ウイリアムズのチーフテクニカルオフィサー、パディ・ロウは、2019年のフロントウイングに関する新レギュレーションが、来季のF1のレース内容に大きな影響をもたらすだろうと述べた。
彼の意見とは反対に、F1の他の重鎮たちの多くは、新規定がオーバーテイクを容易にする効果はごくわずかでしかないとの見方を示している。
フロントウイングの新規定は、今季はオーバーテイクが少なかったとの批判を受けて、見応えのあるコース上でのアクションを促進するために考えられたルール変更の一環だ。
この他にも、2019年からは燃料に関するレギュレーションが変わり、レース中の燃料使用量の上限が105kgから110kgに増量される。これは燃費ターゲットに縛られたドライビングを強いられ、本当のレースができないというドライバーの不満に応えたものだ。
「来年の空力面での変更は、これといった違いをもたらさないと言う人が多いようだ」と、ロウはコメントした。「だが、私は断言してもいい。燃料使用量の変更よりも、空力レギュレーションの変更の方がはるかに大きな影響があるだろう」
燃料のレギュレーション変更が及ぼす影響は、年間を通じてほとんどのレースで無いに等しいと、ロウは考えている。
「おそらく何の違いももたらさないというのが、私の意見だ。誰もがそれぞれのレースの戦い方に応じて、最適な量の燃料を積む。今までもずっとそうだったし、いずれにしても、ある程度まで燃費をセーブする必要があることは変わらない。そして、レース中にはどのクルマも頻繁にリフト&コーストをしている」
「実際のところ、リフト&コーストは燃料よりタイヤをセーブする意味合いの方が大きい。燃料使用量の増加によって走り方が変わるレースも、年に一度くらいはあるかもしれないが、それは例外的なケースにとどまるだろう」
2019年のレギュレーション変更の導入において、中心的な役割を果たしたのはF1のディレクター・オブ・モータースポーツ、ロス・ブラウンだ。これは2021年に予定される大規模なレギュレーション変更の先駆的実験でもあり、目に見えるような明らかな違いが生じるはずとブラウンは述べた。
「私たち自身のシミュレーションや、この件について密接な協力を得てきたチームの見解から考えると、その効果は明確な形で示されるだろう」と、彼は11月の時点で語っている。
「これは2021年から実施するために検討中のレギュレーションの先駆けであり、来季に向けて十分に満足のいく規定変更をすることができたと自負している」
■「フロントウイング規定の変更は無意味だった」との意見も
だが、メルセデスのボス、トト・ウォルフによると、彼のチームは来季のフロントウイング規定のもとでも、すでに今年と同等の空力的『アウトウォッシュ』を維持する方法を探し当てたという。
また、レッドブルのモータースポーツコンサルタント、ヘルムート・マルコも、この新しいフロントウイングのルールを酷評している。
マルコは先月、ドイツの自動車誌『アウト・モーター・ウント・シュポルト』のインタビューに答えて、「あのフロントウイングに関する無意味なレギュレーション変更のおかげで、1500万ユーロ(約19億2500万円)ほどの出費を強いられた。ダウンフォースの抑制という観点から言えば、その金は全くの無駄遣いになった」と述べた。
「私たちはすでに(2019年規定のウイングでも)現在とほぼ同じレベルのダウンフォースを得ているし、オーバーテイクが難しいという問題は解決されていない。つまり、何の効果もなかったわけだ。こんなレギュレーション変更を行う一方で、バジェットキャップの話をするなんてバカげている」
さらにトロロッソのボス、フランツ・トストもマルコの意見に同調した。「来シーズンが始まる頃には、どのチームも現在と変わらないレベルのダウンフォースを獲得していると思う」