2018年12月13日 10:32 弁護士ドットコム
ネット上に広がる「ヘイト表現」の問題点を議論するシンポジウム「インターネットとヘイトスピーチ」が12月12日、東京・霞が関の弁護士会館であった。第二東京弁護士会が主催し、国内最大級のアクセス数があるヤフーニュースにつく「ヘイトコメント」について、ヤフー側にヒアリングをした結果が報告された。
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報告に立ったのは、大沼卓朗弁護士(第二東京弁護士会・人権擁護委員会委員)。今年8月、ヤフーに対して直接ヒアリングした結果を説明した。
それによると、ヤフーニュースにつくコメントは1日あたり約28万件。コメント欄について、ヤフーからは「ユーザーが思考を進め、意見交換し社会をより良い方向に前進させるきっかけを作る」「記事を執筆した記者に対して投稿がフィードバックになる」との意義があると、回答があったという。
そのうえでヤフーは、「コメントの廃止は建設的な議論を奪うため、対策を講じながらコメント欄の改善を続ける」と説明。ヘイトスピーチを大きな社会問題と認識しているものの、コメント欄の閉鎖には否定的だったとした。
また、ヤフーによる対策としては、24時間体制で「人の目」で自主的パトロールを実施しているほか、ユーザーへの注意喚起や悪質ユーザーのアカウント停止、違反報告の受付などをおこなっているとの説明を受けたという。
一方、ヤフーではコメントの削除方針を社内で策定しているが、その内容は公表しておらず、今後の公表についても消極的な姿勢だったとした。
最後に、大沼弁護士からは、ヤフー側担当者から以下のような発言があったと報告された。
「ヘイトスピーチは大きな社会問題と認識しており、表現の自由に配慮しつつ、サービスの利用実態に即した実効的な対応を講じていきたい」
「ヘイトスピーチには多種多様な考え方がある。表現の場を提供する事業者が個別の内容に踏み込んで『善い・悪い』の判断をするのは極力するべきではない」
「在日コリアンをはじめとするマイノリティに深刻な被害が生じている」。第二東京弁護士会の桑村竹則・副会長はシンポジウムの冒頭でこう述べた。ヘイトスピーチをめぐる問題意識は広がっているものの、禁止などの踏み込んだ法整備はされていないのが現状だ。
2016年6月には「ヘイトスピーチ対策法」が施行され、国外出身者やその子孫に対する差別を助長・誘発する著しい侮辱などを「不当な差別的言動」と定義した。
同法では「このような不当な差別的言動は許されない」と宣言したが、禁止規定や罰則は設けられず、国や自治体に相談体制の整備や教育活動の充実を求める内容となっている。
法務省ではヘイトスピーチ関連のリーフレットを作成。そのなかで「例えば、特定の国の出身の人々について一律に『日本から叩き出せ』や『殺せ』というものが、ヘイトスピーチに当たると言われています」とし、「決してあってはならない」と注意を呼びかけている。
(弁護士ドットコムニュース)