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NHK受信料「30年分」請求がきた! 時効5年なのに、こんな対応はアリ?

2018年12月20日 10:02  弁護士ドットコム

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NHKから約30年分の受信料の請求があった。しかも、契約者は亡くなった祖母なのに――。そんな内容の投稿が12月上旬、ツイッター上であった。「これはひどい」などと物議を醸している。


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投稿によると、NHKから請求されているという受信料は、昭和62年(1987年)10月~平成31年(2019年)1月まで、31年4カ月分、50万2640円にのぼっている。契約者は、投稿者の亡くなった祖母で、しかも現在テレビがないことから、支払いについては「スルーする」としている。


このような受信料の請求に、法的には応じないといけないのだろうか。また、30年前という時効にかかった受信料を請求することは法的に問題ないのだろうか。消費者問題にくわしい金田万作弁護士に聞いた。


●支払ってしまうと取り戻すことは難しい

――今回のケースのような請求に応じないといけないのでしょうか?


まず、NHKの契約者が投稿者の祖母なので、相続の問題があります。


祖母が亡くなるまでの受信料債務は、相続放棄をしていないと、法律上は当然に分割され、相続人がそれぞれの相続分に応じて引き継ぎます。


祖母が亡くなって以降の受信料債務は、受信契約を承継した人が支払い義務を負いますが、受信契約が相続人に承継されるのか、という問題があります。承継されるというのがNHKの立場のようですが、最高裁で結論が出ているわけではなく、争える可能性はあります。


仮に、投稿者が受信料債務をすべて相続し、受信契約も承継したとすると、5年を経過して、消滅時効にかかった部分については、時効を援用(主張)すれば支払いを免れることができますが(民法169条)、消滅時効になっていない期間についての受信料は、テレビがなかったとしても、廃止の届け出をする月の前月までは、規約上支払い義務を負います(日本放送協会受信規約5条1項)。一部は請求に応じなければならないという結論になる可能性が高いです。


――時効がかかった受信料について、NHKが請求すること自体は問題ないのでしょうか?


時効は援用して初めて確定的に効力が生ずるというのが、一般的な考え方です。したがって、請求することが即違法となるわけではありません。


ただし、公共放送であるNHKが、契約者の無知に乗じて、時効にかかった債権を支払わせるというのは、問題がないとは言えません。消滅時効にかかっていることを明記したうえで、それでも支払いたいという契約者から受け取るというのが、消費者保護から適切と考えます。


――時効に気付かず、支払ってしまった場合、取り戻せますか?


もし、支払ってしまうと、債務の承認として、信義則(民法1条2項)から、消滅時効の援用は許されないとするのが判例ですので、返金を求めることは難しいです。支払う前に債務が消滅時効にかかってないかを確認する必要があります。


ただし、先の判例(昭和41年4月20日・最高裁大法廷判決)については、消費者保護の観点から批判もあるところで、請求の内容や、やり方によっては、消滅時効の援用を認めるべき場合もあると考えます。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
金田 万作(かなだ・まんさく)弁護士
第二東京弁護士会消費者問題対策委員会(電子情報部会・金融部会)に所属。複数の消費者問題に関する弁護団・研究会に参加。ベネッセの情報漏えい事件では自ら原告となり訴訟提起するとともに弁護団も結成している。
事務所名:笠井・金田法律事務所
事務所URL:http://kasai-law.com