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ブラッドリー・クーパーが明かす、監督挑戦への本音 「恐怖を抱いて躊躇してしまっていた」

2018年12月20日 15:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 映画『アリー/ スター誕生』が12月21日から公開される。何度もリメイクされてきた1937年の名作『スタア誕生』を基にした本作は、 レディー・ガガが映画初主演を務め、ブラッドリー・クーパーが主演・監督・製作・脚本を担当したミュージカル・ドラマ。夢を諦めかけてた女性アリー(ガガ)が、有名ミュージシャンのジャクソン(クーパー)に出会ったことにより人生を大きく変えていくというストーリーだ。


 今回リアルサウンド映画部では、本作で監督デビューを果たしたクーパーにインタビュー。ガガとの共演や、本作の監督をする予定だった師匠的存在のクリント・イーストウッドからの影響などを語ってもらった。(取材・文=阿部桜子)


ーー役者としてキャリアを積んできたあなたと、世界的歌姫であるガガのコラボレーションは新鮮でした。


ブラッドリー・クーパー(以下、クーパー):最初からアリー役には、役者だけしかやっていない人は考えていなかった。ミュージシャンとしても活動している人だと、選べる人が少なくなってくるんだけど、僕は最初からガガにお願いしたいと思っていたんだ。参加が決まってからは作品に欠かせない人物になったし、資質を引き出せるようにキャラクターも彼女に合わせて作っていった。


ーーガガがあなたに与えたもの、そしてあなたがガガに与えたものは?


クーパー:ガガは僕に音楽的な部分を与えてくれた。僕のことをすごく信じてくれて、世界最高峰の歌手である彼女が一緒にステージで歌ってくれることで、自信を持つことができたよ。その一方で、ガガにとってはこれが映画初主演となるわけだけど、監督として共演者として、自分の全てを安心して出せるようにするのが僕の使命だった。「どんなことをやってもいい。恥ずかしい思いなんてさせない。守るから」と感じてもらえることが大切だったよ。言い換えるならば、お互いがお互いの安全網だったね。


ーー俳優だけでなく、声優、監督、脚本、作曲など様々なことに挑戦するあなたは、この作品が持つ、夢を追うことや、挑戦を恐れないことのメッセージを実現していますよね。


クーパー:ステファニー(ガガ)と僕は、今回今までにやったことがないことに挑戦したから本当にその通りだね。脚本を書いている時の喜びの1つは、新しいチャレンジと向き合っている自分が、まさに聞きたい言葉をジャクソンが語りかけていたことなんだ。僕も作り手として彼の言葉を聞いていたよ。自分の夢を人に言うのは怖いことでもあるし、恥ずかしい思いをするかもしれない。それでも人生において夢を叶えることほど、達成したっていう気持ちになれることはないと思う。僕も経験をさらに積んでいきたいし、君がそうやって感じてくれたことが僕の挑戦を受ける勇気に繋がるんだ。


ーー長い俳優生活ですが、いつから監督を志していたのですか?


クーパー:監督として物語を綴りたいと思ったのは、役者を始めたのと同時期だったと思う。なぜ今までやってこなかったかというと、自分が伝えたいことやビジョンを示すことへの責任や、脆さをさらけ出すことに恐怖を抱いて躊躇してしまっていたからなんだ。でも今の僕は、ジャクソンが劇中でも言うように、人生としてもキャリアの中でも、自分の言いたいことを伝える方法を見つけた。だからリスクを背負って飛び込んでみようと思ったんだ。


ーー初監督を務めて新たな発見はありましたか?


クーパー:多くの発見があったよ。20年間役者をやってきたけど、僕は自由のある環境が一番いい演技ができると思っているんだ。だから、他の役者たちにも同じような場所を用意してあげたいと思った。自由な環境だと全てをさらけ出すリスクがあるけれど、安心感や発言権が持てるからね。


ーー監督を経験して、自分の演技に変化は?


クーパー:役作りも努力を重ねたし、冷静に自分の演技の良し悪しを考えられることができた。僕にとってはとても楽な作業だったよ。編集している時も、「自分が出ているから写りが良くない」と思うことは一切なくて、ストーリーに対してキャラクターの造形が誠実であるかを大切にした。自分のパフォーマンスというよりは、他人を編集している感覚だったね。


ーークリント・イーストウッドから本作の監督を引き継ぎましたが、劇中どこかイーストウッドっぽさを感じさせるところもありました。


クーパー:役者としても監督としても、大きな影響を与えてくれた人だ。特に毎日の撮影現場を作っていく過程には、すごくインスピレーションを受けた。彼の現場はすごくリラックスしているんだ。衝動的なところもあって、アクションとカットの間がすごく曖昧。リハーサル中も撮影しているし、アクションの声掛けがないこともある。僕はこの2つを監督として取り入れたよ。あとは、軽妙さのようなものを現場に持ち込んだ。『アメリカン・スナイパー』はダークな瞬間がたくさんあるけれど、軽やかさを持ち込むことで、真剣になりすぎないというのは変だけど、リラックスしてより深いところまで降りていくことができるんだ。


ーーあなたの愛犬チャーリーも登場しましたが、それもリラックスとして?


クーパー:そうだね(笑)。チャーリーが、まるで2人の子どものような存在でいるのがすごくいいなと思っている。2人の愛情が大きすぎてほかの存在の面倒も見たいと思うほど、関係が発展したのは胸を打つものがあるよね。アリーが彼の家に色んなものを持ち込んで、自分のホームにしていく過程が気に入っているよ。


ーー本当に愛と温かみのある素晴らしいシーンでした。


クーパー:ありがとう。帰ったらチャーリーに伝えておくよ!