2018年12月04日 17:22 弁護士ドットコム
佐川急便のトラックドライバーの男性(38)が精神疾患になったのは、上司から配置転換を強要されたことや、月110時間以上の残業が原因だとして、熊谷労働基準監督署(埼玉県)が労災認定をおこなった。男性本人と代理人弁護士が12月4日、東京・霞が関の厚労省記者クラブで会見を開いて明らかにした。認定は10月30日付。
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代理人をつとめた増田崇弁護士によると、男性は2009年、佐川急便に入社し、2011年からドライバーとして埼玉県本庄市の営業所につとめていた。2013年12月、通勤中に自転車で転倒事故を起こして、通勤災害の申請をしようとしたところ、荷物整理の業務への配置転換をほのめかされるなど、嫌がらせを受けたため、申請を断念した。
2016年には、事故による膝のケガが悪化し、入院・手術したが、その際、上司から「お前以前も休んだよな」「(もし会社を訴えた場合には)それなりの対応をするから、覚悟しとけよ」とすごまれた。その後、ドライバーから荷物整理への配置転換に同意するよう、繰り返し迫られた。
荷物整理の業務は、ドライバーの業務より膝のケガに負担がかかるうえ、収入も2割程度下がるものだったという。
男性はその後、ドライバーに復帰したが、繁忙期により業務量が増えて、休憩時間がほとんど取れず、発症前1カ月の時間外労働時間は116時間にのぼった(2016年12月)。翌2017年4月、うつ状態や不眠症などの診断を受けた(2016年12月末発症)。熊谷労基署は、上司とのトラブルに加えて、月116時間の時間外労働があったとして、労災認定した。
増田弁護士によると、同じ営業所につとめる別の従業員からも労災申請の依頼を受けているという。増田弁護士は会見で、「佐川急便全体で埋もれている被害者は極めて多数にのぼると思われる」と指摘した。現在休職中の男性は「全国で苦しんでいるドライバーがいると思うので、声を上げてもらいたい」と話した。
佐川急便は「今回の結果を真摯に受け止め、今後もさらに労働環境の改善と長時間労働の是正に取り組んでまいります」とコメントしている。
(弁護士ドットコムニュース)