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『中学聖日記』新井順子Pの“泣けるラブストーリー”への熱意 「賛否両論あるとは覚悟していた」

2018年12月04日 15:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 有村架純が主演を務めるTBS10月期の火曜ドラマ『中学聖日記』の放送が終盤にさしかかっている。かわかみじゅんこによる同名コミックを原作とした本作は、婚約者がいながらも、勤務先の学校で出会った10歳年下の中学生・黒岩晶(岡田健史)に心惹かれていく、女教師・末永聖(有村)の“禁断の恋”を描くヒューマンラブストーリー。原作は現在も連載中で、8話以降は、オリジナルの物語が描かれている。


 今回リアルサウンド映画部では、本作のプロデューサーを務めるTBSの新井順子氏にインタビューを行った。『夜行観覧車』『Nのために』『リバース』『アンナチュラル』に続いての演出担当・塚原あゆ子氏とのタッグや、異例の新人起用となった背景、そして最終回に向けた思いまで、じっくりと話を聞いた。


参考:『中学聖日記』で異例の芸能界デビュー、新人・岡田健史の素顔 「人生で一番うれしかった」


■「泣けるラブストーリーが作りたい」


――1月に放送された『アンナチュラル』でもプロデューサーを手がけていましたが、『中学聖日記』はいつから準備されていたのでしょう。


新井順子(以下、新井):1年ほど前には始まっていました。聖役は有村さんに快諾いただけて、金子(ありさ/脚本家)さんが台本が書き始めたのは年が明けてからでした。


――過去のインタビューで「泣けるラブストーリーが作りたい」と話していたのが、この作品になるのでしょうか。


新井:そうですね。


――どうして泣けるラブストーリーを作りたいと思ったんですか?


新井:最近の連ドラであまりないからです。私が中高生の時は『愛してると言ってくれ』(TBS系)、『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)、『ビューティフルライフ』(TBS系)とオリジナルのラブストーリーの作品が多かったのですが、最近は1話完結の事件もの方がヒットしますし、作品自体もたくさんありますよね。ラブストーリーの作品はあっても、最近はコミカルなものが多かったりするので、私自身が、泣けるものが見たいなと思いました。


――原作の『中学聖日記』をセレクトした理由は?


新井:“禁断の恋”に挑戦したいなと。今、世の中ではそういった恋愛に対して敏感だと思うのですが、様々な困難を乗り越えていく“純愛”を描きたいなと。「教師と生徒の恋がどうして許されないのか?」の答えを最終回に届けられたらと考えています。


――中学生と教師の恋愛というのは、最初に発表された当時は、かなり反響があったと思うのですが。


新井:そうですね。賛否両論あるとは覚悟していました。


■「晶を探すのはものすごく時間がかかりました」


――岡田さんのキャスティングも挑戦的な試みだと感じました。


新井:当初は高校生ぐらいの年齢の子にしようと思っていました。オーディション当時、岡田くんもまだ高校生で、ちょうど子どもと大人の間にいて、田舎に暮らしている、すごく晶っぽい子だなと感じました。東京に住んで芸能活動している子は大人っぽかったんです。お芝居は出来るんだけど、朴訥さが感じられなくて。ある程度名前が知られている20歳オーバーの方をキャスティングすることも考えましたが、それこそ中学生には見えない。もう新人を探すしかないとなって。事務所さんにスカウトしてきた子を連れてきてもらったり、雑誌をめくって、読者モデルのような子たちや、ストリートスナップ写真からも探しました。そういうのを含めたら、オーディションしたのは何千人になりますね。


――それくらい晶の役は重要だったんですね。


新井:原作では主人公なので、やっぱり晶を見たいと思わせたくて。こだわりもありましたし、晶を探すのはものすごく時間がかかりました。


――岡田さんに決めたのはどういう理由で?


