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実力がかみ合わず消化不良に終わった最終戦、2019年は総合力の向上が必須【トロロッソ・ホンダF1コラム】

2018年12月04日 12:51  AUTOSPORT web

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2018年F1第21戦アブダビGP ピエール・ガスリー
トロロッソ・ホンダはF1最終戦アブダビGPをノーポイントで終えた。本来の力を結果に結びつけられなかったという点において、今シーズンのトロロッソ・ホンダを象徴するようなレース週末だったと言えるだろう。

 予選ではなんとかQ3進出が争えそうな力はあった。しかしピエール・ガスリーのエンジンが壊れ、ブレンドン・ハートレーはタイヤ温度を上手くコントロールできず0.06秒差でQ1敗退となった。

「マシンのフィーリングは良かったしそこまでに0.6秒速かったから11位か12位になれたはずだった。だけど、ターン20出口からターン21までの短いストレートでスロットルを踏んでからブレーキングの前にパワーの低下を感じ始めていて、最終コーナーを曲がって立ち上がりでもう一度スロットルを踏んだけど、文字通り全くパワーが無かった最終コーナーで1気筒が死んでしまったんだ」(ガスリー)

 本来のポジションではない16・17番グリッドからの決勝は、1周目の事故の余波でハートレーがフロントウイングを壊してピットインを余儀なくされ、ここからスーパーソフトで最後まで走り切る戦略に切り替えるしかなかった。

 問題は、新型翼端板にはスペアがなく、旧型のフロントウイングに換えるしかなかったということだ。バージボードやポッドフィンはもちろん新型のまま。これではマシン全体の空力バランスが狂うのは当然のことだった。

「フロントウイングはスペアが無いから古いスペックに交換しなければならなかったし、新型フロアとの組み合わせになってしまったせいもあってレースを通してマシンのフィーリングは満足できる状態ではなくなってしまったよ。1セットで1レース距離全てを走り切らなければならなくなってしまっただけにタイヤはかなりマネージメントしなければならなかったしポイント争いは難しくなってしまったんだ」(ハートレー)


 ハートレーはリスタート前から「マシンがおかしい。データを確認してくれ」と訴え、チームから「問題はない」と言われても「本当か? もう一度確認してくれ」と何度も繰り返し尋ねるほどの違和感を持ったまま走り続けなければならなかった。

■アブダビGP決勝は10位争いが精いっぱいだったピエール・ガスリー


 一方のガスリーはハイパーソフトタイヤでスタートしなければならないQ3進出組とは違いスーパーソフトタイヤでスタートできるアドバンテージを生かしてレースを有利に進めるはずだったが、マーカス・エリクソン(ザウバー)に抑え込まれてカルロス・サインツJr.(ルノー)を追いかけることができず、後ろのフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)によるアンダーカットを阻止するためにピットインをしなければならなかった。

 レース序盤に目の前にいたサインツとは実力がそれほどかけ離れていたわけではなかったのに、レース展開の中でピットストップまでに15秒も大きく引き離され、サインツが中団グループ最上位の6位でフィニッシュしたのに対し、ガスリーはハース勢との10位争いが精一杯だった。

 思い返せば、今年のトロロッソ・ホンダはそんなレースが極めて多かった。

「中団グループはとても接戦で、僕らもその中にはいた。何度か自分たちのパッケージのポテンシャルをフルに引き出すこともできたけど、それができなかったこともあった。結果としては他チームより50点も少ないポイントになってしまったけど、持っている実力としては中団グループの中ではかなりの接戦だったし、この結果は本当の実力を反映したものだとは思わない。だからこそランキング9位に終わってしまったのはガッカリだね」

 予選でICE(エンジン)が壊れた上に最後はPU(パワーユニット)からのオイル漏れでリタイアとなってしまったように、ホンダPUの信頼性不足が足を引っ張った部分も少なからずあった。特にスペック3を投入してからの終盤戦ではその傾向が顕著だったが、アブダビGPでは予選・決勝ともに実力を結果に結びつけられなかった最大の要因となってしまった。決勝後、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは以下のように語った。

「決勝ではパワーユニット自体が壊れたというわけではなくトラブル自体は深刻なものではないんですが、ちょっと締め直せばまた走れるようなことでも止まってしまえばレースは終わってしまいますし0か100かで言えば(レースを失って)0ですから、結果としては同じことだと思っています」

「予選では1気筒の出力が出ていませんでした。ICEそのものの問題です。来年に向けてしっかりと分析して学びたいというところもありますから、ここで下手にいじらないでHRD Sakuraに返して解析したいと思っています。ガスリーも最後のブリーフィングで『来年に向けてきちんと学んで良いものを用意してくれ』と言ってくれましたけど、(壊れたPUを)きちんと分析して来年に繋げていきたいと思っています」


■実力が十分に発揮できないレースが多すぎたトロロッソ・ホンダ


 ホンダは2019年シーズンに向けた実走テストという意味合いも含めてスペック3を投入し、本来必要とされる7戦分の耐久性を確保する必要もない中でとにかく実際に走らせることを優先させてきた。そこで得られたデータは来季型の開発に向けて極めて有益なものになったはずだ。

 しかし、最終戦アブダビGPで確実に3日間を通して使用できるように第18戦アメリカGPや第20戦ブラジルGPで金曜はスペック2を使ったり、第19戦メキシコGPはスペック3使用を断念したりといったように準備してきたにも関わらず、土曜日に壊れてしまった。

 マシンパッケージとしての実力が充分でないというのもさることながら、実力を実力通りの結果に結びつけるという当たり前のことができていない。それがトロロッソ・ホンダが2018年シーズン、最後まで果たしきれなかったことだ。第2戦バーレーンGPや第12戦ハンガリーGPで中団トップに立つ力を見せながらも接戦の中団グループの中で最下位と言っても良いランキング9位に終わったのは、アブダビGPのようなレースがあまりに多すぎたからだ。

 ドライバー、開発、セットアップ、戦略、ホンダ。その全てが噛み合ったのが2回だけしかなく、噛み合わないことの方が圧倒的に多かった。アブダビGPは改めてそれを思い知らされるようなレースになった。言葉としては矛盾しているように思われるかもしれないが、実力を大きく下回る結果しか手にすることができなかったのもまた、チームとしての実力だったと言うべきだろう。