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DJ泡沫が選ぶ、2018年K-POP年間ベスト10 ジョンヒョン、iKON、BTS…韓国音楽業界振り返る

2018年12月23日 10:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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・ジョンヒョン『Poet | Artist』
・iKON『Return』
・NCT『2018Emphathy』
・PENTAGON『Positive』
・G(I)-DLE『I am』
・BTS(防弾少年団)『Love Yourself:轉Tear』
・Shaun『Take』
・BLACKPINK『Square Up』
・MONSTA X『Are You There?』
・IZ*ONE『Color*Iz』


 今回はリパッケージは除外し、2018年の韓国音楽業界を振り返ることが出来そうな10枚を選出した。


 昨年12月にSHINeeのメンバー、ジョンヒョンが亡くなったという出来事は、アイドルファンのみならず世界的に衝撃をもたらした。1月にリリースされた遺作『Poet|Artist』は、華やかなアイドルとしての姿と繊細なクリエイターとしての内面を同時に内包している。日本よりもさらに一般社会やファンの目にさらされる機会が多く、韓国の規範に沿った模範的態度を社会的に強く要求される韓国アイドルのストレスフルな環境やメンタルヘルスの問題は以前より一部で指摘されてはいるが、以降も彼らをとりまく環境に具体的な変化は起きていない。それでもMV収録まで終了し後はリリースされるだけだったギリギリまで仕事を全うしたアルバムの中のジョンヒョンの姿は、今も変わらず輝いている。


(関連:BTS(防弾少年団)が混沌の時代の勝者に Spotify年間ランキングが示す世界と日本のトレンドの違い


 韓国の音楽消費はすでに音源ストリーミングが主体で一般的ヒット曲は音源チャートというのは欧米諸国と同様だが、さらに99%アイドルのアルバムのみで占められるCD音盤のチャートが存在することが韓国の音楽事情を特殊なものにしているようだ。ファンドム内でビジネスが成り立つようになった近年、ファン人気が主体の男子グループはトップグループですら「一般人にも知られるヒット曲」を生むことは困難になってきた。しかし、今年それを成し遂げたのがiKON「Love Scenario」だ。普遍的なメロディと切なくもポジティブな歌詞で上半期No.1ヒットを記録したこの曲のリスナーは幼年層にまで広がり、様々なメディアでヒット要因が解説されるなど社会的現象にまでなった。


 米国ビルボード200で1位を獲得したBTS『Love Yourself:轉Tear』は特にK-POPファンドム外からは驚きを持って受け止められていたが、デビュー後からアイドルとしてやるべき全てにことを地道に積み上げてきた結果に、他国のファンと繋がり拡大したアメリカ国内ファンの後押しが大きく結実した印象だ。LYSシリーズは海外クリエイターの参加が増え、結果的に独自のクリエイションよりは「現代の一般的なK-POPの創作スタイル」に近づいているが、「ファンの熱意がチャートや賞に直接影響を与えられるようになった」と言われるSNSとストリーミングの時代に世界中のファンドムを繋げた力は大きい。


 K-POPが米国でより明確に認知されつつある時期にリリースされたBLACKPINKの初EP『Square Up』とタイトル曲の「DDU-DU DDU-DU」はKPOP女子グループとしてビルボード最高位にランクインした。韓国内で過去強いswagの効いたヒップホップトラックで成功を収めた女子グループは同じYG所属の2NE1のみだったが、フェミニン寄りな「PINK」イメージから大胆に「BLACK」の方へ振り切ったことでさらにブレイクしたようだ。YouTubeの「DDU-DU DDU-DU」MV照会数はBTS「FAKE LOVE」の約2倍の速度で3.5億回を突破しており、12月現在5.4億回と2018年リリースのK-POP MVの中で最多だ。今後の世界的展開が期待される。


 SMエンターテインメントの新しい試みから生まれたNCTはメンバーを固定しない流動性故にファンドムが固まりにくい弱点があったが、2018年度は18人の固定メンバーを「NCT 2018」とし、この中で様々なユニット活動を展開した。『NCT 2018 Emphathy』は現在のSMエンタの楽曲の最新の多様性も確認できる1枚。アメリカ人とカナダ人メンバーを含むユニット・NCT 127はその後アメリカでもプロモーション展開し、ビルボード200に初ランクインした。


 PENTAGON「Shine」はオノマトペのようなコーラスとブラスを生かした爽やかな楽曲に捻った歌詞でリリース後に注目されチャートを逆走、ビルボード今年の100曲にも選ばれた。アルバムタイトルの通り”Positive”な展開だったが、ブレイクしそうなタイミングでのメンバー・イドンと同事務所の先輩アーティスト、ヒョナの熱愛発表がファンの反発を受け、結果的に10人のPENTAGONでは最期のアルバムになった。


 アイドル以外で話題になったのはサマソニにも出演したThe KOXX所属でEXOやf(x)等の楽曲にも携わったDJ・Shaunの「Way Back Home」だ。夏にぴったりの心地良いムンバートンソングで、InstagramやFacebookでライブ映像が拡散されて急上昇、7月の月間チャート1位になった。しかしファンドムもTV出演もなくバイラルのみで同時期に新曲をリリースしたTWICEを抜いて1位になったことで、音源買い占め疑惑の目を向けられた。1月と4月にもLIMEZというマーケティング会社所属のアーティスト、ジャンドクチョルとniloが同様の流れで1位になったことで、やはりアイドルファンを中心に疑惑が提唱されたものの、うやむやになっており、その煽りを受けた形とも言えるだろう。


 今年ブレイクの兆しを見せたのがG(I)-DLEとMONSTA X、そしてIZ*ONEだろう。G(I)-DLEはリーダーのソヨンが作詞作曲やメンバーの譜割りも自ら行う等、楽曲制作に直接関わっている。「自作ドル」は男子ではもはや珍しくないが女子では貴重な存在で、デビュー曲の「LATATA」で早くも音楽番組1位を獲得し新たな女子グループ像として注目されている。MONSTA Xの「Shoot Out」は彼らならではの肉体性のある力強さとK-POPならではの耳に残るサビをイントロに置くという、クラシックと新しさの融合したパフォーマンスで一躍HOTな存在になった。過去の各タイトル曲の持つ豪快さ・繊細さそして官能性、さらに日本リリース楽曲の韓国語バージョンなどが含まれた彼らの歴史を綴ったようなアルバムにもなっている。下半期日本でも話題になった日韓合同サバイバルオーディション番組『PRODUCE 48』からデビューしたIZ*ONEのデビュー曲は、12人という大所帯ならではのダイナミックさを生かした美しいパフォーマンスが印象に残った。秋元康作詞の日本語曲も含まれたデビューアルバムは、K-POPらしさの定型ではないこのグループの多様な可能性を伺わせる新鮮さがある。(DJ泡沫)