにより、低価格モデルの「買い控え」が発生したことをAppleは教訓としたことが今回の結果につながったと指摘している。つまり、今年は先にフラッグシップモデルのiPhoneXS/XS Maxを販売して忠誠心が強いiPhoneユーザを満足させた後に、低価格モデルをリリースしたことによって買い控えを回避できた、というわけである。


 また、昨年11月にiPhoneへアップグレードしたユーザのうちでAndroid機種から流入したユーザは11%だったのに対し、今年は16%に上昇した。こうしたAndroid機種から流入したユーザは、iPhoneXRユーザとなった可能性が高い、とのこと。


下取りプログラムの効用
 iPhone新機種の販売が決して不調ではないことに関してUS版Forbesは、26日、その原因を下取りプログラムにあると論じた記事を公開した。日本でも行われる下取りプログラム「Apple GiveBeck」とは、iPhone旧機種をAppleが下取りする代わりに新機種を安く購入できるというサービスだ。こうしたサービスが、新機種購入を後押ししていることは明らかである。


 下取りプログラムの効用は、新機種購入を促進するだけに留まらない。その効用を知るには、iPhoneの旧機種は新機種より多く販売されているという事実を確認する必要がある。調査会社Counterpoint Researchが発表したレポートによると、下取り後に再度工場出荷状態に戻して販売されたiPhone旧機種が形成する市場は2017年に13%成長したのに対して、新機種のそれは3%であった。好調なiPhone旧機種販売に対して、下取りプログラムは在庫の強化に大きく貢献していると言える。


5Gに慎重で大丈夫?
 以上のようにiPhoneは新旧機種とも売れているのだからAppleは安泰かと言えば、そうは言いきれない事情がある。同社の未来に一抹の不安を感じさせる懸念事項として、5G対応が指摘できる。同社の5G対応に関しては、3日、ブルームバーグが詳しく報じている。同メディアによれば、同社は少なくとも2020年までは5G対応を保留する、と5G対応計画に関わっている匿名の関係者が述べたのだ。


 同社は、歴史的に新通信規格への対応を慎重に進めてきた。例えば3Gおよび4G時代には、これらの通信規格が導入されて1年ほど経過してから対応してきた。こうした慎重姿勢の理由は、新通信規格導入初期には通信サービス範囲が不十分なことにより、ユーザは新通信規格に対応した製品にすぐには飛びつかないと判断していたからであった。


 しかし、今度の最新通信規格である5Gとその対応製品の普及は急速に進むと予想されている。この予想をふまえたうえで、調査会社大手ガートナーのアナリストMark Hung氏は「Appleはこれまで新通信規格の対応に慎重であっても、大きな影響はありませんでした。しかし、5Gは今までよりも容易く市場に普及するでしょう。もしAppleが2020年を過ぎても5Gに対応しないようならば、私が思うに今度はAppleに大きな影響が出るでしょう」とコメントしている。


 5G対応に関しては、SamsungとLGが来年2月に開催される世界最大のスマホ見本市MWC(Mobile World Congress)で5Gスマホを発表する、という報道もある。対するAppleの5Gへの慎重姿勢が吉と出るか凶と出るかを見極めるには、しばしの時間が必要だろう。


(吉本幸記)