2018年の『NHK紅白歌合戦』に初出場することになった刀剣男士。『紅白歌合戦』の発表会には、三日月宗近役の黒羽麻璃央、小狐丸役の北園涼、石切丸役の崎山つばさ、岩融役の佐伯大地、今剣役の大平峻也、加州清光役の佐藤流司が登壇した。
12月16日に行なわれた大型ライブ『真剣乱舞祭』最終公演日の記者会見では、『紅白』には19振りで出演することを発表。この「振り」というのは、刀剣男士が擬人化された刀であるから、一人、二人ではなく、一振り、二振りと数えるためである。
■「世界で人気のジャパンカルチャー」企画で『紅白』出演。劇中キャラ「19振り」が登場
この日発表された19振りとは、三日月(黒羽)のほか、小狐丸(北園涼)、石切丸(崎山つばさ)、岩融(佐伯大地)、今剣(大平峻也)、加州清光(佐藤流司)、大和守安定(鳥越裕貴)、和泉守兼定(有澤樟太郎)、堀川国広(阪本奨悟)、蜂須賀虎徹(高橋健介)、長曽祢虎徹(伊万里有)、にっかり青江(荒木宏文)、千子村正(太田基裕)、蜻蛉切(spi)、物吉貞宗(横田龍儀)、髭切(三浦宏規)、膝丸(高野洸)、陸奥守吉行(田村心)、巴形薙刀(丘山晴己)。
この19振りが、「世界で人気のジャパンカルチャー」を特集する企画コーナー内で“刀剣乱舞~出陣!紅白歌合戦~”を歌唱するほか、演歌歌手・山内惠介の“さらせ冬の嵐”歌唱時に、刀剣男士が出演し、コラボレーションするということも発表されている。
「三日月宗近」などの役名は、すべて刀にちなんだ名前であり、今回はキャラクターとして皆出演する。刀を演じている俳優本人での出演でないというのがほかの出演者たちとの違いであり、2次元と3次元のあいだをとった2.5次元という概念そのものであるように思える。
■ゲームからミュージカル、舞台、アニメまで。設定とキャラを守りながら多彩なコンテンツに派生
そもそも『刀剣乱舞』は、2015年にゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』からスタートした。その世界は、ゲームにとどまらず、2015年にミュージカル化、2016年に舞台化され、またアニメも2種類が存在していて、それぞれに世界を展開している。
本作がこうした広がりを見せたのは、このコンテンツに流れる根本を守れば、世界はいくつ存在してもいいからである。ゲームではプレイヤーは「審神者」と呼ばれるが、この「審神者」が(通常「審神者」は姿を見せない)刀剣男士たちを本丸という場所に集めて、日々鍛錬を重ねており、時間遡行軍と呼ばれる歴史修正主義者がどこかの時代で、歴史を変えようと目論んでいることがわかったとき、最大6人の刀剣男士たちが選ばれ、その時代に向かい、歴史が改変されようとしていることを阻止する。これが、『刀剣乱舞』のすべての基本である。
この基本的な設定と、刀剣男士のキャラクターが守られていれば、どんな時代に飛んでも、どんな歴史上の人物が登場しても良い。そのため、これまでにもミュージカルや舞台で、新撰組、鎌倉幕府、関ヶ原の戦い、本能寺の変など、誰もが知る歴史の舞台に、刀剣男子たちは向かってきた。
■『紅白』に出場するのは『刀ミュ』の面々。CDシングル発売、音楽番組出演、海外公演と積み重ねて来た実績
今回、『紅白』に出演するのは、そんな多様な広がりの中でも、ミュージカル『刀剣乱舞』(通称『刀ミュ』)に出演している者たちである。彼らが、多くの2.5次元のキャラクターたちの中で、唯一『紅白』に出場するには、理由がある。
それは、『刀ミュ』が2部構成になっていることと切っても切れないだろう。『刀ミュ』は、1部は台本をもとにしたミュージカルが上演されるが、休憩をはさんだ2部では、その刀剣男士たちが、衣装を身に着けたまま、歌って踊るショーが行なわれる。
ファンは、公式に発売されたペンライトを振って応援したり、ときには刀剣男士たちが、客席に降りてきて、ファンの近くでサービスも行なう。こうした、2部での歌と踊りのパフォーマンスがあったからこそ、彼らは、ときにシングルCDをリリースするし、歌番組にも出演してきたのである。
シングルは、2016年1月1日に「刀剣男士 team三条 with加州清光」名義で『刀剣乱舞』をリリースしたほか、2017年9月27日発売の『勝利の凱歌』はオリコンシングルランキングでウィークリーの1位を、2018年5月16日発売の「刀剣男士 formation of つはもの」による『BE IN SIGHT』では、同チャート2位を記録している。そんな歴史があってこその、今回の出演なのである。
また、『刀ミュ』は、海外での人気も高い。中国でもゲームがリリースされているため、『刀ミュ』の面々は、中国・広州体育館にて大型ライブ『ミュージカル「刀剣乱舞 」~真剣乱舞祭』を行なってきた実績がある。また、2018年7月には、『阿津賀志山異聞2018 巴里』と題した作品を、フランスのパレ・デ・コングレ・ド・パリで公演している。実際に、日本での公演会場にも、海外からの観客の姿をかなり見かける。その人気は、日本にとどまらないことがわかる。
■2.5次元を代表するコンテンツとなった『刀剣乱舞』がこの年末年始にさらなる大舞台へ
現在、『刀剣乱舞』は、2.5次元を代表するコンテンツとなっている。『刀ミュ』が紅白に進出したかと思えば、舞台『刀剣乱舞』(通称『刀ステ』)のメンバーも、彼らが中心となり、実写の『映画刀剣乱舞』に出演、2019年1月18日から公開となる。『刀ミュ』も『刀ステ』も次なる一歩を歩んでいるといえるのではないだろうか。
『刀剣乱舞』を『紅白』で初めて知る人にとっては、彼らが突然出てきたように見えるかもしれないが、実は2015年にゲーム版がリリースされてからというもの、ずっと人々の話題に上り続け、その人気を不動のものにしてきた。この2.5次元を代表するコンテンツが、『紅白』や映画などのメジャーな場所でも取り上げられるようになったのが、この年末年始ということと考えるとまた面白いのではないだろうか。
(文/西森路代)