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『有吉ぃぃeeeee!』プロデューサーが語る“eスポーツ×バラエティの可能性”「『友達の家で遊んでる感覚』が一番楽しい」

2018年12月23日 12:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 10月28日よりスタートしたバラエティ番組 『有吉ぃぃeeeee!そうだ!今からお前んチでゲームしない?』(テレビ東京系)が面白い。


 同番組は、芸能界きってのゲーマー・有吉弘行が、タカアンドトシ、アンガールズの田中卓志らと共に毎回様々なタレントの自宅を訪れ、eスポーツゲームで対戦するというもの。だが、それだけでは終わらない魅力があるのは、ゲーム番組とバラエティ番組の両軸で視聴者を楽しませつつ、演者たちのゲームの腕前も成長し続け、さらにはプレイ動画をTwitchやYouTubeで公開するという、かつてない形の番組となっているからだ。


 番組の仕掛け人であるプロデューサー・平山大吾氏は、『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』なども手がけるヒットメーカー。彼はなぜeスポーツに着目し、有吉をメインMCとしたゲームバラエティを立ち上げるに至ったのだろうか。同氏を直撃し、立ち上げの経緯からMC陣の成長、今後のビジョンまでを聞いた。(編集部)


(参考:有吉弘行、『マリオテニス エース』でタカトシ・タカの美技に驚愕 「全国大会行けるんじゃない!?」


「“友達や兄弟の背中越しに見る”ような感覚が理想」


ーー有吉さんは以前から、ラジオ等で「こんなにゲームが好きなのに、なぜゲーム番組から声がかからないんだ」という趣旨の発言をしていました。『有吉ぃぃeeeee!』の番組立ち上げについては、そういうことも念頭にあったのでしょうか?


平山:確かに、『勇者ああああ』がスタートした頃からおっしゃっていましたね(笑)。ただ、そもそもは「プライムタイムでeスポーツの番組をやろう」というのがスタート地点でした。日本のゲーム人口は、2017年の統計で4900万人を超えるというデータもありますが、しかしeスポーツをやっているのは100万人くらい。競技性の高い対戦ゲームをプレイした経験があれば見方もわかるのですが、やっていないと何が起こっているのかよくわからないですよね。そんななかで、コアな100万人の周りにいる4800万人の人たちが、eスポーツに興味を持つようになるといいな、と。そうすると、日本のeスポーツ全体が大きく底上げされて、世界一を目指せるようになるはずだと思いましたし、かつてゲーム大国と言われた日本ですから、そういうことが可能じゃないかと考えたんです。


ーーeスポーツへの熱い思いありきだったんですね。そこで、有吉さんの起用を考えた決め手は、どこにあったのでしょうか。


平山:視聴者を外側からeスポーツに巻き込んでいけるような番組にしたい、というコンセプトから、やっぱりこの人しかいないだろう、という感覚でしたね。とにかくゲームに対する熱量、ゲーム愛がすごくて、僕らの中では、芸能界随一のゲーマーだと思っていますから。もちろん、超多忙ですし、「こんな番組ができたら奇跡だよな」くらいの感じで、ダメもとでオファーしたら、快諾していただいて。やっぱり「eスポーツ」というテーマに引っかかった、とおっしゃっていました。


ーーなるほど。ただ、有吉さんには「対戦ゲーム」というイメージがなく、その点が新鮮でした。


平山:そうですよね。有吉さん本人も全然やってこなかったけれど、やっぱり気になっていると。上手くならないけど、上手くなりたいという思いはある、という感じで。とにもかくにも、有吉さんを主軸に番組を作れれば、センスとしても一流だし、そんな人がゲームをやるんだということで興味を持ってもらえたり、かっこいいとか、面白いと思ってもらえるじゃないかと。そういう存在感があるのは有吉さんしか思いつきませんし、本当に出てくれてありがたいです。


ーーおっしゃるように「eスポーツ」というと敷居が高く感じますが、友達の家に行って対戦する、という番組の構成が、より親しみやすいものとして伝えてくれますね。大きな会場でバチバチに戦うものだけではなく、友達とワイワイ遊ぶのも、eスポーツなんだと。


