このオフ、例年に比べてシーズンオフのドライバー移籍情報が少ないスーパーGT500クラス。ほとんどのチームが前年とほぼ同じ体制で2019年シーズンを迎えるのか……と思いきや、年の瀬も迫った12月に入って、さまざまな情報が飛び交うようになってきた。3メーカーそれぞれに現状をまとめつつ、新シーズンのラインアップを推測してみた。
3メーカーのなかでもっとも動きが速かったのがニッサン陣営だ。2018年シーズンは序盤こそMOTUL AUTECH GT-Rが第2戦富士で優勝するなどしてタイトル戦線の最上位にいたが、夏場以降に不運もあって急降下。結局、ドライバーズランキングで最上位が松田次生/ロニー・クインタレッリ組の8位という、近年まれに見る厳しいシーズンとなってしまった。
そのニッサン陣営のオフの話題として避けられないのが、特別背任の疑いで逮捕されたカルロス・ゴーン前会長のニュースだ。逮捕直後から『2019年のニッサンのレース活動は大丈夫か?』との声が多く聞こえた。実際、ニスモフェスタの前後でニッサン関係者に聞いたが「逮捕はたしかにショックなニュースだったが、マイナスな部分だけではない」との声も聞こえた。
ゴーン前会長はこれまでニッサンのモータースポーツ活動には消極的で、ニスモは厳しい予算の中での戦いを強いられてきた。ホンダは栃木のHRD SakuraからのF1技術がスーパーGTにも反映されており、レクサス/トヨタ陣営でもWEC、ドイツのTMGからのなどの技術が国内にも反映されているのに対し、スーパーGTのニッサン陣営はニッサンが提携しているルノーのモータースポーツ活動、ルノーF1から技術協力があるわけでもなく、ニスモが厳しい予算の中でやり繰りしてきたという実情がある。
その中でもニスモは2014-15年に連覇を果たし、2017年シーズンもランキング2位と、チャンピオン争いに毎年加わってきていた。2018年シーズンは不本意な結果になったが、2019年のスーパーGTに関しては「開発は予定どおり進んでいますので、まったく影響はありません」と、鈴木豊ニスモ監督兼車両開発責任者がゴーン前会長の逮捕の影響を力強く否定していた。
覇権の奪回に躍起になっているニッサン陣営は新シーズンに向けてハード面の開発だけでなく、ドライバーラインアップにも大きな手を加えてきそうだ。ニスモフェスタ前後に行われたメーカーテストでは数多くの外国人ドライバー、ニッサン契約以外のドライバーが集まり、2019年シートを掛けてのオーディションが行われた。
そのオーディションに参加したドライバーの全容は把握できていないが、どうやら平手晃平、フレデリック・マコヴィッキ、ジェームス・ロシター、ルーカス・アウアーが好パフォーマンスを見せ、2019年のシートをほぼ手中にしたとも伝わっている。
その一方、これまでニッサン陣営を支えてきたジョアオ-パオロ・デ・オリベイラ、ヤン・マーデンボロー、千代勝正らの離脱の噂が流れており、組み合わせとしては23号車のニスモだけが唯一、松田/クインタレッリのコンビ継続のままで、残りの3チームはすべてシャッフルされる見込みだ。
■レクサス、ホンダ陣営は期待の若手ドライバーたちがGT500クラスデビューか
マコヴィッキは以前のホンダ在籍時よりミシュラン陣営内の評価が高く、3号車のB-MAXが有力。平手の行き先も当然、気になるところ。いずれにしても、ニッサン陣営のこれまでの血の入れ替えとも言える大がかりなラインアップ変更が濃厚で、外部からの門戸を広げたニッサン陣営の2019年の必勝態勢の本気度の高さが伺える。
2018年シーズン、惜しくもタイトルを逃してしまったレクサス陣営は、ブリヂストン陣営を中心に大きな動きはなさそうだ。その中でもサードの小林可夢偉が今年はデイトナにも参加し、WEC、スーパーフォーミュラとの掛け持ちが難しいことから2019年はスーパーGTへの参戦は見送るようで、代わって中山雄一、坪井翔、山下健太の名前が挙がっている。
また、インディ参戦でスーパーGTを離脱することになったフェリックス・ローゼンクビストの代わりとして、坪井、山下の名が挙がっており、バンドウ、サード、チーム・ルマンの3チームでシートが代わりそうだ。
2018年に見事、タイトルを獲得したホンダ陣営としては、スーパーフォーミュラにも参戦することが濃厚な福住仁嶺、牧野任祐のスーパーGT参戦が注目どころとなる。その中でもどうやら2016年のタイ選でスポット参戦ながら予選2番手、決勝2位の鮮烈なGT500デビューを果たした牧野はレギュラー参戦が濃厚のようで、スーパーフォーミュラのルーキーテストでも所属したナカジマレーシングからの参戦が噂されている。
レイブリックの山本尚貴/ジェンソン・バトンのコンビは継続濃厚で、ARTAも野尻智紀/伊沢拓也、TEAM MUGENも武藤英紀/中嶋大祐で固まっているようで、ホンダ陣営としてはナカジマ、そしてケーヒンの2チームで動きがありそうだ。新規ドライバーとしては牧野の他、大津弘樹のGT500デビューやベルトラン・バゲットのケーヒン移籍の噂が伝わっており、塚越広大、小暮卓史、松浦孝亮、ナレイン・カーティケヤンの中の誰とコンビを組むことになるのか、その動向に注目だ。
ホンダ陣営としては一時、タイヤメーカーの変更の噂も流れたが、結局、2019年シーズンの変更はなさそう。12月28日発売のオートスポーツ本誌では、さらに詳しいスーパーGT500クラスの情報とともにGT300クラス、そしてスーパーフォーミュラの最新ストーブリーグ情報にも触れているので、是非、チェックしてみてほしい。
■12月28日発売 autosport No.1497号 2019レース業界 噂の真相