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加藤シゲアキ、異色の金田一耕助となるか 平成最後の『犬神家の一族』への期待

2018年12月24日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 クリスマスイブの12月24日、「平成最後の金田一耕助」と題し、金田一耕助シリーズ不朽の名作『犬神家の一族』がフジテレビで放送される。名だたる名優陣が演じてきた「金田一耕助」を演じるのは、フジテレビ系ゴールデン帯ドラマ初主演となる加藤シゲアキ。加藤はフジテレビ系単発ドラマで主演を務めるのも初となる。


 横溝正史原作の「金田一耕助」シリーズは、日本探偵小説史において金字塔を打ち建てたシリーズであり、日本映像史においても名を馳せる名作だ。人間の心の奥深くを覗き込み、人間の業の深さを感じさせられるような心情描写や激動のストーリー展開に惹き込まれる読者・視聴者も少なくない。そんな横溝作品の中でも史上最高のミステリーとの呼び声高いのが『犬神家の一族』である。


 昭和22年、那須湖畔の本宅で一代で莫大な財産を築いた犬神佐兵衛(里見浩太朗)が他界する。彼の残した遺言書には、遺産の配当や事業相続者が記されているようだったが、長女・松子(黒木瞳)の一人息子・佐清(賀来賢人)が戦地から復員してから遺言書が発表されることになっている。佐兵衛は生涯に渡って正妻を持っていなかった。それぞれ母親の違う娘が3人、みな婿養子をとり、それぞれに息子が1人ずついたのだが、互いに対立し合っていた。


 数カ月後、「犬神家で近々、血みどろの事件が起きるのでそれを防いでほしい」との手紙を受け取った金田一耕助(加藤シゲアキ)が、犬神家の本宅のある那須湖畔を訪れる。ビルマの戦地で顔に大怪我を負い、ゴムマスク姿で佐清が帰ってきたため、金田一は犬神家の遺産相続に立ち会うことになるのだが、そこから犬神家に凄惨な事件が巻き起こる。


 今作の見どころは、何と言っても加藤がいかに「金田一耕助」を演じるかだろう。


 これまで、映画・ドラマ、オリジナルドラマ作品合わせて、歴代で28名もの俳優が金田一耕助を演じてきた。映画では、石坂浩二(第7代)、渥美清(第8代)、西田敏行(第9代)。石坂は1976年に公開された『犬神家の一族』からシリーズ作品に続けて参加している。映画『男はつらいよ』で寅さんを演じた渥美は素朴さを感じさせる金田一耕助を演じた。コメディ作品に数多く出演する西田は温和でチャーミングな金田一耕助を演じている。ドラマでは、ドラマシリーズ出演後、映画作品にも出演することになる古谷一行のほか、はまり役として評価の高かった稲垣吾郎、長谷川博己、ネット上「シュール」「汚なかわいい」と評された池松壮亮などが印象的だ。


 そんな名だたる俳優陣が演じた金田一耕助に大抜擢された加藤。予告編を見る限り、近作『ゼロ 一攫千金ゲーム』(日本テレビ系)で演じた宇海零のような、純朴で正義感の強い青年といった印象を抱く。しかし歴代の金田一耕助のように、ボサボサの髪、ヨレヨレの服といった外見の特徴はしっかりと踏襲されており、少し肌の汚れた印象のある加藤の姿には思わずワクワクしてしまう。原作で評される金田一耕助は、スズメの巣のようなボサボサの蓬髪と人懐っこい笑顔が特徴だと言われている。人懐っこい笑顔という特徴に対しては、歴代の金田一役者たちと比べても、加藤は一際ハマり役なのではないだろうか。“ポンコツさ”と“鋭さ”、相反するものを持つのが金田一の特徴なだけに、加藤がそのギャップをどう生み出せるか注目だ。


 また、犬神家で互いに対立し合う三姉妹を演じる女優陣にも注目したい。長女・松子を演じる黒木瞳、次女・竹子を演じる松田美由紀、三女・梅子を演じるりょう。いかなる時も凛とした姿勢を崩さない松子、喜怒哀楽をストレートに表現する性格の竹子、歳は若いがもっとも狡猾に遺産を狙う梅子、三姉妹それぞれに特徴的な性格がある。その特徴を体現でき、美しい三姉妹からそれぞれの凄みを感じさせる女優陣が揃ったことで、犬神家の遺産相続をめぐる怨憎劇のスリリングさを、放送開始前から感じとることができる。公式サイトにて、松子演じる黒木は「松子にとって、息子への愛情はとても純粋なものです。純粋だからこその狂気に挑戦します」とコメントしている。


 クリスマスイブという聖なる夜に、凄惨な事件を描く『犬神家の一族』が放映されることはなんともユニークだが、それだけ今作が”ジャパニーズホラーミステリー”を代表する屈指の名作だということだろう。(文=片山香帆)