2018年12月11日 09:22 弁護士ドットコム
「夫の持ち家を売りたいのに前妻の子が出ていかない。出ていかせるためにはどうしたらいいのか」。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
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相談者夫婦は300万円の借金を抱えてしまい、夫の持ち家を売りたいと考えています。ところが、夫の持ち家には夫と前妻の間にできた子(20代・アルバイト)が1人で住んでいるとのこと。家賃も払わず、家はまるでゴミ屋敷のようになっているそうです。
夫が子と話し合おうとしても、まったく応じてもらえない状況が2年以上つづき、相談者は「うんざり」といらだちを感じている様子です。
前妻の子に出ていってもらうためには、どのようにすればよいのでしょうか。加藤泰弁護士に聞きました。
ーー強制的に前妻の子に出ていってもらうことはできるのでしょうか
「法的な手続きを踏むことによって出ていかせることは可能だと思います。具体的には民事訴訟を起こすことになるでしょう。
もちろん、家族ではありますから、そのようなことをせずに話し合いで穏当にいくのがベストです。しかし、今回のケースはそれではどうにもならなかったということなので、法的な手段をとるのも仕方ないかと思います」
ーー前妻の子には、夫の持ち家に住む権利はあるのでしょうか
「居住をはじめるにあたって、夫とその前妻の子がなにか明確な取り決めをしたわけでもないですし、無償で住んでいるようなので、前妻の子は無償で使用・収益する契約、使用貸借契約に基づいて居住しているということになります。
今回の相談は、法的には使用貸借の終了時期がいつになるのかという相談といえます」
ーー使用賃借契約を終わらせることはできるのでしょうか
「有償の建物賃貸借契約であれば、借家人の権利が非常に強く保護されているため、退去させるのはむずかしくなります。しかし、無償の建物使用貸借契約の場合、法は借主側の権利をそれほど強くは保護していません。
そのため、使用貸借の期間や使用の目的を定めていない場合には、すぐに契約を解除して使用貸借を終了させることができます。また、仮に使用の目的を定めていて、その目的を未だ果たしていないときであっても、裁判ではさまざまな事情を考慮して、相応の期間が経過していれば契約終了を認めてもらえるようです」
ーー今回も契約の終了は認められるのでしょうか
「今回は期間や使用の目的を定めていないケースのようなので、終了は認めてもらえるでしょう。仮に夫と前妻の子の間で『〇〇のときまで住ませる』といったやりとりがあったとしても、貸し手である夫側に建物を必要とする事情があることや、〇〇をするのに十分な期間が経過しているといった事情などから契約の終了を認めてもらえると思います。
契約の終了が認められれば、前妻の子が夫の持ち家に住みつづける法的な権利もなくなります。したがって、訴訟では、前妻の子に対して『建物から退去せよ』という判決が出ることになります」
ーー判決が出たとしても、子が出ていかなかった場合はどうすればよいのでしょう
「執行官による強制執行に頼ることになります。ただ、荷物を運び出す業者や運び出した荷物の保管費用などは強制執行を申し立てる側が用意しないといけません。ゴミ屋敷となると少なくとも50万円、状況によってはもっと多額の費用が求められるでしょう。
もっとも、悪いのは出ていかない前妻の子ですから、このお金は前妻の子が最終的に負担すべきと決まっています。ただ、前妻の子にめぼしい資産がなければ、残念ながら強制執行にかかった費用の回収は一筋縄ではいかないでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
加藤 泰(かとう・やすし)弁護士
早稲田大学法学部卒業、広島弁護士会所属
広島弁護士会広報室室長代理、広島商工会議所青年部会員
Twitter:https://twitter.com/39katoyasushi
事務所名:山下江法律事務所
事務所URL:https://www.law-yamashita.com/