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「けものフレンズ2」制作会社トマソン、抜擢の舞台裏は? 沼田P「その場でやらせて下さいと…」【インタビュー】

2018年12月08日 18:53  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

「けものフレンズ2」制作会社トマソン、抜擢の舞台裏は? 沼田P「その場でやらせて下さいと…」【インタビュー】
アニメサイト連合企画
「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」
Vol.7 トマソン

世界からの注目が今まで以上に高まっている日本アニメ。実際に制作しているアニメスタジオに、制作へ懸ける思いやアニメ制作の裏話を含めたインタビューを敢行しました。アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」、Facebook2,000万人登録「Tokyo Otaku Mode」、中国語圏大手の「Bahamut」など、世界中のアニメニュースサイトが連携した大型企画になります。

トマソン 代表作:日本の昔ばなしシリーズ、ミルキーパニック twelve、けものフレンズ2

多くのアニメファンが注目する作品『けものフレンズ2』。その制作チーム発表のニュースが飛び込んできた。監督には『アイカツ!』シリーズや『ポチっと発明 ピカちんキット』を手がける木村隆一。そして制作スタジオに選ばれたのは株式会社トマソン。

注目度の高いアニメのセカンドシーズンをあえて引き継ぐことを選んだ背景には何があったのか。そして制作に臨むにあたっての想いは。本インタビューではトマソンのプロデューサー沼田心之介に話を伺った。
[取材・構成=Tokyo Otaku Mode]

東京都大田区にあるトマソンのスタジオロゴ


発表されたセカンドシーズンのビジュアル (C)KFP2A

『けものフレンズ2』の制作プロデューサー沼田心之介
その場で「やります」

――『けものフレンズ2』をトマソンで担当されたのはどういった経緯で?

沼田
けものフレンズのTVアニメがすごいヒットしてて、僕はそれはもちろん外野として知ってはいたんですけど、セカンドシーズンを進めるにあたって制作会社が変わるという記事が流れた後、知人のプロデューサーから「アニメ制作で相談があるんですが」という話がきたんです。
それがこのプロジェクトだったんですね。

――それはびっくりしますね。

沼田
そうですね。とても面白い作品でまさかその作品に携わることができるとは思っていなかったです。
だから、そのときはびっくりのほうが強かったんですけど。

でも、逆にチャンスというか、うちの会社がこんなビッグタイトルを担当できるなんてという考えもあって、その場で「やらせてください」と答えました。
正直、うちの規模だと厳しいかもしれないかなとは思ったんですけど、なんとかしようと。

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葛藤を乗り越える

――担当すると決められてから、いろいろ考えることがあったと思いますが、そのあたりもお聞かせいただけますか?

沼田
うちの会社にも『けものフレンズ』のファンが何人もいたので、スタッフも光栄というか、まさかこんな作品に関われるとは思ってもなくて。僕が最初に社内に伝えたときは、誰も信じませんでしたね。

――(笑)。誰も信じなかった。

沼田
そう。誰も信じなかったし、その後は「いやいや、無理無理」というか。むしろファンであるからこそ「ちょっと難しい」と。「あれはできない」というふうな反応でした。

でも時間がたつにつれて、さっき言ったみたいに、この作品に関われるということは、すごくありがたいことだなという意識に全員が変わってきて、葛藤を乗り越えたという感じですね。

スタッフみんなで何度も作品を見直したり、監督の木村隆一さんと脚本のますもとたくやさんと毎週毎週シナリオ会議というのをやり、それからキャラクターのモデリングから作業に入っていきました。

毎日がエキサイティング

――どんなことを考えながら制作を進められていますか?

沼田
最初の作品というのは、色んなところに色んな伏線がちりばめられたりしてて、それを視聴者が見て発見して、何度も戻って見るみたいな楽しみ方ができる作品になっていて。
そこに気付くことによって感動し、さらに視聴者自身も「見つけられた自分もすごい」みたいな高揚感を得られる作りになっています。
雰囲気も可愛いくて、ストーリーもゆったりとしたところがあるんですけども、どこか尖った部分もあって、ポストアポカリプス感と申しますか、そこがゆるふわ感と相まって魅力となり、ヒットした要因でもあると思います。
もともとの設定、世界観にそういうものがあったんですね。

あとは現在のモデリングは、原案の吉崎観音さんが描かれたキャラクターを元に作っているんですけども、とにかく可愛い。
絵だけで引き込まれるというか、面白そうだなって思えるんです。本作では「より丸く」「より柔らかく」「よりやさしく」というコンセプトでデザインを進めたんですが、吉崎さんには細かく監修もしていただきました。

動物をモチーフにしたアニマルガールがいて「こんな動物がいるんだ」ということで名前を調べたりとか、そういう楽しみ方もありますよね。
実際に動物園へ行って「あれはサーバルちゃんだ」とか。知的好奇心も刺激されるというのが魅力の1つですね。

