トロロッソ・ホンダ初年度となる2018年シーズンを、ホンダF1の副テクニカルディレクターを務める本橋正充が振り返る連載企画の第2弾。中盤戦を振り返るなかで本橋は第4戦アゼルバイジャンGPで露呈した課題を乗り越えた第12戦ハンガリーGPを2018年のベストレースに挙げた。
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第4戦アゼルバイジャンGPで、パワーユニット(PU)のエネルギーマネージメントにおいて、チームやドライバーとのコミュケーション不足が露呈したホンダ。アゼルバイジャンGPで起きた問題を、本橋は次のように説明した。
「エネマネ(エネルギーマネージメント)に関しては、ホンダもこれまでのデータを元に、サーキットに合わせたラップタイムベストの最適な設定にしてグランプリに臨んでいました」
「しかし、レースではオーバーテイクのタイミングであったり、相手に抜かれないよう防御する道具として、デプロイ(回生エネルギーによるエキストラパワー)が欲しいときがある。それはホンダも過去のレースから学んできていたものの、レースというのは毎年変化していて、その読みがアゼルバイジャンでは甘かった」
そこでホンダは、同じ誤ちを繰り返さないようデータを徹底的に見直した。だが本橋が見直したのは、データだけはなかったと言う。
「エネマネの最適化というのは、ホンダ側が事前にどんな設定を用意しておくかということが重要となります。ただしエネマネに限らず、パワーユニットのセッティングというのはきちんと準備をしてきたとしても、路面の状況や気温や湿度などの環境状況、そしてドライバーの好みに合わせて、最終的には現場でチューニングしなければなりません。またそれぞれの設定をどこでどう変更するのかというタイミングも重要になってきます」
「さらに、実際にレース中にそれを操作するのはドライバーですから、ドライバーとのコミュニケーションも重要になってきます。その点において、アゼルバイジャンGPまでは正直、距離があったと反省しています」
事態を重く見たトロロッソ・ホンダは、その後ミーティングを重ね、関係を密にしていった。
「ミーティングを改めて用意しました。そこでお互い考えていること、ドライバーがどう思っているのかっていうことも、腹を割って話し合いました。そこでようやく我々はお互いが抱えていた問題点を正確に把握することができました。お互いが求めているものを深く理解し合えたのは、夏休み前のハンガリーGPのあたりだったと思います」
■「コミュニケーション含め、より高度な戦いができた」ハンガリーGPがベストレース
そのハンガリーGPは、予選前に雨が降り出した。しかもその後、一旦止み、また降り出すという難しいコンディションでセッションが行われた。このような状況では路面の状況が刻々と変わるため、エネマネの調整が複雑になる。
しかしホンダはアゼルバイジャンGPでの反省を活かして、チームやドライバーと密接に話し合いを行いながら、エネマネのモードを頻繁に調整してもらい、今シーズン初めて、2台そろってQ3進出を果たし、決勝ではガスリーが6位に入賞した。
「ハンガリーでは天候の変化に対して、的確な判断を下すことができました。アゼルバイジャンGP後、徐々に関係は良好になっていましたが、それがコース上での結果としてきちんとした効果が出てきたのはハンガリーだったと思います」
だから、本橋は今シーズンのベストレースにハンガリーGPを挙げた。
「もちろん、バーレーンGPも良かった。それは4位という今シーズン最高位の結果を出したからだけでなく、エンジニアとしてしっかりと戦えたから。昼間から夕方にかけて気温が下がっていく中で、最終的に夜に行われるナイトレースの気温変化にうまく対応できました」
「ただ、ハンガリーGPではチームやドライバーとのコミュニケーションも含めて、より高度なレベルで戦うことができた。トロロッソ・ホンダというチームとしてのベストレースはやっぱりハンガリーGPだったと思います」
■本橋正充ホンダF1副テクニカルディレクター:2018年総括(3)に続く