WorldRX世界ラリークロス選手権に参戦し、チームチャンピオンにも輝いているペター・ソルベルグ率いるPSRXフォルクスワーゲン・チーム・スウェーデンは、ライバルとなるワークスチームが相次いでシリーズから撤退したため、「シリーズに参戦するチームの減少により、留まることが難しくなった」として2019年のWorldRX参戦休止を発表した。
WRC世界ラリー選手権チャンピオンの肩書きを持つペター・ソルベルグと、そのチームメイトを務めるヨハン・クリストファーソンのふたりで、あわせて4度のドライバーズタイトルを獲得したPSRX。チームとしても3度の年間王者となった強豪だが、アウディ、プジョーというライバルの撤退が相次いだこともあり、シリーズ参戦を“一時休止”するという苦渋の決断を下すこととなった。
チーム代表を務めるバニラ・ソルベルグ夫人は「本当に悲しいことですが、シリーズに参戦する(ワークス)チームの数が減ったことで、2019年も参戦し続けることが困難な状況になってしまいました」と語っている。
「2017年と2018年に支えてくれたチームに所属するスタッフのひとりひとり、チームのパートナーや(ワークスサポートを行ってきた)フォルクスワーゲン・モータースポーツ、(タイトルスポンサーの)モンスターエナジー、そしてフォルクスワーゲン・スウェーデンには感謝しています」
WRCでスタードライバーとして成功を収めたのち、2013年からラリークロスに転向したペターは、2014年のポルトガル戦でWorldRX初勝利をマーク。そのまま2003年のWRCタイトル以来となる世界チャンピオンの称号を手にすることとなった。
その後もシリーズで実績を残し続けたPSRXは、2017年にフォルクスワーゲンのワークスサポートを受け、チームがWRCで培ってきたノウハウが活用されたフォルクスワーゲン・ポロGTI RXスーパーカー、ポロR RXスーパーカーを投入。チームに加入したクリストファーソンが2年連続のドライバーズタイトルを獲得するなど、トップチームとして君臨していた。
チームをサポートしてきたフォルクスワーゲン・モータースポーツのスヴェン・スミーツ代表はソルベルグ夫妻やフォルクスワーゲン・スウェーデンと協議を進めていくなかで、「ワークスやワークスサポートを受ける3チームが姿を消したことで、シリーズを取り巻く状況が大きく変わってしまった」と活動休止を決断した経緯を語っている。
「過去2年間、アウディ、フォード、プジョー、そして我々フォルクスワーゲンが戦い、トップクラスのドライバーたちが接近戦を繰り広げるなど、世界ラリークロスはとても見ごたえのある素晴らしいカテゴリーになっていた」
「しかし残念ながら、WorldRXから3つのワークスチーム、またはワークス支援を受けていたチームが去ることになり、状況は劇的に変化した。そのため、PSRXやフォルクスワーゲン・スウェーデンとともにシリーズを再評価せざるを得なかったんだ」
「我々としても、今回の決定は軽々しく下したものではない。しかし、2019年シーズンの参戦チームや競技としてのクオリティがどこまで維持されるかが不確実であることから、全員が合意した上で、参戦休止の決断に至った」
ただし、スミーツはWorldRXが2021年から電動ラリークロス競技に発展する予定であることにも言及。フォルクスワーゲンとして、この電動化を提言してきたこともあり、今後もシリーズの動向には注意を払っていく意向も明かしている。
「当然、フォルクスワーゲン・モータースポーツとしてはラリークロスの電動化に積極的に関わっていきたいと考えている」とスミーツ。
「このスポーツにとって電動化は必然の選択になると考えている。当初から我々はこの計画の支持者であり、引き続き状況を見守っていくよ」
WorldRXでの活動は休止することになったPSRXだが、チームオーナーであるペターは「ひとつはっきりさせておきたいのは、今回の決定は“活動終了”ではなく“一時休止”だということだ。あくまで停止であって、終わりではないんだ」とコメント。また2019年もフォルクスワーゲンと共同で活動を続けていくと述べた。
「今はこれ以上のことを伝えることはできないけど、年が明けたら、いろいろと話せるようになるはずだ。そして、ぼくは世界ラリークロスという競技の可能性を信じているし、長く続く、もっとも激しいレースカテゴリーだと信じている」
「今後の計画については取り組んでいる最中だし、2019年初めにはニュースをお届けできると思う。そして、このニュースのなかにはフォルクスワーゲンのマシンを僕が操るという報せも含まれるはずだ」