2018年12月10日 15:52 弁護士ドットコム
来年の天皇の代替わりに伴って行われる「退位の礼」や「即位の礼」、「大嘗祭」に公金を使うのは、憲法が定める政教分離の原則に反するとして、241人が国を相手取り、公金支出の差し止めと1人あたり1万円の損害賠償を求める訴訟を12月10日に東京地裁に起こした。
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原告は、市民団体「即位・大嘗祭違憲訴訟の会」のメンバーなど。提訴後に東京・霞が関の司法記者クラブで会見した原告のひとりは「国の税金が使われることに反対。国が祝い、社会的慶事にされることで、反対する人への社会的排除が予想される」と述べた。
訴状などによると、退位の礼や即位の礼、大嘗祭などの諸儀式は宗教的色彩が濃く、大嘗祭は新天皇に神格を与えるという極めて明確な宗教的儀式で、他の宗教者や無宗教者らが受ける圧迫感は大きいと指摘。
政府が特定の宗教行為に公金を支出する政教分離違反があれば、原告らの思想・良心の自由、信教の自由に対する脅威や間接的な圧迫となり、侵害が起きていると言えるとした。
そのうえで「宗教行為を国家自らが行う場合、制止する役割は裁判所にあり、信教の自由が侵害される脅威や間接的な圧迫を裁判所は制止しなければならない」と訴えた。
会見で、代理人弁護士は「憲法判断を回避せずに、きちんと憲法判断をしてもらいたい」。同席した原告のひとりは「キリスト教の牧師として、税金が使われることに反対だ。納税者全てが巻き込まれ、反対することもできないことに憂いを持つ」と話した。
大嘗祭への公金支出をめぐっては、秋篠宮さまが53歳の誕生日に先立つ11月下旬の会見で「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当かどうか」と疑問を呈され、皇室の私的費用「内廷費」で対応すべきだとの考えを示されたことが報じられた。
会見では、秋篠宮さまが疑義を呈された点について質問が出たが、原告側は「裁判はもっとずっと前から準備していた」として関連性を否定した。
現在の天皇陛下の即位を受けた大嘗祭に対する公金支出が、政教分離原則に違反しているかどうかが争われた際、1995年の大阪高裁判決は、原告側の主張を退けたものの「憲法違反の疑いは一概に否定できない」とも指摘していた。当時の原告の一部も、今回新たに起こした訴訟の原告に名を連ねている。
(弁護士ドットコムニュース)