平山:そこは意識していますね。「ゲームを見る」ということを考えると、きっと誰もが、友達や兄弟の背中越しに見る、というのが原体験じゃないですか。番組でも、そうやって見ていただくのが一番だろうと思うんです。テレビでゲームをやると、どうしても、プレイヤーを正面から捉えて、ゲーム画面は別に出して……という不自然さがあって。ショーアップされたものだったり、大会の会場だったりすればまた別なのですが、そうすると、「ゲームを一緒に楽しんでいる」という共体験が生まれづらくなってしまうんじゃないかと。


ーーなるほど。だからこそ、ゲームに触れるまでのバラエティーパートというか、友人たちと楽しく盛り上がる部分もしっかり見せているんですね。


平山:そうですね。『PUBG』(人気バトルロワイヤルゲームの『PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS』)のようにわかりやすいゲームだったらいいのですが、ただ単にeスポーツ自体をパッと見せて、プレイしてみましょう、ではついていけない人も多いはずで。限られた時間でそのタイトルの遊び方や楽しさを完全に伝えるのは不可能ですから、それなら「よくわからないけど、友達の家で遊んでいる」感覚というか、ああでもない、こうでもないと言いながらやっている環境を作るのが、見ていて一番楽しいんじゃないかと思うんです。


ーー確かに、スーパープレイを見るのも楽しいですが、「僕らでもできるかな」というプレイを見ている方が身近に感じられますね。とはいえ、アンガールズの田中卓志さんなどはいつも、かなり練習してきていて、ガチでプレイすることの楽しさも伝えていますが。


平山:田中さんは忙しい中で、本当に30時間とかプレイして来ますからね(笑)。なぜこんなことになったかと言うと、この番組をスタートするにあたって、有吉さんに「まったくのズブで現場に来るか、やり込んで来るか、どちらがいいですか?」と聞いたら、「本気でやりましょう」と即答されて。それを田中さんに伝えたら……という感じだったんです。面白いのは、「君らは違うかもしれないけれど、僕は終わった後もやっているからね」って言うんですよ(笑)。


ーーそうした田中さんの真面目さが、「eスポーツ」の本来的な魅力を伝えていますね。番組が終わった後もプレイしているということは、やり込む中で、そのゲームの楽しさをしっかり発見している、ということで。


平山:そうなんですよ。田中さんをはじめ、12月16日放送の『マリオテニス エース』回では、タカアンドトシのタカさんが500試合くらいプレイして来ていて、切磋琢磨している感じも素晴らしくて。空き時間でも、「年末年始でちょっと時間が空くから、やり込めるね」みたいな話をしてたり、どこでもMCを張れる芸人さんたちが、テレビ東京のゲーム番組にそこまで本気になってくれているのが、本当にありがたい限りです。


ーー時給がどんどん下がっていきますね(笑)。有吉さんのツイッターを見ていても、この番組には特別な思い入れがあることが伝わってきます。例えば、有吉さんからゲームタイトルやゲストの提案があったりもするのでしょうか?


平山:それはないですね。その辺りはあくまで制作サイドに任せてくれていて、得意じゃないゲームでも楽しんでくれています。例えば、『ぷよぷよ』なんかは難しかったと言っていましたね。ただ、難しいゲームでも、僕らとしては視聴者の方々に教えてもらいながら、育成ゲームのように少しずつ、出演陣が上手くなっていく様子を見てもらうのが理想だなと思うんです。「有吉さんが上手くなったの、俺のおかげだよ?」なんて言えるの、楽しいじゃないですか。


ーータイトルが発表されると、ポイントを教えてくれる人がいますね。


平山:そうですね。それをもう少し見える形にして、ラジオみたいに、参考になったアドバイスには番組ステッカーを……みたいなこともできたら面白そうですね。オンラインで対戦してくれたプレイヤーが試合の内容を拡散してくれるのも楽しいですし、僕らが考えた範疇を飛び越えて広がっていくといいなと思っています。


