2018年12月07日 18:22 弁護士ドットコム
進学塾「栄光ゼミナール」で知られる株式会社「栄光」の個別指導部門で働いていた男性(当時49)が2017年11月に亡くなったのは、長時間労働が原因だったとして、渋谷労働基準監督署が労災認定していたことが、12月7日分かった。認定は11月15日付。
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遺族代理人を務める川人博弁護士らが厚労省記者クラブで会見を開き、明らかにした。
会見に参加した男性の妻(40代)は、「夫は子どもたちのため、会社のためにと、寝る間を惜しんで働いておりました。労働者に全てを委ねるような業務運営は、会社側の怠慢としか言いようがありません」と訴えた。
男性は2005年、学習塾を運営する株式会社「栄光」に中途入社し、個別指導を行う「ビザビ」に所属。17年5月からは「ビザビ」成城学園校の教室長として、時間割編成や学習指導、アルバイト講師の育成などの業務を行なっていた。
成城学園校には、当時小学生から高校生まで約180人の生徒が通っていたが、常駐する正社員は男性と女性部下の2人しかいなかった。生徒の個別指導は主に大学生アルバイト約30人が担当していたものの、保護者からの問い合わせや苦情、定期的な面談などは、正社員の担当業務で、負担や責任が男性に集中していた。
男性は17年11月13日、本社で係長から課長に昇進するための社内研修を受けていたところ、突然倒れた。病院に搬送されたが、急性の大動脈瘤(りゅう)乖離による心停止のため、亡くなった。
労基署は発症前1カ月の時間外労働を113時間57分と認定。業務と発症との関連性が強いと評価できるとして、労災と判断した。発症前2~6カ月の時間外労働は80~130時間だった。
会社に報告する出社・退社時間は自己申告制だったが、男性は1日当たりの残業時間をほとんど0時間と記入。多くても2時間程度しかつけていなかった。そこで、社内のシステム作業ログや妻とのLINEでのメッセージのやりとりなどで時間外労働時間を集計したという。
男性の妻は「慢性的に何年も忙しい状態が続いていた。やらなければ行けないことがとにかく多く、自宅と勤務校が遠い時には深夜1時半に帰って来ることもあった」と振り返った。
代理人の川人弁護士は、多数の学生アルバイトを少数の正社員が管理監督するかたちで運営される「学習塾業界」の特殊性を指摘。「外食産業とも似た形態で、正社員の男性の負担が重く、極度の長時間労働が続くことになった。労務管理上会社が反省すべきところは大変多い」と話した。
株式会社栄光は以下のようにコメントした。
「共に働く社員が亡くなりまして、過労死の認定を受けたことを、当社では大変重く受け止めております。二度とこのような事態を起こさないよう、長時間労働の抑止を図るための勤務体制の構築と、現場管理の改善を行いまして、適切な労務管理を徹底して参りたいと考えております。ご遺族の方には、大変申し訳なく、心よりお詫び申し上げます」
(弁護士ドットコムニュース)