2018年12月26日 10:52 弁護士ドットコム
ビジネスホテルに宿泊中、夜中に3時間ほど女性を招き入れてしまったーー。弁護士ドットコムに悩める男性からの相談が届きました。
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男性が泊まったホテルは、エレベーターで直接客室フロアまで行ける構造。フロントの前を通らないため、女性はとがめられることなく、部屋まで来られたとのことです。
男性は、チェックイン時に名前や住所を明かしているため、利用者数を偽った「詐欺罪」や「建造物侵入罪」などに問われるのではないかと不安がっています。
男性と女性との関係は定かではありませんが、ビジネスホテルでデリバリーヘルス(デリヘル)などを利用する人は一定数います。こうした利用法の法的な問題について、若林翔弁護士に聞きました。
ーー法的にはどのように考えられますか?
「ホテルの約款や利用規約の内容によって変わってきます。約款等で宿泊者以外の者の客室内への立ち入りを禁止していた場合などでは、ホテルとの宿泊契約に違反したとして損害賠償責任が生じる可能性があります」
ーー相談者は、刑事責任を問われるのではと不安がっています。
「法律上は詐欺罪が成立する可能性はあります。ただし、『ホテルの約款等に違反することを承知で、当初からデリヘルを呼ぶ意思があり、その意思を秘してホテルをだまして宿泊した場合』であることが必要です。
似たような例としては、ホテルの約款等で宿泊が禁止されている暴力団の組員であることを秘してホテルに宿泊したとして、詐欺罪で逮捕された事例があります。
しかし、デリヘルを呼んだことにより詐欺罪で逮捕されたとか、刑事事件化されたとかいった事例は聞いたことがありません。『ホテルをだます』という故意の立証はとても難しく、詐欺罪に問われる可能性は低いと思われます」
ーー「建造物侵入罪」はどうでしょうか?
「確かに、ホテル(建造物)が宿泊者以外の客室への立ち入りを禁止している場合には、建造物侵入罪が成立する可能性はあります。
男性側もそのことを分かっていてデリヘルの女性キャストに建造物侵入をさせたとのことで、共犯になることも考えられます。。
ただ、建造物侵入罪についても詐欺罪同様に警察に逮捕され、刑事事件化される可能性は低いでしょう」
ーー現実的にはどんな対応がされているのでしょう?
「客室入室前にデリヘルの女性キャストであることがわかった場合、入室を断られることもありますし、他方で、黙認されることもあります。デリヘル業者がデリヘル利用を断られるホテルかどうかを把握していることもあります。
また、インターネット上では、デリヘル利用が断られるホテルなのかどうなのかの体験がまとめられているサイトもあります」
ーー事後的にわかった場合、ホテルから追加料金を請求されることもあるようです。
「ホテルから、『シングルとツイン/ダブルの差額』などの追加料金を請求された場合は、払わなければならないでしょう。
ホテルの約款等に違反している場合、損害賠償義務が生じます。部屋代の差額分の請求であれば、損害賠償の金額としても妥当だと考えられます」
ーー最初からツインやダブルに泊まっていれば、問題ないということ?
「そうはならないでしょう。旅館業法上、ホテルは宿泊者名簿に宿泊者の氏名等を記載しなければなりません。ホテルの約款等でもその旨は定められています。すなわち、名簿に記載されていないデリヘルの女性キャストは宿泊者以外の者であると考えられます」
ーーデリヘル以外でも、「宿泊者以外の者」になりえるわけですね。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
若林 翔(わかばやし・しょう)弁護士
顧問弁護士として、風俗、キャバクラ、ホストクラブ等、ナイトビジネス経営者の健全化に助力している。日々、全国から風営法やその周辺法規についての相談が寄せられる。また、店鋪のM&A、刑事事件対応、本番強要や盗撮などの客とのトラブル対応、労働問題等の女性キャストや男性従業員とのトラブル対応等、ナイトビジネスに関わる法務に精通している。
事務所名:弁護士法人グラディアトル法律事務所
事務所URL:https://fuzoku-komon-law.jp/