「田中さんの生配信、見てみたくありませんか?」


ーー友達同士が集まっている部屋で閉じるのではなく、そこから大きな広がりが生まれるのは、オンライン対戦ならではです。


平山:そうなんです。家にいながら、世界中の人と戦い、遊べるという環境ができていて、部屋の外に広がっていく無限の可能性がある、という気づきがあればいいなと思います。そこに筋書きはなくて、初回放送みたいに、「猛者にボコボコにされるだろう」と思っていたら勝ってしまう、みたいなドラマも生まれますしね。見えない相手を想像するのも楽しくて、この間は「山根」というプレイヤーネームの方が入って来られて、田中さんが燃えていました(笑)。


ーーテレビ東京の『勇者ああああ』も含め、ゲームを軸にしたバラエティ番組が増えていますが、芸人さんとゲームというカルチャーの相性の良さも感じていますか?


平山:そうですね。いまは芸能事務所さんが本気でゲームに取り組んでいますし、そのうち、とんでもないゲーム実況者が生まれると思いますよ。芸人が本気でゲームをやって、もともとのしゃべりのスキルを活かして実況を始めたら、すごいでしょう? 『ゲームセンターCX』の有野課長は別格ですが、また違ったかたちで、大きな話題をつくる人が出てくるはずです。


 例えば、トシさんなんか、ゲームがすごく上手いわけではないんですけど、チャチャの入れ方が抜群なんですよね。「そこ行く~?」みたいな。プレイしている側は、本当に心地いいはずですよ。もちろん個々人でも面白いですが、集まったときのクロストークはすごいです。それが、ゲームの楽しさを増幅してくれるんですよね。


ーー「広がり」という話について言えば、YouTubeやTwitchという外部の配信プラットフォームと連携したり、ツイッターで対戦募集をしたり、というのも、在京キー局の取り組みとして画期的なことだと思います。


平山:もっと大きい声で言っていただきたいことです(笑)。けっこうラフな感じでやっていますし、12月23日放送の『マリオパーティー』回では、田中さんがムキになって戦っていた相手が実は小学一年生だった、という面白い展開がありました(笑)。チャレンジングなことができるのはテレビ東京ならでは、という部分もあると思いますし、ゆくゆくは、レギュラー陣にそれぞれチャンネルを持ってもらって、生配信で視聴者の方からいろいろ教えてもらう……みたいなこともできたら最高だなと。もしできればですが、田中さんの生配信、見てみたくありませんか?


ーーめちゃくちゃ面白そうですね(笑)。そのあたりも淡く期待させていただくとして、世界的な流れからしても、「eスポーツ」は一過性のブームには終わらなそうな気配です。今後の可能性をどう捉え、どうコミットしていこうと考えていますか。


平山:難しいところですが、おそらく3年後には、まったく違うものになっている気がします。ゲームもどんどん進化するし、オンラインで戦うことは日常的になってくるだろうと。個人がもっと世界とダイレクトにつながれるようになるし、日本だけでは収まらず、たぶん、「ゲーム」という枠すら超えた広がりがどんどん生まれてくると思うんです。だから、まずは目の前にあるeスポーツ、対戦ゲームにしっかり足をつけておいて、いろんな可能性の広がりに備えたいですね。


ーー『有吉ぃぃeeeee!』で培われたノウハウが、ゲーム以外のコンテンツにも使えるようになったりするかもしれませんね。


平山:そんな気がしますし、世の中的にはそうなっていくだろうと。


ーー最後に、番組は今後どういう展開を迎えるのでしょうか。


平山:まずは直近の『マリオパーティー』、そして1月6日の『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』と、任天堂さんの人気タイトルを、有吉さんをはじめとする人気芸人・タレントのみなさんがどうプレイするか、楽しみにしていただきたいです。ちなみに、『スマブラ』のロケは発売の3日後で、出演者もスタッフも、どこまでやり込めるかが勝負でした。田中さんが限られた時間でどれだけやり込んでくるかにもご注目ください(笑)。


(橋川良寛)