2018年12月24日 10:32 弁護士ドットコム
「エスカレーターでは歩かないでください」「お急ぎの場合は階段をご利用ください」
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JR東日本は12月中旬から、東京駅で、エスカレーターで起こる転倒事故を防ぐ取り組みを本格化させた。警備員が巡回して声かけを行ったり、目立つ掲示物を使ったりして、強く利用者に呼びかけている。期間は来年2月1日まで。
12月下旬の午前中、利用客でごった返す東京駅構内の中央線ホームにつながるエスカレーターでは、警備員が「歩かずに手すりにつかまってお乗りください」などと、利用客に声かけをしていた。
ただ、呼びかけを無視して駆け上がる人も一部にいた。あるベテラン警備員は「急ぎたい気持ちはわかるけど、ケガをしたり、させたりしてからでは遅い。東京五輪までに少しでも改善してくれたらいいのに」と話した。
報道によると、JR東日本の駅に設置されているエスカレーターでは2017年度、転倒などの事故が約180件あったという。過去には転落して亡くなる酔客が出たほか、転んだ際にマフラーが巻き込まれ首に巻きつき、死亡者が出たこともあった。
エスカレーターで歩かない人は片側(主に東日本は左側)に寄り、歩く人は空いている方をどんどん進んでいくという状態はもはや慣習化しており、「歩かないで」という呼びかけに応じてもらうのは簡単ではない。
とはいえ、設備を管理する鉄道会社として注意喚起をしないわけにはいかない。エスカレーターを安全に利用させるために鉄道会社が負っている法的義務はどのようなものか。鉄道問題に詳しい岡田一毅弁護士に聞いた。
「エスカレーター上を走ったり、歩いたりすることは利用法としては誤っていますので、そのために事故が発生した場合は、走ったり歩いたりした利用者の責任となります。原則として、鉄道会社は責任を負わないと考えて良いと思います。
ただ、歩いたり走ったりしてはいけないという注意喚起をしていない状態であれば、鉄道会社がエスカレーター設備の利用について、十分に説明をしていないということになります。
鉄道会社は利用者と運送契約を締結しており、その際、安全に配慮する付随義務が認められます。ですから、設備の利用についての説明不足として、安全配慮義務違反として損害賠償をしなければいけない可能性があります」
どこまでが、鉄道会社の責任になるのだろうか。
「一般的にエスカレーターの歩行は禁止されているところから、利用者も応分の過失が認められ、損害の全額を鉄道会社が負担することはないと考えられます。
ですから、利用者としては、エスカレーターを歩かないで利用すべきですし、鉄道会社としても十分アナウンスすべきです。できれば注意喚起ではなく、禁止ということを掲示すべきではないでしょうか」
岡田弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
岡田 一毅(おかだ・かずき)弁護士
2013年度京都弁護士会副会長。交通事故などの交通法務に詳しく、大手損保会社の顧問弁護士も勤める。また医療法人の顧問弁護士など、医事法務についても手がけている。大の鉄道好きでもある。
事務所名:奥村・岡田総合法律事務所
事務所URL:http://www.okadalaw.com/