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けみお『どこまでいっても渋谷は日本の東京』はなぜ“平成最後の名曲”なのか MVは100万回再生へ

2018年12月04日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 SNS世代の女子中高生たちに絶大な人気を誇る”けみお”の配信シングル『どこまでいっても渋谷は日本の東京』(Kemio名義/11月2日にリリース)のMVが、11月19日にYouTubeで公開されて以来、そのクセになる独特な映像が「中毒性が凄い!」と話題になり、もうすぐ100万回再生に到達する勢いだ。


参考:けみお『どこまでいっても渋谷は日本の東京』LINE MUSICで1位に! SNS時代のスターの歩み


 現在アメリカ・ロサンゼルスを拠点に、YouTube、Twitter、Instagramで、彼の日常を発信する「シェアハピ」をメインに活動しているけみおは、現在Twitterのフォロワー数は100万人を突破し、YouTubeのチャンネルは112万人登録者数を誇る、カリスマ動画クリエイター。SHIBUYA109エンタテイメントが運営する『SHIBUYA109 lab.』が、around20(20歳前後)の女性を対象に行った2018年のトレンド調査では、Twitter部門とYouTube部門でけみおが1位となった。ドラマやCMなどに出ているわけでもないけみおが、あらゆるタレントや人気YouTuberを抑えて2冠王になったという事実は、SNSが文化や情報の発信源として大きな影響力を持つ昨今の状況を象徴する出来事として、特筆すべきことだろう。


 以前、けみおの歩みについて解説した記事でも触れたように、彼はVineで名を馳せた時代から根強い人気が続いている。彼が作る映像だけではなく、そのキャラクターや独特な言葉選びが、SNS世代の10代女性たちの心を掴んだのだ。アメリカに渡ってからさらにその人気が上昇したのは、現地で生活しなければわからない日常の様々なトピックスが、けみおの視点を通して伝えられることで、親しみやすくも興味深いコンテンツとなっているからであろう。女子中高生にとっては、日本と海外の文化の違いを知るための、もっとも親しみやすいジャーナリストがけみおと言えるのかもしれない。


 そんなけみおがリリースした「どこまでいっても渋谷は日本の東京」は、アップテンポな曲に合わせ、SNS文化が露呈させる負の感情や、身近な現代社会へのカウンター的な姿勢をにじませつつ、「どこまでいっても渋谷は日本の東京」「あげみざわ」「つらみ」といった、けみお発のネット流行語を多く使い、そんな社会に生きる同世代の若者への応援歌ともいえる内容となっている。


 この曲がリリースされるや、各配信サービスで上位にランキング入りするも、11月13日のTwitterで「私の曲がネットで違法祭りなので今夜自分のアカウントで合法祭りします」との言葉と共に、YouTubeでジャケットの絵に歌詞のみの楽曲を公開。そして11月19日に「100均みたいなクオリティミュージックビデオです」の宣言し、MVを公開した。e-karaを手にしたけみおが、一人サイズのグリーンバックを背景にまったりと歌い踊るMVは、手作り感のあるチープな仕上がりながら、一度観るとクセになる不思議な魅力がある。羅列される言葉の響きの心地良さ、つい一緒に踊りたくなる振り付けは、現在若者の間で大流行中のアプリ「TikTok」でも大いに好まれそうである。


 また、登場するアイテムが、2000年代に流行ったタカラ(後のタカラトミー)「e-kara」を始め、セガトイズから発売された犬型ロボットペット「プーチ(POO-CHI)」、ギャル系ファッション雑誌の「egg」、そしてガラケーなど、一昔前のものばかりなのも注目したいポイントだ。これらはおそらく、けみおが10代の時に触れてきた若者文化の遺産ともいえるもので、MVの最後に「平成終了前にウチらで一波起こせたっぽくね~?」とのセリフとともにガラケーをたたむ仕草には、今まさに過ぎ去ろうとする時代へのオマージュと、新しい時代のカルチャーを背負って立とうとする意志さえ感じさせる。同曲が、“平成最後の名曲”とまで謳われているのは、決して大げさではないのかもしれない。


 さて、そんなけみおは12月12日に幕張メッセで行われる『YouTube FanFest』に出演が決定している。YouTubeで高い人気を誇るクリエイターやアーティストとそのファンが集うオンライン動画コミュニティの祭典で、2013年に始まり世界各国で開催され、日本では第5回目の開催となる。平成最後の年末に「どこまでいっても渋谷は日本の東京」のパフォーマンスが披露される可能性は高そうだ。(本 手)