映画『二階堂家物語』の新予告編と新場面写真が公開された。
『なら国際映画祭』の映画製作プロジェクト『NARAtive』の一環で製作された同作は、奈良・天理を舞台に、跡継ぎ問題に悩む3世代家族の愛と葛藤を描いた物語。1人息子を亡くし、妻が出て行ったことで望まない相手との結婚を母から迫られる一方で、娘に婿養子を取るように過剰な期待をかける主人公の二階堂辰也を中心に、名家の跡継ぎを巡り、繋がりが崩れ出す家族の姿を映し出している。二階堂辰也役を加藤雅也、辰也の娘・由子役を石橋静河、由子に思いを寄せる幼なじみの多田洋輔役を町田啓太(劇団EXILE)が演じる。監督をアイダ・パナハンデ、エグゼクティブプロデューサーを河瀨直美が務めた。
新予告編では、洋輔が由子に「由子と結婚できるなら俺名字変えてもいいから」と語る様子や、由子の恋人パトリック、白川和子演じる由子の祖母ハル、辰也の3人が顔を合わせるシーン、二階堂家の伝統と家名存続のために再婚して息子を作らなければならない辰也に由子が「自分の好きでもない人と結婚なんてしないで」と言う場面、辰也の「二階堂の問題は俺の問題だ」というセリフなどが確認できる。新場面写真は新予告編になぞらえたものとなっているほか、俵万智のコメントも到着した。
■俵万智のコメント
「家」の存続という問題ゆえに、対立し反発しあう父・辰也と娘・由子。辰也の母親ハルへの思いは、息子や孫としての愛情を前提としつつも複雑だ。そこに父娘それぞれの恋愛模様が絡まって、物語は進行する。ハルの影が薄くなるにつれて、辰也と由子にとって家の問題が色濃くなってくるところが、まことにリアル。家をはさんで反対側に立っていた父娘が、いつのまにか同じ側にいる。そのことに気づいた時から、二人はむしろ同志なのだ。押しつけあっていた「家」を、逆に引き受けようとする心の変化。その流れがみごとに描かれていて、なにゆえの変化なのかに思いが至る時、深い感動を覚えずにはいられない。イランの監督が、これほどまで深く日本の「家」問題に入りこめたことに驚くが、入りこんだ先に普遍的な景色が見えたからこそ、生まれた映画なのだと思う。