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ファーウェイCFOがカナダで逮捕、原因は“イランへの制裁違反”? 広がる中華メーカー包囲網

2018年12月07日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

 近年スマホ市場を席巻している中国大手スマホメーカーの幹部が、カナダで逮捕された。逮捕の理由は発表されていないが、その背景には米中の対立があるようだ。


参考:中国製スマホがやばすぎる! iPhoneを超えるHUAWEIやOPPOの先端性


2016年からマーク


 AFP通信は6日、カナダ司法省が中国大手スマホメーカーHuaweiのCFO(最高財務責任者)であり同社創業者の娘でもあるMeng Wanzhou(孟晩舟)氏を逮捕したことを報じた。同氏が逮捕されたのは今月1日で、同氏が報道禁止を求めたため詳細は明らかにされていない。カナダの隣国であるアメリカ政府は、同氏の引き渡しを要求している。


 ロイター通信は、今回の逮捕は同社がアメリカのイランと北朝鮮に対する制裁措置に違反しているとされることに関連している、と報じている。さらに、アメリカ当局は同社がイランなどにアメリカ製品を輸出した疑いがあるとして、2016年ころからニューヨークの連邦検察当局が中心になって捜査していた、とも伝えている。今回の逮捕に関して、在カナダ中国大使館は逮捕に断固として反対すると表明している。


同調する国が次々と


 Huaweiをめぐっては、逮捕という実力行使には至らないまでも各国が何らかの措置を講じる動きが相次いでいる。


 イギリス大手メディアのガーディアン紙は、件の逮捕を報じた記事でイギリスの通信事業最大手のBTグループが5日、中国企業のインフラに依存しない社内ポリシーを履行する一環として、同社が展開する3Gと4Gの携帯電話通信網からHuawei機器を取り除く過程にあることを発表した。また、先週にはイギリスの諜報機関MI6の長官であるAlex Younger 氏が、イギリスにあるHuawei機器に対して懸念を表明していた。さらにニュージーランドとオーストラリアの政府も将来導入される5G通信網にHuawei機器を利用しない方向に進んでいることも伝えている。


 同紙は世界各国でHuawei機器の排斥が進む理由として、同社が各国の競合企業の大きな脅威となっていること、そして同社の機器が中国政府のスパイ活動に利用される懸念があることを挙げている。


次の標的となるのは……


 実のところ、アメリカ政府が圧力をかけている中国企業はHuaweiだけではない。同社と並ぶ中国スマホメーカーZTEにも、アメリカ政府の矛先は向かっている。


 ロイター通信は今年4月、アメリカ商務省が同国企業がZTEに対して製品を販売することを7年間禁止すると発表したことを報じている。この禁止命令は、同社が経済制裁を受けているイランや北朝鮮に対してアメリカ製品を販売したことに対する措置であった。この措置に対して同社はただちに猛抗議したが、その後6月に1億ドル(約110億円)の罰金の支払いと経営陣の刷新を条件を制裁措置を解除することにアメリカ商務省と合意した。そして7月、件の条件を満たしたということで制裁措置が解除されたことを日本経済新聞は伝えている。


 しかし、ロイター通信は11月29日、超党派のアメリカ国会議員がZTEの調査を同国政府に要請していることを報じた。調査を要請したのは、野党民主党所属ののアメリカ上院議員クリス・バン・ホーレン議員と与党共和党所属のマルコ・ルビオ上院議員である。要請した内容は、ベネズエラ政府が自国民を監視するために設けるデータベースの構築に同社が協力し、アメリカ製品を違法に使用していないかどうか、というもの。調査を要請したふたりの議員は、同社に対する制裁を強く支持してきたことで知られている。


 件の調査要請に関して、ZTEとベネズエラ政府、さらにはアメリカ関係省庁もコメントを出していない。とはいうものも、今回のHuawei幹部が逮捕されたという事態をうけて、ZTEに対する風当たりが強くなることが予想される。


 以上のような米中対立を背景とした世界的に広がる「中華メーカー包囲網」の形成は、日本政府と日本企業にとっても対岸の火事ではない。近日中に、日本政府あるいは国内通信事業者から何らかの発表がある可能性は決して低くはないだろう。


(吉本幸記)