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岡田健史の瞳に宿るスター性 『中学聖日記』中学生から社会人までの“成長”を振り返る

2018年12月24日 09:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 まさに彗星のごとく、俳優界に現れたルーキー・岡田健史。『中学聖日記』(TBS系)で役者デビューを果たし、ドラマ最終回後に開設された公式Instagramのフォロワー数は50万人を突破(12月23日現在)。岡田が扮した「黒岩くんロス」を嘆く声が、SNSに上がる日々が続いている。


【写真】中学生から23歳までの黒岩晶


 岡田のデビューは、何もかもが異例だった。主演・有村架純の相手役である男子中学生を演じると発表されたのは、今年8月。演技未経験であること程度しか公にされておらず、ドラマ開始前の番宣出演も一切なし。何もかもが謎に包まれ、「結局、岡田健史って誰なんだ?」と誰もが期待と不安を胸に初回を迎えたのである。


 だが、第1話から彼はやってくれた。整った顔立ちに抜群のスタイル、澄んだ瞳に滲み出る純粋さで、一瞬にして視聴者を魅了。校舎2階にいる聖(有村)を見上げ、「僕、先生のこと好きになっちゃいました。好きになっちゃいました」と叫んだどストレートな告白に込み上げた、なんとも言えないむず痒い感情を皮切りに、たくさんの人たちが禁断のラブストーリーにのめり込むこととなった。


 視聴者がここまで物語に引き込まれた理由は、“黒岩晶”と“岡田健史”のリンクにあるだろう。芝居経験のない岡田の演技に対する実直な姿勢と初々しさは、聖をまっすぐに思う幼い晶と重なり、そこに感じる“危うさ”に、視聴者は心を揺さぶられることになる。また、未熟さと大人っぽさを持つ岡田だからこそ生まれた、多くの“振り幅”がもたらした効果も大きい。


 たとえば第1話で「好きです」と気持ちを伝えた聖に「ありがとう」と返され、意味が理解できずにキョロキョロと視線を動かす姿や、勉強合宿先で暴行を働き、聖に「帰りなさい」と制された時に見せた子犬のようなキョトン顔は、愛らしさの極み。第4話の海辺のキスシーンでこぼした「もう一回いいですか?」と2度目のキスをねだるセリフにも、未だ残る幼さにときめきをもたらした。


 かたや、ふいに見せる男っぷりはズルさの極み。なかでも晶の男気が爆発した場面といえば、なんといっても第9話の暴風雨での一幕である。行方不明になった聖を見つけた晶が放った「なんで連絡しないんだよ。心配させんなよ」という突然のタメ口に、SNSは一斉にザワザワ。着実に大人の階段をのぼる晶から漏れる男っぽさに、ティーンエイジャーからお姉さま方まで、見事なまでに心を射ぬかれた。


 しかも、このときめきはまだまだ終わらない。直後に敬語に戻ることで、理性よりも感情が上回って出た言葉であったことが伝わり、一層女子の心を締め付けることに。ここから畳みかけるように続く、山小屋シーン。「俺だって、男ですよ」というパワーワードを繰り出し、晶への恋心を認めた聖を抱き寄せてキス……この時見せたのは、聖の首元に手を添えるといった大人な振る舞いで、これまでのキスとのギャップにもドキドキさせられるのだった。


 また岡田の振り幅という意味では、デビュー作にして、学ラン姿の中学生に始まり、スーツに身を包んだ社会人までを演じたという点も、称賛すべきであろう。中学生らしい猪突猛進な男子から、少し成長するも、やはり自分の感情を抑えることができない高校生、そしてエンディングで見せた、余裕のある温かな微笑みを浮かべる社会人姿。19歳の岡田が中学生役を演じることに対して様々な意見が飛び交ったのも事実だが、そのすべてを吹き飛ばすほど爽やかな結末となった。


 お手並み拝見とばかりに彼と向き合った視聴者は多かったはずだが、気づけば多くが岡田の虜と化した。もちろん、作品と岡田の相性の良さもあるが、やはり岡田自身が持つスター性によるところが大きいだろう。しかもそのスター性は、ギラギラとしたものではなく、品よく、そこに佇んでいる。一方で、筆者がインタビューした際、彼を前にして感じた芯の通った人としての強さも、本作を通じて全国へと伝わったはずだ。


 男くささと艶っぽさは、相対するものとも思えるが、それをバランスよく兼ね備える岡田。“守ってほしいし、守りたい”ーー女子が一番好きな感情を、いとも簡単に引き出す彼のポテンシャルには感嘆するばかり。さらに、良い意味で今時らしくない昭和っぽさは、若い世代のみならず、幅広い層から好評である。今後は、王道の胸キュン作品への出演となるのか、はたまた社会派作品となるのか。ドラマなのか、映画なのか、はたまた舞台なのか。可能性は、無限に、目映く広がっている。


(nakamura omame)