2018年12月11日 10:02 弁護士ドットコム
「高福祉・高負担」の国、スウェーデン。手厚い家族手当などが保障される一方で、税金も高いことが知られている。日本弁護士連合会は11月30日、東京・霞が関の弁護士会館でシンポジウム「普遍主義の国、スウェーデンに学ぶ」を開催。研究者も交え、スウェーデンの政策から日本がなにを学ぶべきか議論した。
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日弁連は6月、スウェーデンに弁護士を派遣して調査をおこなった。参加した久野由詠弁護士によると、スウェーデンでは収入や性別のちがいなどにかかわらず、すべての人が保育、教育、医療、介護などの社会サービスを平等に受けることができる。「スウェーデンでは支え合いの仕組みが構築されている」と感想を述べた。
日本では、児童手当をもらうにも所得制限がある。また、大学に通うためには高い学費を用意しなければならず、奨学金の審査も厳しい。しかし、スウェーデンではだれもが児童手当をもらうことができ、学校教育は大学まで無償だという。
また、久野弁護士は「訪問したSKL(地方自治体連合)によると、地方税は一律。ただし、課税ベースを広くとり、所得が高い人から多く税金をとる一方で、所得が低い人の負担は基礎控除と税額控除によっておさえられている」と説明した。
高い税金を払うことについて、スウェーデンの人たちはどのように考えているのか。スウェーデンの若者政策に詳しい両角達平さん(文教大学研究員)は「スウェーデンで会った若者たちの多くが、高い税金を払ってでも十分なメリットを受けられると考えていた」とした。
また、両角さんは「スウェーデンの若者は社会に参加しようという意識が高い。若者が社会参画するための資源も十分にある」と説明した。両角さんによると、2014年のスウェーデン総選挙では、30歳以下の若者の投票率は8割を超えていたという。
財政学に詳しい埼玉大学大学院の高端正幸准教授は、日本がスウェーデンと大きくちがう点として「税金を払っても、自分たちがそれによって支えられるという実感が欠けている。取られっぱなしだと感じる人が少なくない」と指摘。
また、「子育てや介護などが個人や家族の責任だと考えられている。自分でなんとかするのがあたりまえという自己責任主義が根づいてしまっている」と問題視した。
そのうえで、「日本にも税のいたみを分かち合いながら、みんなで支え合う仕組みが必要です。そのためには、だれもが直面しうる困難に想像力をはたらかせて、自己責任主義の社会保障を終わらせなければならない」と訴えた。
高端准教授が紹介した調査会社のデータによると、「教育は無償であるべき」に「強く思う・まあまあそう思う」と回答した割合はスウェーデンでは93%だったのに対し、日本は64%。「無償の医療は市民の権利だ」に「強く思う・まあまあそう思う」と回答した割合はスウェーデンでは84%だったのに対し、日本は47%だった。
(弁護士ドットコムニュース)