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“戸田恵梨香不在”の寂しさがドラマと現場でリンクするーー『大恋愛』最終回の収録裏を見た

2018年12月14日 08:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 今夜、最終回を迎える『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)。若年性アルツハイマーという大きな障壁を前に、戸田恵梨香とムロツヨシが丁寧に愛を紡いできたこのドラマも、ついに見納めとなる。今回リアルサウンド映画部では、最終話となる第10話の収録現場を取材。現場の雰囲気と共に、最終回の見どころを振り返りたい。


【写真】尚がいなくなった真司の日常


■寂しさが募る、尚がいない日常


 9話では、病が進行した尚(戸田恵梨香)が、真司(ムロツヨシ)に置き手紙を残して、姿を消してしまうところまでが描かれた。震える筆跡、うつろな眼差し、そんな状態で尚はどこに行ってしまったのか……。取材に入った日の収録予定に、尚の出演シーンはない。以前、収録現場を取材した際には、カメラが回っていないところでも尚と真司の笑い声が聞こえただけに、尚がいないという寂しさがドラマと現実がリンクして伝わってくる。


 真司、侑市(松岡昌宏)、薫(草刈民代)の切ない表情に、この物語における尚が、そしてこの現場において戸田が、太陽のような存在であったことを実感する。そんな中、無邪気な仕草で現場を和ませていたのが、尚の息子・恵一(加藤斗真)だ。松岡が後ろからハグするような形で手取り足取り段取りを教えると「わかった!」とニッコリ。その笑顔につられて草刈も微笑む。


 真司と恵一のふたりだけのシーンでは、恵一役の加藤が年相応の子どもらしくついおもちゃに夢中になってしまうハプニングも。笑わせようと話しかけていた真司ことムロツヨシは「俺、スベっとるやーん」とトホホ顔。これにはスタッフも大笑いだったが、“ここに尚(戸田)がいてくれたら“と、誰もが思う瞬間でもあった。そこに、いてほしい人がいない。その喪失感は、これまでが幸せだったからこそ大きくなる。それでも日常は続くのだ。


■ついに語られる、水野の本音


 病気によって何もかもわからなくなってしまったら「あの人に託したい」、尚がそう語った、真司の担当編集・水野(木南晴夏)。真司の才能を支えたいと熱心に仕事をする一方で、キッチンに立ち、恵一の離乳食からトイレットペーパーの補充まで手がけ家の中に入り込みすぎている印象も。小説を売りたい一心なのか、それとも別の思惑があるのか。視聴者の胸をざわつかせてきた水野が、最終話では本音を覗かせる。


■これからを生きる、真司の決意


 真司は26歳のとき『砂にまみれたアンジェリカ』で小説家デビューを果たすも、2作目で酷評され世間に忘れられていった。そして41歳で、小説の一節を暗記するほど、小説家・間宮真司のファンだという尚に出会い、失われていた生きる活力を取り戻していく。


 尚をきっかけにガラリと変わった真司の運命。そんな出会いが、私たちの人生にもあるのかもしれない。それは、人だけではなく、ドラマをはじめとした作品もそうだ。尚にとって『砂にまみれたアンジェリカ』が、自分らしい人生を切り開く鍵となったように。


 だが、出会えた奇跡と、悲しい別れは背中合わせだ。それは、どんな人も逃れることのできない人生の苦難。私たちも『大恋愛』というドラマ、そして戸田恵梨香×ムロツヨシの幸せな風景を知ったからこそ、最終回という別れが寂しくて仕方ない。避けられない人生の悲しみを、真司がどのように受け止めていくのか。その姿に、『大恋愛』ロスを迎える視聴者が、前を向くことができるヒントがあると信じて、今夜の放送を心待ちにしている。


(佐藤結衣)