ERCヨーロッパ・ラリー選手権の2019年シーズンに向け、フォルクスワーゲン・モータースポーツは新型R5規定ラリーカー、『フォルクスワーゲン・ポロGTI R5』の最初のカスタマーへの納車式を完了。オーストリアに拠点を置くバウムシュラッガー・ラリー&レーシング(BRR)が、2台体制でのERCシリーズ参戦を表明した。
WRC世界ラリー選手権への登竜門として、ヤングドライバーや腕に覚えのあるアマチュア・ラリーストが多数集うERCは、ここ数シーズン増殖を続けるR5規定ラリーカーをトップカテゴリーに据えている。
一方、元WRCドライバーとしてシュコダのWRカーなどもドライブしたBRR代表のライムンド・バウムシュラッガーは、そのキャリア前半ではドイツの国内選手権やスパ・フランコルシャン、ニュルブルクリンク等の24時間耐久やワンメイクなどサーキットカテゴリーを中心に、長年にわたりフォルクスワーゲンとの信頼関係を築いてきた。
近年は『シュコダ・ファビアR5』で母国選手権などを中心に活動を続けてきたBRRは、フォルクスワーゲンの新型R5カーのデリバリーに際し、その関係性を軸に最初のカスタマーチームに選出されることとなった。
「この2台のポロGTI R5は、すでに2019年のERCシリーズへの投入を決めているんだ」と語るのは、14度のオーストリア国内ラリー選手権チャンピオンであり、この新型R5カーのテスト部隊の一員として開発ドライバーも務めたバウムシュラッガー代表。
「そして現時点ですでに何組かの潜在的なカスタマーとなるクルーからの問い合わせも受けており、ERCではサードカーを走らせる可能性が非常に高い、と付け加えておこう」
「顧客たちは、我々がフォルクスワーゲンと築いている密接な距離感での関係に信頼を寄せており、BRRとしてもフォルクスワーゲンがこうしてR5規定のマシンを供給してくれることにとても満足している」
ERCの2019年カレンダーも、引き続き4戦のターマックイベント、4戦のグラベルサーフェスでの勝負が予定されており、BRRはサスペンションやアンダーガード類など、すでに双方の仕様に対応するパーツ類を発注済みだという。
「我々にとっては、こうした細かなサプライチェーンがすでに完璧に機能している点も非常に心強い。スペアパーツの供給などはモータースポーツ活動の生命線とも言えるからね。その点、フォルクスワーゲン・モータースポーツに対しては全面的な信頼を寄せているよ」と、バウムシュラッガー代表。
BRRはすでに12月1日にはチェコのプラハで開催されたラリースプリントに参戦し、『フォルクスワーゲン・ポロGTI R5』のシェイクダウンを兼ねた競技デビューを果たしている。
また、R5規定マシンのライバルとしてこちらは2018年から本格デリバリーが開始されている『シトロエンC3 R5』に関しては、フランスの国内GT選手権や“氷上の格闘技”シャモニー・アイスレースなどで活躍するトップチーム、Sainteloc Racing(サンテロック・レーシング)が引き続き投入することをアナウンス。
これまでもシトロエンやプジョーといったPSAとの協力関係を築いてきたサンテロックは、2018年のERCシーズンと同様に、ジュニアチームとしてR2規定のプジョー208を持ち込むと同時に、引き続き若手育成のステップアップボードとしてR5規定マシンのシートを提供する意向を示している。
「2018年シーズン終了後から、我々は2019年に向け休む間も無くハードワークを続けているよ」と語るのは、サンテロックのラリーマネージャーを務めるビンセント・デュシュ。
「昨季同様、R2規定(FF)の『プジョー208』を2台使用し、若手ラリードライバー育成のプログラムを継続すると同時に、ERCのジュニアU28、同U27へのチャレンジを目指す実力者に対しては、これまでの『プジョー208T16 R5』ではなく、最新のノウハウが注がれた『シトロエンC3 R5』へのスイッチを予定している」
2018年の6月にFIAホモロゲーションを取得した『シトロエンC3 R5』は、すでに数戦の公式イベントを経験しており、11月最終週にはフランス国内戦のビッグイベント、ラリー・ドゥ・ヴァールにも参戦。ERCジュニア卒業生のスウェーデン人、マティアス・アディエルソンがステアリングを握っている。
2019年のERCカレンダーは、この後FIAのワールド・モータースポーツ・カウンシル(WMSC)での正式承認を経て確定となり、3月21~23日に例年どおり大西洋に浮かぶサンミゲル島で開催されるアゾレス・エアライン・ラリーで幕を開ける。