それを受けてセカンドシーズンは、この尖った作品の足元を固めるじゃないですけど。
これまでのファンや初めて『けものフレンズ』を見る方、子どもたちも楽しめるような、より国民的作品に近づけるじゃないですけども、そういうふうな役割を考えながら作っています。本当に毎日がエキサイティングですね(笑)。

写真左は、1988年にトマソンを立ち上げた沼田社長。沼田プロデューサーの父親だ

――アニメスタジオ「トマソン」の歴史について教えて下さい。

沼田
まずトマソンという名前の由来から説明させていただくと、赤瀬川原平さんというアーティストがいらっしゃって、1980年代に『超芸術トマソン』という本を出されたんですよ。トマソンとは「無用の長物」で役にたたない無駄なものという意味なんです。

なくても生きていけるし困らないかもしれないけれど、実はとても面白くて大切なものってあるよね、という意味が込められていて、それがアニメ制作とも重なってトマソンと名付けたんですね。
スタジオの代表は僕の父親なんですけど。いい名前だなと思ってます。

父はもともと『まんが日本昔ばなし』の制作会社の出身で、「これからはCGが来る」と踏んで、アニメ・CG会社として独立したんです。
当時の仕事としてはCMだったり、番組のオープニングのロゴだったり、CG回りの仕事が多かったと聞いています。

だからCG制作はスタジオのDNAとして組み込まれていて、今回の『けものフレンズ』の制作でも活きていると思いますね。

→次のページ:アニメーターを目指す人たちをもっと増やしたい

アニメーターを目指す人たちをもっと増やしたい
アニメーター育成事業「あにめたまご」で手がけた『ミルキーパニック twelve』のキャップ

――この取材企画の前に「日本のアニメクリエイターに何を聞きたい?」という事前アンケートを海外アニメファン300名に対して行いました。その中の「ファンにできることは何がある?」という質問にお答えください。

沼田
アニメーターにもっとチャンスがある世界にしたいですね。全然、ジャストアイデアなんですけど、例えばブロックチェーン技術を生かし、放映中に自分が応援したアニメーターが担当した部分がくると光ってわかるとか。
アニメは多くの人が関わって完成しますが、アニメーターに注目とお金が集まるシステムが作れないかなと。
だからまずは日本のアニメーターのことをたくさん知ってもらって応援してほしいと思います。

根底にはアニメーターを目指す人たちをもっと増やしたいというのがあります。
この業界に足を踏み入れても金銭面とかキャリアが見えずに夢を諦めざるを得ない人を少なくしたい。
今はデジタル技術が向上しているので、地方とか場所はどこにいても物理的には仕事ができちゃうんですね。でも新人の子がいきなり地方で仕事をもらえるわけなくて。

地方にいる新人でも教育を受けられて仕事がもらえるシステムがあると良いなと。
例えばオンラインサロンってネットの界隈ではブームですけど、アニメ制作のオンラインサロンとか。
企画するところからシナリオの打ち合わせをして、絵コンテを描いてみたいなところを全部配信というか、アーカイブに残して、地方にいてもそういうアニメの全工程を見られて、実際そこに絵を描いて参加してもらったりして、制作作業も一緒にやっていくみたいなことをやりたいなと思ってます。

僕は企画とかそういうビジネス周りの事を考えることも好きなので、アニメ業界をビジネス視点の方からも切り開いていけたらなとも思ってます。

今は世界の変革期というか。いろいろな価値観も変わってくる時代だと思うんで、オタクコインなど話題になっていますけどブロックチェーン技術やAIの発展も踏まえて、アニメ業界もより良い方向に変わっていけたらとも思っています。

作品の細部まで楽しんで欲しい

――最後に、世界のアニメファンに一言お願いします。

沼田
いま制作中の『けものフレンズ』に関しては、これだけヒットした作品に途中から関われるというのは、すごくありがたいことだなって本当に感じています。ファンの皆さんや関係者にとっても「良かったな」と思ってもらえる「三方良し」の作品を作りたいと制作会社としては思ってます。

動物をモチーフにしたユニバーサルな作品なのでどの国でもどんな人でも楽しめると思います。日本のアニメは構成や演出に長けていますし、緻密に作られた作品の細部まで楽しんでもらえたらなと。

個人的には前作を超えるヒット作を作りたいと思ってます。この発言はたたかれるかもしれませんが(笑)。それぐらいの意気込みでやってるという熱意が伝わればいいなと思います!
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この連載記事では、インタビュー記事を読んでくれた“あなたが直接アニメスタジオに応援や感謝のメッセージを送れる”ファン参加型の企画を実施中!
アニメ!アニメ!もパートナーの1社で参画しているコミュニティ通貨「オタクコイン」内の企画で、この秋ローンチを予定のアプリと連動して行います。


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