新井:彼の場合は、初めて会った時にまだ芸能界に入るか決まっていなかったので、選考対象ではありませんでした。でも、すごく真っすぐで目がキラキラした子だなという印象があって、「芸能界に入ることになったらまた来てください」と伝えて。そのあと事務所に入ったと聞いて、再度オーディションに来てもらいました。


――現場では岡田さんの初演技はいかがでしたか。


新井:セリフを言ったあと、普通だったらこういう顔するだろうなと思う場面があるのですが、彼は予想外の表情を見せてくれるんです。第3話で晶がコンビニから聖の家に帰ってきて、勝太郎(町田啓太)と鉢合わせしてしまうシーンで、普通だったら「……」と、シュンとした顔をすると思ったんですけど、彼は「え!?」と驚いた顔をして。本人は「(この状況は)びっくりしますよね」と。その反応に驚きました(笑)。そうか、これが普通のリアクションなんだな、なるほどと。レッスンもそこまで多くやっていたわけではなかっので、ほとんどが彼の素直なリアクションなんですよね。第1話で晶が「好きです」と伝えたあと、聖から「ありがとう」と言われて、「え、どういう意味?」とキョロキョロするんですが、「あ~そういう芝居の選択肢はなかったな」と監督がとても気に入っていました。普通だったら「ちぇ」みたいな顔をすると思うのですが、すごく特殊なリアクションをするから、芝居慣れしてないことが逆に良くて面白いんです。第2話の図書室では、聖から「分からないところある?」と聞かれて、「分からないところ、分からないところ?」と岡田君が本をめくりながら探していて。「次に言うセリフがあるから、本当に探さないで早くセリフ言って!」と内心思ってしまうのですが(笑)、「分からないところって聞かれたので、探しました」と。監督もそれでやってみようかと、そのシーンではそのまま岡田くんの反応が使われました。すごく不思議な芝居をする独特な感覚は、初めてだから生まれてくるんでしょうね。


■「ドラマオリジナルのラストに」


――実写化に当たって、晶の母親である愛子(夏川結衣)の存在が原作よりも強く描かれている印象を受けました。


新井:この作品は、未成年の子に手を出してもいいと肯定するものではないので、禁断の恋に反対するお母さんの目線を入れています。今、2人の恋を応援してくれている視聴者が多いですが、やっぱり世間でそれは許されないんだよという立ち場として、塩谷先生(夏木マリ)や愛子の存在があります。


――実写化の際に、原作ファンの存在は意識されましたか?


新井:そうですね。原作にあるシーンをなくしたりせずに同じセリフを使うようにしていますし、ひとつひとつ丁寧に描けるように努力はしてます。ただ、連続ドラマ化するにあたり、プラスαも加え物語を膨らませています。原作はまだ完結していませんので、かわかみ先生からお許しをいただいて、ドラマオリジナルのラストを描いています。


――塚原さんとは、今回はどんな話し合いをして進めていったのでしょう?


新井:塚原監督とは物語の淡く綺麗な世界観をどういうふうに出していこうかという話をしました。この作品は、淡い感じを出したいと考えて。海の青さをいかしたいと思い、「海の近くの学校で撮影してみる?」と。原作で晶は海のそばに住んでるわけではないのですが、海や田んぼなど色鮮やかな自然にあふれたところで美しい景色を取り込めたらいいんじゃないかと話をして決めていきました。あとは、音楽にもこだわりましたね。この作品は繊細なピアノの旋律が必要だなと思い、色んな音楽家さんの曲を聞いていくなかで、小瀬村(晶)さんの音楽に出会いました。小瀬村さんは連続ドラマの音楽を手がけたことがない方でしたが、絶対に小瀬村さんの世界観が合う! と思い、お願いしました。さらに信澤(宜明)さんにも参加してもらって、小瀬村さんはピアノの旋律を、信澤さんはサスペンス調の音楽を担当してもらいました。二人の世界観がとても作品にマッチして、「音楽がいいね」と言ってもらえるのがとても嬉しいです。また、晶が中学生から高校生へと移る成長期の3年間の変化も重要でしたね。晶の成長を見せるために、髪を短く切りました。


――作品を見ていて、どこか『Nのために』のような雰囲気を感じることが多いのですが。


新井:よく言われるんです。作風は違いますが、おそらく、『Nのために』も話が辛いから、綺麗な映像を撮ろうと作っていったので、それで似ていると感じるのかもしれませんね。


――今後の見どころについて、メッセージをお願いします。


新井:第9話から話が大きく動いていきます。第8話で「キャー!」だったら、9話で「ギャー!」という具合に(笑)。聖が変わって、それによって晶も変わるというターニングポイントですね。そのあとの10話でも、2人の気持ちが盛り上がっていくのですが、また、悲しい展開も訪れる、ジェットコースターみたいな展開になっていきます。(取材=島田怜於/文=大和田茉椰)