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新たな進歩を見せたドゥカティのタイヤを労わる方法とは【イギリス人ライターのMotoGPオフテスト分析】

2018年12月08日 21:41  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)
イギリス在住のフリーライター、マット・オクスリーのMotoGPコラム。MotoGPオフィシャルテストで見えた各メーカーの動きをオクスリーが分析する。

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 ドゥカティの2019年の目標は、ここ数年のものと同じだ。ドゥカティのエンジニアたちがコーナーエントリーの際のグリップとフィーリングの問題(ロッシや他の多くのライダーにつきまとった)を解決して以来、彼らの主な問題は中速コーナーでのコーナリングにあった。

 過去数シーズン、特に2018年シーズンにドゥカティ・コルセのボスであるルイジ・ダリーニャが徐々にこの問題を軽減させたが、今のデスモセディチGPは、コーナー進入と立ち上がりの際の優れた安定性を損なうことなしに、コーナー中盤で今以上の速さを出すことが難しい段階にある。コーナー進入と立ち上がりの安定性はチームの現在の成功の要なのだ。ドゥカティは、過去2シーズンでは13勝を挙げた。比較すると、それ以前の6シーズンでは2勝している。

 しかし、おそらくダリーニャは他の領域で重要な進歩を遂げている。ミシュランタイヤの時代では、リヤタイヤの温度を妥当なレベルに保つことが、最も重要なパフォーマンス要因のひとつとなっている。タイヤをより労われば、レース終盤でより速いスピードを出せるからだ。

 アンドレア・ドヴィツィオーゾは、ほぼ間違いなくMotoGPにおけるタイヤマネジメントの名手だ。リヤタイヤをオーバーヒートから守ることはMotoGPの誰にとっても大きな懸案事項であり、ドヴィツィオーゾの新たなチームメイトのダニロ・ペトルッチにとってはなおさらそうだ。

 ペトルッチは体重78キロと、グリッド上で一番体が大きい。結果としてリヤタイヤの温度はとてつもなく高くなり、タイヤの寿命を縮めることになる。しかしペトルッチの2019年型デスモセディチGPがこの問題を解決する役に立つだろう。

「バイクはさらに安定しており、そのおかげでタイヤの温度を多少低くすることができている。そのためラップごとに速さを出せている」とペトルッチは語った。

■ドゥカティのタイヤを労わる方法
 ドゥカティはグリッド上で最もパワーのあるバイクだが、ダリーニャはどうやってタイヤ温度を低めているのだろう? おそらくそれは2018年シーズンに導入されたドゥカティのスーパースリックシフトのギヤボックスによるのだろう。バレンシアテストでは、プラマック・レーシングのジャック・ミラーもこのギヤボックスを、2019年型デスモセディチGPで初めて試した。

「ギヤボックスの動きはとてもスムーズだ」と2018年シーズンはGP17でレースをしたミラーは語った。

「リヤタイヤへの荷重が適度で軽く、コーナー立ち上がりの際のパワーがとてもスムーズだ。だからとてもコントロールしやすいし、バイクを不安定にさせることがそれほどない」

 ミラーは2019年型マシンでの初テストに感動したという。

「このバイクが僕のGP17よりほんの2年進んだものだとは信じられないよ。なぜならとても大きな変更が施されている。GP19はすべてにおいて優れている。ブレーキング、ストップ、コーナリング、そして加速もいいんだ。把握すべきことがたくさんあるし、いろいろなことに慣れようとしている。でもこのバイクがこのように向上したことは本当に嬉しいね」

「バイクの感触はとても軽くて、操作も簡単だ。特に高速での方向転換がね。ラインをしっかり取れるので、中速コーナーでの感触も良いよ。とても興奮している!」

■ファクトリー入りの夢を掴むも1年契約のペトルッチ
 ドゥカティのファクトリーチームへペトルッチが昇格したことで、彼にとって数年にわたるジェットコースターのような年月は終わった。

 ペトルッチは珍しいルートからMotoGP入りした。ヨーロピアン・スーパーストックシリーズからまっすぐMotoGPに昇格し、ジャンピエロ・サッキ率いる資金の乏しいイオダ・チームでCRTマシン(量産車ベースのエンジンを搭載するマシン)に乗っていたのだ。

 ペトルッチのバイクはごく標準的なアプリリアのRSV4エンジンを備えており、ストックストリートバイクの電子制御を使用して、MotoGPのファクトリーマシンとレースをしていた。2014年のムジェロで、イオダ・アプリリアは時速198マイル(約318km/h)のスピードを出したが、最速だったアンドレア・イアンノーネのドゥカティからは時速19マイル(約30km/h)遅かった。

 ペトルッチがもう少しで諦めて辞めようとしたことは不思議ではない。「その時期、僕はコースも、タイヤも、カーボンバイクのことも知らなかった。それに僕たちのバイクは信じられないくらい遅かった」とペトルッチは語った。

「皆に対して腹を立てていたよ。なぜならいつもグリッド順は最後列だし、レースでは最下位だったからね」

 28歳のペトルッチにとって、ファクトリーライダーとしての最初の日が特別な経験であったことは当然のことだろう。「今日は僕にとって本当に感動的な日だ。まるで中学校での初日みたいだ! このカラーリングを纏うという夢がかなったよ」

 しかしながら、2019年はペトルッチにとって楽な年にはならないだろう。まず、ペトルッチには体型のハンディキャップがある。そして彼はファクトリーとたった1年の契約しか結んでいない。ドヴィツィオーゾはすでに2年間の契約を結んでおり、23歳のミラーは近い将来ファクトリーチームに昇格するものと見られている。